社会の変化に耐えうる広報人材を育成 社会構想大学院大学の取組

2022年4月から社会情報大学院大学 広報・情報研究科が名称を改め、社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科となります。本研究科の学びについてご紹介します。

社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科は、広報担当者を養成する日本初の社会人向け専門職大学院として2017年4月に開学されました。社会人の方が対象ですので、実務と学業が両立できるよう様々な配慮をしています。たとえば授業は平日の夜間と土曜日に開講され、欠席した場合でも事後的に録画データを視聴することができますし、本学では対面の授業をオンラインで同時配信する「ハイフレックス型授業」を採用していますので、仕事や感染拡大の状況に応じて授業への参加方法を選択できます。東京のキャンパスに通学しづらい地域に在住の方も、オンラインを活用して学んでいます。

広報実務と学業の両立

本研究科の学生は30代半ばから40代半ばの広報担当者がボリュームゾーンで、「これからコミュニケーションのプロフェッショナルとしてのキャリアを歩みたい」と考える方が多く在籍しています。学生の所属する業界や専門領域は様々ですので、修了生からは「異なる組織のコミュニケーション担当者と共に学べたことが財産になった」との声も聞かれます。

「広報担当者の学び」の実情

ところで、広報担当者はいったいなにを学べばよいのでしょうか。厚生労働省の「職業能力評価基準」では、たとえば「自社の事業内容、経営コンセプト等」への理解や「メディアに関する基礎知識」、「人権や著作権等に関する配慮」、あるいは「危機管理力」といった多岐にわたる能力が必要であるといわれています。一方で同基準は、それらが「実務を通じて」身につけられていることも指摘します。つまり、こうした幅広い知見が求められる広報担当者の育成が各組織に委ねられているのが実情といえるわけです。

それゆえ知見が属人的で、組織における暗黙知のまま形式知になりづらく、「担当者が退職したら広報部門が総崩れ」状態になるリスクを抱えています。

また、広報に関する短期間の講座等はいくつも存在しますが、テクニックだけではSociety 5.0と呼ばれる激動の現代社会を生き抜くための知見とはいえません。

現代社会において、組織における「情報のターミナル」として機能する広報部門の重要性はますます高まっているにもかかわらず、実はその体系的な人材育成、言い換えれば「社会の変化に耐えうる広報人材の育成」はほぼ手つかずといえるのです。

本研究科のカリキュラム

本研究科に限らず、MBAや法科大学院なども同様ですが、専門職大学院はまさに「社会の変化に耐えうる各領域のプロ」の養成を目的としています。

そのためには、ただ実践的なテクニックや他社事例に関する知識を身につけるだけではなく、それを既存の理論体系のなかに位置づける、あるいは実践や事例から新たな理論を創造するといった「実践と理論の融合」の観点が必要不可欠です。本研究科のカリキュラムはそうした考え方のもとで構築されています。もちろん、理論や事例は表面的に使うだけでは意味がありませんので、それらを正確に理解・活用するための「メタ知識」も同時に学ぶことになります。

コミュニケーションデザイン研究科の扱う3領域(図1)では「理念を基軸としたコミュニケーション戦略」を旗印に、経営とコミュニケーションを一体的に捉える思想と技術、さらにはそれを自身の所属組織に実装するための方法論について学ぶことができます。それにより、上述した「職業能力評価基準」に示される能力をバラバラに学ぶのではなく、組織の理念を核として学術理論との関連性のなかでそれらを有機的に修得することができ、結果として未知の事象や状況への対応力が高まるというわけです。

図1 「コミュニケーションデザイン研究科」が扱う3領域

 

本研究科で開講されている授業のシラバスはホームページに公開されていますので、「なにを学べばそれぞれのテーマについて学んだことになるのか」、「各領域の主要な参考文献はどのようなものか」といった観点でチェックしていただければと思います。

図2 コミュニケーションデザイン研究科のカリキュラム例

 

広報・コミュニケーションの研究

本研究科では、2年間をかけて修士論文にあたる「研究成果報告書」を作成していきます。各学生は、最先端の実務経験を有する実務家教員と関連領域の豊富な知見を有する研究者教員による指導のもと、コミュニケーションに関する実務上ないし理論上の課題解決を目指します。たとえば自社の文化を前提とした理念浸透のあり方の検討や、コミュニケーション人材の育成を内製化するための研究、あるいは法的に広告規制がなされる業界における広報戦略の立案など、あらゆる研究に対応できる指導体制を整えています。学生は研究成果を所属組織に持ち帰り、業務改善に直接役立てることができるほか、学位取得後に昇進する方や、コミュニケーションの専門家として独立する方もいらっしゃいます。

コミュニケーション領域でキャリアを積み、プロフェッショナルとして長く活躍することを想定するのであれば、本研究科でのリカレント教育は大いにお勧めできるところです。みなさまと共に学ぶことを楽しみにしています。

 

橋本 純次(はしもと・じゅんじ)
社会情報大学院大学 専任講師

 

社会情報大学院大学 広報・情報研究科は2022年4月より、社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科に名称変更予定です。
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