BCPから誕生したシステム 公共施設の被災状況を迅速に把握

鹿島グループでは、自然災害がもたらす建物へのリスクを把握するソリューションを提供している。今回のセミナーでは、建物管理会社の鹿島建物総合管理と、リスクマネジメント会社のイー・アール・エスの両担当者が、災害時に公共施設の被害状況を迅速に把握し、対応に役立てるシステムを紹介した。

左から、イー・アール・エス加藤氏、鹿島建物の今泉氏、事業構想大の河村氏

鹿島建物総合管理は、設備管理・清掃・警備などをメインに行う建物総合管理会社。全国2810棟以上の管理実績を持ち、その範囲はオフィスや物流施設、データセンター、指定管理やPFIなどの公共事業、全国の庁舎や文化ホール、図書館など多岐にわたる。なかでも近年注力する事業領域が、官民連携の手法の1つである「公共施設包括施設管理」だ。庁舎や学校など用途も築年数も異なる公共施設の維持管理業務を一本化し、情報を集約することで、公共施設全体の状況を横断的に把握する手法で、東京都東大和市、岩手県北上市の包括施設管理を行っている。

災害時の司令塔を守る
公共施設包括施設管理の重要性

包括施設管理のメリットは「施設の維持管理品質の向上・均一化」「庁内事務の効率化」「的確な修繕計画の立案」そして「災害時の迅速対応体制の構築」だ。鹿島建物総合管理営業本部官民連携推進部の今泉里菜氏は、災害時の迅速対応の効果に着目し、「公共施設が災害時に地域の避難所としての役割を担うには、まず、施設が安全であることが大前提。そのためには災害による被害状況の把握や安全対策をいちはやく講じる必要があります」と説く。

そもそも震災などの災害が生じたとき、自治体は保有する施設についてどのような判断が求められるのか。イー・アール・エス経営企画部副部長の加藤了英氏は「自治体においては、保有・運営する公共施設の避難所あるいは復旧活動の拠点としての役割が求められるため、発生直後はまず、建物に留まれるかどうかの即時的判断が求められる」と指摘する。

こうした施設の安全性確認をする際に活用できるのが、鹿島建物総合管理が開発した災害情報を建物管理担当者にメールで自動発信する「Nadiss」と、イー・アール・エスが開発した、地震による推定被害値を短時間で自動配信する「ERS災害アラートQ」だ。

図 発災後すぐに被害推定が届く

ERS災害アラートQ配信メールの利用イメージ

 

施設の安全性確認のための
2つのシステム

「Nadiss」は鹿島建物総合管理が管理を受託している全ての施設において、災害時に同社が社内の状況共有に活用しているシステムだ。株式会社レスキューナウから情報を取得し、災害や警報に該当する地域の管理担当者および関係者に災害情報を通知し、その通知に応じて管理担当者が被害状況を確認した結果をシステム上で共有することで、リアルタイムでの情報共有に特化している。

「ERS災害アラートQ」は地震発生直後、その建物個々の推定震度と建物の構造被害の可能性の情報を一覧で提供することにより、初動対応を支援するアラートシステムだ。

具体的には、国立研究開発法人防災科学技術研究所が公表している、日本全国を250mメッシュ単位に区切った「リアルタイム地震被害推定情報」を活用する。この情報と共に、顧客の個別建物ごとの構造被害の可能性を推定し、顧客指定のメールアドレスへ配信する。

加藤氏は「最初に防災科学技術研究所が推定震度情報を発表するまで、地震発生から概ね15分程度。その後弊社にてその情報を取得し、個別建物の構造被害の推定までを行い、お客様のメールアドレスに送信が完了するまで概ね20分から30分程度。250mメッシュでの推定震度を活用することでより詳細にその建物の震度を推定・把握することができます」とその強みを説明する。

また、配信されるメールには、推定震度が大きな順に物件名が表示されるようになっている。ここには、物件ごとの区分、物件名称、推定震度、構造被害の状況とその推定損失率等が記される。またメール配信以外のオプションとして、当該の地震や推定情報を、地理情報システム(GIS)を使用した専用のWebサイトで確認できるサービスも提供している。その地図背景は震度分布のレイヤーとなっており、個別の登録建物がポイント表示され、それぞれをクリックすると詳細情報が表示される仕組みだ。

2つのシステム
連携による更なるメリット

今般、この両システムを連携させることで、実際に地震が発生した際、「ERS災害アラートQ」で解析した施設の推定被害データが「Nadiss」の掲示板に共有され、対象施設にどの程度の被害が生じているかが分かるようになった。これにより、市区町村レベルの被害想定であったものが、物件単位で被害想定を把握することができるようになり、現地確認の優先度判断の要素が拡充され、鹿島建物総合管理による初動対応がより的確かつ効率的になった。また、自治体に対しより正確な情報を共有することで、自治体側でも避難場所の確保や市民の避難誘導など発災後の対応がスムーズになることも期待ができる。

今泉氏は「両システムは先述の鹿島建物の公共施設の包括施設管理との親和性も非常に高い。BCPを意識された包括施設管理をお考えの自治体様に是非ご興味を持っていただければ」と話している。

鹿島グループ各社の
Webによる情報発信

事業構想大学院大学事業構想研究所教授の河村昌美氏は、「ウェビナーに先立ち、鹿島グループのウェブサイトを見たところ、今回の2社の技術やサービスだけでなく、鹿島グループ各社の様々な実績・事例が豊富に掲載されており大変参考になった。自治体の担当者は建物に関することでお困りの場合一度見ておくと役立つと思う」と、同セッションをまとめた。

 

お問い合わせ


鹿島グループ オンライン事務局
https://kajimagroup-online.com/
MAIL:info@kajimagroup-online.com

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。