自社マーケティングを刷新 学んだPR戦略を実務に取り入れる

社会人の学び直しには「自分の仕事に学びをどう活かすか?」という視点が欠かせない。消費者心理分析やブランディングを専門にする四元正弘教授と、社会構想大学院大学・コミュニケーションデザイン研究科の修了生が語り合った。

(左から)社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科
四元 正弘教授、修了生 豊島 直子氏。

子育てしながらの受講

四元 豊島さんは、化粧品会社で美容インストラクターをされていました。本学への入学の動機は何だったのでしょうか。

豊島 きっかけは会社からの紹介です。広報機能を強化していく会社の方針で、お客さまに直接かかわってきた、「現場経験のある社員を広報に」 ということで私に白羽の矢が立ちました。大学院での授業は、日々のインストラクター業務にもつながる内容があると知り、とても興味深かったです。また、「もっと世の中に通じる人間になりたい」という野心もあったので、ここは頑張ってみようと入学を決めました。特に印象に残っているのはマーケティングの授業です。基本的な考え方さえも知らなかったので、まさに「目からウロコ」の内容ばかりでした。

四元 仕事と勉強の両立についてはいかがでしたか?また豊島さんはお子さんもいらっしゃいますが、子育てや家事とのバランスをどうとられていたのでしょうか。

豊島 コロナ禍での学生生活だったため、ほとんどの授業をオンラインで受講したのですが、それが逆に良かったと思います。勤務を終えてから学校に向かうのはなかなかハードルが高かったので。通学にあたって、会社側も出勤時間などの配慮をしてくれましたが、仕事後にそのまま学校に行くとなると帰宅は23時ごろになってしまいます。そのため入学前は、「授業の前日までに家事や子どもの世話を段取りしておかないと」とプレッシャーを感じていたんです。家庭との両立の面で、オンライン授業は本当に助かりましたね。

四元 たしかに学生の立場で考えたら、会社から大学に向かい、終わったら帰宅してというのは移動時間のロスが大きいですよね。そうした意味では、平日夕方の授業はオンラインの方が合理的です。コロナ禍によって多くの負担を減らす解決策がおのずと導き出されましたね。

図1 コミュニケーションデザイン研究科での「学び直し」で身につくこと

ファン惹きつける要因研究

四元 豊島さんの研究成果報告書は、『化粧品におけるブランドマーケティング戦略の考察 ービューティ系インフルエンサーが情報発信をしたくなるツボの研究ー』でした。このテーマに決めた理由を教えて下さい。

豊島 当社はあまり規模が大きくないこともあり、マス広告は使わずに口コミで成長してきた会社です。ただ、その口コミを深堀りしていくと、ユーザーが商品を使って本当によいと思ってくれていることが分かります。そんな中、先生から「ビューティ系のインフルエンサーが情報発信をしたくなるツボを研究するとよいのでは?」というアドバイスをいただきました。まさに仕事にもつながるテーマでしたので、そこから研究イメージをふくらませていった感じですね。

論文の芯をつくったのは、インフルエンサーの方々へのインタビューです。様々なタイプの方がいる中で共通しているのは、「自分が使って本当に良いと思うものしか評価しない」というポリシーです。そういった姿勢こそ、コアなファンを惹きつける要因ということが分かりました。そして、商品を使った体験談、いわゆる感動するぐらいの「ハッピーエピソード」をつくってもらえれば、自ずと当社との関係性も続いていきます。こうした関係性がいかに大切か、という原点にも気づかせてもらえました。

四元 元々豊島さんのポテンシャルが高かったこともありますが、地道なインタビューもあり、結果的にすごく良い研究成果が出せましたね。この大学は、社会人が対象なだけあって基本的には「自分のビジネスにどう活かすか?」がゴールなんです。そのため、教員陣も指導にあたっては、研究内容とビジネスプランになるべく齟齬が生まれないよう常に心がけています。

商品の見せ方が変わった

四元 豊島さんは、大学院で学んだことを実際の業務でどのような形で活かされていますか?

豊島 卒業後、新商品開発のプロジェクトを担当したのですが、従来のやり方を止め、授業で習ったマーケティング手法やPR戦略を導入してみたところ、商品の見せ方やブランドサイトのつくり方、企画の内容までがガラッと変わりました。得意先からは「マーケティング担当に新しい方が入ったんですか?」と聞かれましたし、ほかの社員からも「今回の新商品のプロモーション、楽しいよね!」という反応がありました。

コミュニケーションの起点へ

四元 広報やマーケティングの関係者と一緒に学ぶ経験は、今まではあまりなかったと思いますが、会社を超えた横のつながりについてはいかがでしたか?

豊島 広報やコミュニケーション業務の経験者が多く在籍しているので、最初はまわりのレベルの高さに気後れすることもありました。でも、学生同士で時事的なことを話し合ったりしているうちに、そういった方々も実は共通の悩みを抱いていることや、お互いの「世界観の違い」が分かってきたのでとてもいい刺激になりましたね。

四元 コミュニケーションデザイン研究科に向いているのは、どんな人だと思いますか?

豊島 まわりの学生や修了生の方々から感じたのは、みなさん意外にもガツガツとした「貪欲タイプ」ではなく、穏やかで実直な方が多いな、ということですね。ただ、仕事や家庭の両立や、コロナ禍での柔軟な対応も含めて、様々な困難がある中で「前向きに頑張れる人」が向いているのではないかと思います。少しでも向上心を持って「レベルアップしたい」「人のためになりたい」と感じる人にはぜひ、挑戦してみてほしいです。

四元 そうですね。コミュニケーションを通じて周りの人にいい影響を与え、それが社会をいい方向へ変えることにつながっていく。「自分もそんな起点になりたい」と感じている志の高い人には、特におすすめしたいです。

 

四元 正弘(よつもと・まさひろ) 
社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科 教授

豊島 直子(とよしま・なおこ)
修了生

 

社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科
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