ダイヘン 都市のレジリエンスを強化するEV活用ソリューション

脱炭素社会に向けた再生可能エネルギーの活用で、ダイヘンは独自の自律分散協調制御技術『Synergy Link』や、EVを活用した非常用電源『V2Xシステム』を提供。容易で効果的なエネルギーマネジメントの実現をサポートしている。

服部 将之 ダイヘン EMS事業部 事業部長

再エネの最大活用やVPP、
EVの普及促進などを提案

1919年創業で、大阪に本社を置く産業用電気機器メーカーのダイヘンは、現在、電力機器、溶接・FAロボット、半導体関連という3分野で事業を展開している。また、今年4月に新設されたEMS(エネルギーマネジメントシステム)事業部は、脱炭素社会の実現に向けてさまざまなエネルギー機器やマネジメントシステムを提供する。

「脱炭素社会に向けては、再エネの最大活用、バーチャルパワープラント(VPP)、電気自動車(EV)の普及促進、EVを活用したレジリエンスという4つを提案しています。具体的には、大規模な風力・太陽光発電所に適した変電所設備、リチウムイオン電池を活用した蓄電池システム、EVの充電システム、EVを活用した非常用電源システムを提供しています」

ダイヘンEMS事業部 事業部長の服部将之氏はこう語る。

こうしたエネルギー機器をまちの中で活用するには、各機器による発電や充電、蓄電の電気エネルギーをリアルタイムで融通していく必要がある。

「例えば、太陽光発電が多い場合は、太陽光の電力を蓄電池やEVに充電します。そして天気が悪く充電量が少ないときは、蓄電池やEVから電力を供給すれば、まちの電気エネルギーを効果的に利用できます。蓄電池やEVは、災害時のレジリエンス確保策としても重要な役割を果たします」

自律分散型のシステムで
機器ごとの最適運転を実現

このような電気エネルギーマネジメントを容易に実現するシステムとして、ダイヘンでは独自の自律分散協調制御技術『Synergy Link(シナジーリンク)』や、EVを活用してレジリエンスに寄与する『V2Xシステム』を提供している。

図1 『V2Xシステム』の動作モード

出典:ダイヘン講演資料

 

図2 『V2Xシステム』導入事例

出典:ダイヘン講演資料

 

Synergy Linkは、高機能な管理制御装置がなくても機器やシステム同士が協調(Synergy)してつながり(Link)、最適な状態に導ける新しい制御技術だ。従来の電気エネルギーマネジメントでは、中央管理制御装置を設置し、蓄電池や太陽光発電、EV充電器や空調機とのネットワーク接続を通じて、中央管理制御装置が各機器の状態監視や動作指令を担ってきた。このため、機器の増設や変更を行う際は、個別の設定や中央管理制御装置のシステム変更が必要となり、大きなコストがかかった。

これに対し、Synergy Linkは自律分散型のシステムで、中央管理制御装置はなく、あるのは分散配置された機器に搭載する小さなモジュールだ。それらのモジュールは常時、個々の機器の状態を把握し、自動的に計算して最適な運転を行う。

「機器ごとに個別の最適運転がなされることから、機器の追加や変更を行う場合も追加の設定は必要ありません。また、ネットワークに接続するだけでエネルギーマネジメントが構築され、拡張性の高いエネルギーシステムとなっています」

給電ステーションにもなる
EVを活用した非常用電源

一方、EVを活用した非常用電源のV2Xシステムは、従来の非常用電源とは異なり、低騒音で運転可能なほか、平常時もその設備を活用できる。さらに、停電時にはEVやプラグインハイブリッド車(PHEV)を自走させて電力を補給でき、EVがない時間帯を補完する定置用蓄電池も用意されている、といった特長がある。

「停電が発生した場合には自動的に感知し、定置用蓄電池とEVから電源供給が開始されます。そして停電から復旧した際も自動的に感知し、平常運転に切り替わります。一方、平常時の利用では、EVの充電電力ピークを抑制する『充電ステーションモード』か、接続した施設の使用電力量を監視して施設の電力ピークを抑制する『電力ピークカットモード』を選ぶこともできます」

停電時には、定置用蓄電池と接続されている複数のEVから順次、電力供給が開始される。さらに長時間の運転でEVやPHEVの充電残量や燃料が少なくなった場合には、EVやPHEVを運転して停電が起きていない近隣地域に行き、充電や燃料補給を行うこともできる。

また、EVの電気を住宅でも使用できる『V2H(Vehicle to Home)』の一般的な製品は、家庭用負荷を想定している。このため、業務用エアコンやエレベーター、浄水ポンプなど、災害時に必要となる動力の3相負荷は駆動できないが、V2Xシステムは産業用負荷を想定しており、それらの駆動も可能だ。

平常時には、V2XシステムはEVの給電ステーションとして運用できる。「1台あたり10kWの急速充電で、最大5台まで同時充電できます。その際、電力使用量のピークを超過しそうになると、定置用蓄電池からの補填や充電の抑制制御を自動で行います」

技術的には、定置用蓄電池とEVに搭載されている電池と合わせ、仮想的に大容量蓄電池と見立てることもできる。これにより、近隣施設の使用電力量ピークの際には、この大容量蓄電池によるピークシフト運転ができ、施設の負荷平準化を行うことも可能だ。

V2Xシステムの導入事例には、例えば、避難所に指定された体育館に導入しているさいたま市の事例がある。平常時はEVの給電ステーションとして利用され、災害時は避難者のための電源として活用される。また、さいたま市のスマートタウン『浦和美園E-フォレスト(第3期)』では、コミュニテイ内の電力融通に使用される機器(EV充放電器、太陽光、蓄電池システム)のすべてにSynergy Linkが採用されている。

ダイヘンでは今後もSynergy LinkによるエネルギーマネージメントシステムやV2Xシステムをワンストップで提供し、脱炭素社会の実現を目指していく。

 

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