経済学者のシュンペーターが提起した概念とされる「イノベーション」。新事業の開発など、企業経営に用いられる言葉というイメージがあるが、自治体を持続的に発展させるためにもイノベーションは重要だ。この言葉を自治体はどう捉え、何に取り組んでいくべきなのか。
地方自治体を持続的に発展させていく一つのキーワードが「イノベーション」(新機軸・新結合)である。自治体の政策創出においてもイノベーションが求められる。今回は議会におけるイノベーションの動向に言及する。
議会質問等における
「イノベーション」の動向
図表1は「全国47都道府県議会議事録横断検索」を活用した「イノベーション」に関する議会質問等の推移である。議会からの質問と執行機関の答弁が含まれている。近年、筆者は地方自治の現場ではイノベーションという言葉をよく耳にしていた。そのため以前から活発に使用されていると考えていた。しかし図表1を確認すると、イノベーションは近年になり注目された言葉(概念)と理解できる。
図表1 都道府県議会における「イノベーション」の質問等の推移

出典:全国47都道府県議会議事録横断検索
もちろん、1990年以前も登場しているが一桁である。1990年代から2000年代にかけて少しずつ増加はしているが、その動きは弱い。しかし2000年代半ばから急激に増加している。その一つの背景には、人口減少の拡大と、都市間競争(自治体間競争)があると推察される。右肩上がりの時代から、右肩下がりの時代に変化し、イノベーションを起こさないと、都市間競争の中で埋没してしまう可能性がある。そのため「イノベーション」が注目されている。
図表2は各都道府県議会におけるイノベーションの質問等の回数である。都道府県により差がみられる。以下では、イノベーションに関する議会質問等を例示する。
図表2 都道府県議会における「イノベーション」の質問等回数

出典:全国47都道府県議会議事録横断検索
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