職員数の「半減」に備えよ AI・RPAが自治体業務を変える

少子高齢化などの急激な社会変化に自治体が対応するためには、行政のデジタル化やAIなどの先端技術の業務への活用が不可欠だ。AI・RPAを活用した自治体業務改善の最新事例や、未来の自治体職員像について、早稲田大学政治経済学術院教授の稲継裕昭氏が解説する。

職員数が半減しても、
行政サービスを止めないために

2017年、総務省は「自治体戦略2040構想研究会」を立ち上げた。高齢者人口がピークを迎える2040年の日本の姿と自治体行政の課題を予測し、バックキャスティングで今後の自治体行政のあり方や取り組むべき対応策を検討する研究会である。2018年7月に公表された第二次報告書は、生産年齢人口の大幅減少に伴う自治体職員の採用難などを見据えて「半分の職員数でも担うべき機能が発揮される自治体」を目指すべきだとし、AIやロボティクス、ブロックチェーン等の『破壊的技術』を積極的に活用して自動化・省人化を図り、より少ない職員で効率的に事務を処理する体制の構築が欠かせないと指摘している。

本報告書の直後に設置された第32次地方制度調査会においても、未来の地方行政体制のあり方について引き続き議論が行われた。本年6月に公表された「2040年頃から逆算し顕在化する諸課題に対応するために必要な地方行政体制のあり方等に関する答申」では、地方行政のデジタル化が喫緊の課題として掲げられ、AIやRPA(ソフトウェアロボットによる定型的業務の自動化)がデジタル化を進めるための有効なツールとして挙げられている。

AI・RPAによる業務改善では、行政よりも民間企業が先行している。身近な例が銀行だ。例えばコールセンターは、以前は顧客の問い合わせにオペレーターが分厚い紙のマニュアルをめくって対応していたが、現在は顧客とオペレーターの会話をAIが音声認識し、回答候補を自動でAIが提示するという仕組みが登場している。また銀行店舗でも、これまで窓口のバックオフィスで担っていた伝票処理などの定型的業務を、離れた場所にある事務センターでRPAを使って処理するというスタイルが定着してきた。

「こういった変化は今後、自治体でも発生せざるを得ませんし、すでに少なくない自治体でAI・RPAの活用が始まっています」と稲継教授。総務省の調査によれば、2019年1月時点でAIを1業務でも導入している団体は、都道府県40%、指定都市60%、その他市区町村で4%。RPAを1業務でも導入している団体は、都道府県30%、指定都市45%、その他市区町村3%だった。「今後はAI・RPAで機械化できることと、人間にしかできない業務とを仕分けし、自治体業務のあり方について検討することが、すべての自治体に求められます」と稲継教授は指摘する。

稲継 裕昭(早稲田大学 政治経済学術院 教授)

自治体でのAI・RPAの活用例

具体的に自治体では、AI・RPAはどのように活用されているのだろうか。導入の分野は健康・医療、児童福祉・子育て、高齢者福祉・介護、土地利用・都市計画、観光など幅広い。それらの分野で、情報提供型のチャットボットAI、会議議事録作成・集約作業用AI、災害情報要約AI、職員業務支援AI、定型的業務の自動化のためのRPAなどが実証・活用されている。

稲継教授は、先進的な自治体のAI活用事例を紹介した。

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