NTT東日本 ICTで地域課題解決 DXが地方創生の鍵に

地域活性化に向けてICTを活用したDX推進の重要性が高まっている。NTT東日本は2020年7月に地方創生推進部を発足し、地域に密着したパートナーとして、ICTを活用した地域課題解決や自治体業務のDX、さらにはスマートシティ推進までを支援していく。

ICTの実装で地域を豊かに

日本の地域社会は、少子高齢化や人口減少による労働力不足などのさまざまな課題を抱えている。さらに、コロナ禍によって働き方や産業のあり方も変化を迫られている。こうした状況下で、ICTを活用した地域課題の解決や新しい仕組みづくりが今まで以上に求められている。

「ICTは猛スピードで進化しています。課題に対してどのような技術を組み合わせ、実証ではなく持続可能な形で"実装"するかが、多くの地域・自治体にとっての悩みだと思います」と、NTT東日本 地方創生推進部 部長の長谷部周彦氏は話す。2020年7月に新設された同部は、AIやIoTなどのICT技術を活用したソリューションにより地域活性化を推進する部署だ。

「弊社は東日本の全域に支店を置き、地域の通信基盤整備や維持に長く携わってきました。近年はICT全般を活用した地域課題の解決に注力してきており、コロナ禍において各支店に寄せられるご相談も増えています。ご相談を集約して課題を掘り下げ、NTTグループの資源を活かしながら解決策を検討し、地域の皆さまと連携してプロジェクトを推進することが地方創生推進部の役割です」。部署立ち上げから半年足らずで、すでに100件以上の相談が寄せられ、課題解決に向けた検討が行われている。

農業からeスポーツまで、
あらゆる領域でDXを推進

NTT東日本はこれまでも、地域の幅広い分野・産業の課題解決にICTを活用してきた。

長谷部氏が「注力している分野」と話すのが、農業をはじめとした一次産業だ。「一次産業は多くの地域において基幹産業ですが、高齢化が最も速く進む産業で、ICTを活用した働き手不足への対応が急がれます」。NTT東日本は2019年にNTTアグリテクノロジーを設立し、自社圃場でAIを活用した高度な環境制御や環境・生育データ分析による収量予測技術などを実証しながら、優れたソリューションを全国の農家などに展開している。

長谷部 周彦(NTT東日本 地方創生推進部 部長)

「農業分野の取り組みがまちづくりへと進化している事例も出てきています」と長谷部氏が話すのは山梨市の事例だ。官民連携で取り組むプロジェクトは農業分野からスタートし、LPWA※1などによる自営無線ネットワークやセンサーを活用した圃場の課題解決を進めてきたが、自営無線ネットワークは河川水位や地崩れ監視などの防災分野、さらにはセンサーによる高齢者の見守りなどの福祉分野にまで、その活用用途を拡大している。

「横須賀市とのeスポーツ連携は、高校のeスポーツ部の創設に向けたICT支援がきっかけでした」。経済効果や若者の集客拡大による地域活性化を期待してeスポーツ振興に取り組む自治体が増えている。NTT東日本は2020年1月にNTTe-Sportsを設立し、同分野のICT環境構築やイベントソリューションなどの提供を始めた。「横須賀市と弊社、NTTe-Sportsで協定を結び、電話局舎を活用したeスポーツのコアプレイス化やローカル5Gによる利便性向上、ICT活用による観光周遊促進など地域活性化に向けて取り組んでいるところです」。

文化芸術領域ではNTT ArtTechnologyを2020年12月に設立し、地域の有形無形文化財のデジタル化やオンライン配信に取り組み始めた。「文化芸術の担い手不足に加えて、コロナ禍で文化芸術鑑賞のあり方が変化しており、ICT活用による新しい鑑賞スタイルが求められています。文化芸術は観光振興にも繋がるため、自治体の関心も高い分野です」。

スマートシティはDXの積み重ね
地域に寄り添いDX人材育成を支援

近年では、スマートシティやスーパーシティの構築をめざす自治体が増えている。「地域課題も地域活性化への道筋もさまざまです。スマートシティ・スーパーシティというと分野横断型のデータ連携基盤やAIによる高度なデータ分析などの技術的要素に目がいきますが、技術はあくまでも課題解決のツールです。それぞれのエリアが抱える分野・産業ごとの課題に向き合い、深掘りし、地域の方と話し合いながら課題に合ったICT技術を活用しDXを積み重ねることが、スマートシティの実現に繋がっていくのではないでしょうか」。

この他、自治体から多数寄せられている相談は「コロナ禍のオンラインニーズの高まりや政府のデジタル庁設立の動きもあり、庁内のDXに関する問い合わせ」だという。「テレワーク、RPA※2、AI-OCR※3やチャットボットなどの導入相談に加えて、DX人材が庁内に少ないことに危機感を持ち、研修や勉強会を開いてほしいという打診も多く頂いています。庁内DXは情報システム課だけで完結するものではなく、ベンダーの作ったソリューションを入れて終わりでもありません。各部署の職員の方たちが自分の仕事を見直して、ICTの活用を主体的に考える必要があります。NTT東日本は地域に寄り添ったDX人材育成についてもサポートさせていただいています」。

NTT東日本の強みは、ICT分野の技術力、東日本全域をカバーする人材や不動産を含めた豊富なアセット、そして地域密着型のサポート体制である。「また、弊社は幅広い企業や教育機関とフラットな立場でパートナーシップを組みやすいという強みも持っています。地域活性化は一人の力で実現できるものではありません。産学官連携の推進が重要だと考えています」。

NTT東日本は2021年1月18日~22日、「NTT東日本 Solution Forum 2021 ONLINE」を開催し、産業・教育・福祉・防災・観光などの課題解決に資するICTソリューションや庁内DXソリューションを紹介。さらに初日の18日には自治体向けに、事業構想大学院大学との共催で「自治体DX会議」を実施し、自治体職員の未来の働き方に関する講演やICTを推進する自治体のキーパーソンを招いたトークセッションを行う。「さまざまな分野を横断した幅広いショーケースですので、情報システム担当の方だけでなく、自治体のすべての職員の皆さんにご覧頂きたいです」と長谷部氏は強調する。


※1 LPWA... 小電力で長距離通信できる無線通信技術の総称
※2 RPA... 人間に代わり、ソフトウェアロボットが業務プロセスを自動処理
※3 AI-OCR... 紙などに記載された手書きの文字をAIで読み取り、データに変換

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