キャッシュレスで住民・観光客の満足度UP データで把握し実行へ

三井住友カードはクレジットカード会員の購買行動を通して得られる動線や経済活動のデータをもとに、自治体の現状把握と施策立案における課題を解決できるソリューションの提案を行っている。自治体の施策決定に必要な「現状把握」「施策立案」そして「DX推進」の3つの観点からソリューションを紹介した。

図1 キャッシュレス決済で蓄積したデータの様々な用途

三井住友カードが自治体向けに提供可能なソリューション。キャッシュレス決済からは自治体の意思決定に役立つ様々なデータが得られる

キャッシュレスで属性別、
時系列の消費実態を把握

三井住友カードはVJAグループ(Visa/Mastercard/銀聯)のクレジットカード利用会員を増やす事業、カードが使える店舗を増やす事業を通じてキャッシュレス化を推進している。同社におけるキャッシュレス決済の取扱件数は、1999年の月800万件から2022年では月約4億件まで増え、特にコロナ以降伸びが加速しているという。

このようなキャッシュレス決済によって蓄積したデータをもとにマーケティングなどのソリューション「Custella(カステラ)」を自治体、企業などに提案している。「特に自治体向けでは観光、まちづくり、交通、経済・商工、DX推進など様々な部署に対して支援を行っている」と同社データ戦略部部長代理でシニアデータビジネスプランナーの安藤皇太氏は言う。

安藤 皇太 三井住友カード データ戦略部 部長代理 シニアデータビジネスプランナー

自治体の施策決定プロセスは、「現状把握」からスタートし、その中から課題を抽出し、その課題に対してどんな解決策がベストなのかを議論した上で「施策立案」を考えていく。今回のセミナーでは、現状把握と施策立案に役立つ同社のソリューションについて、安藤氏から紹介がなされた。

まず現状把握。同社が発行するカードの日本人会員は約2000万人おり、性別、年代、年収、居住地などの属性がわかる。インバウンドについては訪日外国人の約4割のデータを把握することができ、国籍、カードランクの属性がわかるという。こうしたデータをもとにシーズンごと、年代別、居住地別と言った属性別の特徴だけでなく、コロナ前後で消費行動がどう変化したのかなど時系列での消費実態の変化もとらえることができる。

図2 増大するキャッシュレスデータ

コロナ禍で非接触の決済に対する需要が増し、キャッシュレスデータは急増した

「インフラ整備の優先度、いつ広告出稿をするか、どのようなターゲットを対象にいつイベントを企画するかなどを決めるための参考にすることができます。また、観光で競合する自治体とデータを比較することもできるので、強み、弱みを理解することもできます」と安藤氏は話す。

スマートシティ化、
MaaSのマーケティングに活用

続いて紹介したのが、施策立案に役立つソリューション。一例として、大阪観光局におけるDMP(インターネット上に蓄積された様々な情報データを管理するためのプラットフォーム)へのデータ提供事例を挙げた。観光局が運営するサイトの閲覧データや滞在等のデータと決済データを組み合わせることで誘客につながる数値を可視化し、府下各自治体の観光立案に役立てている。

この他、多様なデータを住みよいまちづくりにつなげるためのスマートシティ化に際しても、交通、人流、健康データなどと消費、購買データを掛け合わせることでマーケティングに活用できる可能性を示した。また、MaaSの活用についても言及。インバウンドが保有しているクレジットカードを改札機にかざすことでそのまま乗車できるソリューションをすでに南海電鉄、横浜市交通局などに提供している。

「どこの駅からどこの駅まで乗った人が、何を消費をしているのかなど情報をつなぎ合わせることで、ニーズを可視化することができます。これをふまえ、どのサービスにクーポンを連動させたらよいか、などの施策を立案したり、施策によって生じた人流の変化などを見て効果を確認することもできます」。

自治体窓口や公共施設におけるキャッシュレス推進提携も提案している。これは、住民にとっては利便性向上、自治体にとっては業務効率化というメリットがある、と安藤氏。「キャッシュレス導入手順書に従って、どのように決済手段を決め、会計処理を検討するかなどについてもアドバイスを行っています。キャッシュレス化を推進することでストレスフリーなまちづくりにつなげてほしい」と期待をこめる。

窓口業務、経費精算の
効率化に貢献

安藤氏は最後に、キャッシュレス化がDXの推進に貢献することにも触れた。そして、自治体の窓口業務の効率化、経費精算の効率化の2つの視点からその利点を強調した。このうち窓口業務の効率化につながるツールとして同社が提供しているのがキャッシュレス端末「stera(ステラ)」だ。stera自身がandroidの端末になっており、必要なアプリを載せることができる。その特性を生かすことで、3つの窓口業務の効率化につながるという。

まず、「紙、手入力作業に頼っていた窓口業務のデジタル化」だ。POSのアプリを導入することで自動計算ができるようになるため紙やエクセルへの手入力、手計算作業などが不要になる。2つ目が「顧客との接触回避」。これまで窓口で行われていた現金の授受を非接触に切り替えることができるだけでなく、カメラアプリを活用して書類を撮影しクラウド上に保存、閲覧できるようにすることで、接触回避につながるだけでなく、ペーパーレス化、セキュリティ向上にも寄与する。3つ目が「3密の発生の回避」だ。例えば、順番待ちのアプリを導入することで、窓口に出向かなくてもスマホのLINEを通じた予約が可能になり、順番が近づいた時点で窓口に出向くことで混雑、順番待ちのストレスの回避につながる。

DX推進によるもう一つのメリットである「経費精算の効率化」については2021年2月に法務省から、地方自治体でも物品購入、役務の提供に際して職員がクレジットカードの決済を使っても問題ないとの通達が出されたことを紹介。この動きを受け、カードでの支払いしかできないクラウドサービス利用料の支払いができ、請求業務の効率化が図れる法人カードを導入する自治体が増えている。最近、法人カードを導入したのが神戸市。同市では上記に挙げたメリットのほかに、支払先を特定できることにより、不正、私費利用の発生を防げることが高く評価され導入が決まったという。

安藤氏は「各自治体の皆様が考えるデータ活用の先にある目的や目標に向かって、正しく、かつ有効な手段、対策、マーケティング活動が講じられるようお手伝いしていきたい」と述べ、講演を締めくくった。

 

お問い合わせ先


三井住友カード株式会社
データ戦略部 安藤
MAIL:andoko@smbc-card.com

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