第8回 地域脱炭素の本丸・再生可能「熱」を活かすためには

エネルギーの脱炭素化においては電力だけでなく熱の脱炭素化も求められる。再生可能な熱の選択肢の中でも広く賦存する木質エネルギーは、地産地消の枠組みの中で利用されることが相応しいが、日本ではそれを担う実務家やプロデューサーが不足しており、人材育成が急務である。

エネルギー基本計画における再生可能熱の扱い

熱の脱炭素化が叫ばれており、グリーン成長戦略において「次世代熱エネルギー産業」という項目が取り入れられている。

日本におけるエネルギー消費は電力と熱が2:5であり、電力だけを脱炭素化してもカーボンニュートラルには届かない。もともと第4次や第5次のエネルギー基本計画に再生可能の熱エネルギーが位置づけられており、「こうした熱が賦存する地域の特性を活かした利用の取組を進めていくことが重要である」と記述されている。再生可能エネルギーは地理的な依存性がある一方、熱は広域に運びにくい特性があるため、再生可能熱の利用は地域密着型になるのが必定である。

再生可能な熱源には太陽熱、地中熱、温泉熱等地熱、雪氷熱、バイオマス等があるが、本稿では木質バイオマス燃料の利用について、専門家にヒアリング調査を行った結果を紹介する。

木質バイオマス利用における問題点

欧州では木質バイオマス利用の経験値が高いが、日本では木質バイオマスに適合した設計・施工技術が未成熟である。地元業者にノウハウがなく既存のボイラ技術の延長線上で設計するため、負荷追従性が十分でないなどの運用上の問題点を生じている。また、公共工事として補助金を受けて実施される場合には、安全率を高く見込みすぎて、負荷に対して過大な設備になりがちである。さらに、失敗事例の検証・全国的共有が図られていないため、木質エネルギー利用の業界全体としての力量が高まらないのだという。

一方、ドイツ・スイス・オーストリアでは、国・業界・大学が協力し、適正な設計技術を標準化してマニュアルとして提供していることに加え、それに準拠することが補助金の要件となっている。木質燃料利用に関する品質保証の情報がウェブサイト1)を通じて一般に提供されている。日本においても適正な技術の普及を促す社会的な仕組みが求められる。

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