KDDIのICT・IoTを活用した地域支援 価値を共創できるパートナーに
KDDIは地方創生の取組として、全国の様々な地域でICT・IoTを活用した課題解決に取り組んでいる。自治体や地域の企業のパートナーとして、社会実装可能なより良いソリューションを生み出し、「地方・都市の持続的発展」の実現を目指す。
先端技術を活かし、各地で
ユニークな取り組みに参画
KDDIの「中期経営計画( 2019~21年度)」では、「目指す姿」として①お客さまに一番身近に感じてもらえる会社、②ワクワクを提案し続ける会社、③社会の持続的な成長に貢献する会社、の3つを掲げている。
また、事業戦略の1つでもある「サステナビリティ」に関しては今年5月、「KDDI Sustainable Action ~私たちの『つなぐチカラ』は、未来のためにある~」を策定した。これは、2030年を見据えたKDDIの「持続可能な開発目標(SDGs)」となっている。
そこでは、「地方・都市の持続的発展」を含む8つの社会課題領域を挙げ、課題解決に向けた様々な行動を宣言した。課題解決への行動はKDDIの強みを生かすチャンスとして捉え、5GやIoT(モノのインターネット)も活用し、様々なパートナー(自治体、企業、学術機関等)と共に取り組んでいる。
KDDI地方創生支援室長の齋藤匠氏は、同社の地方創生への取り組みについて次のように説明した。
国は「まち・ひと・しごと創生基本方針2020」などで、ICTを活用した地域課題の解決を掲げており、これは国家戦略にもなっている。KDDIはICT企業として、この課題解決に取組んでいる。その際、商品を売り込むのではなく、地域ごとの課題背景をよく理解し、地域課題に合ったソリューションを作り上げる活動をしている。
現在、その先進技術やパートナー企業のノウハウを活用し、全国各地でユニークなプロジェクトに参画している。
水位センサーや養殖技術
で農業・漁業を支援
例えば、地域の農業支援では、2018年5月から兵庫県豊岡市でスマート農業プロジェクトの実証を行っている。
豊岡市には、1930年頃まで多くのコウノトリ(国の特別天然記念物)が生息していたが、戦後の経済成長に伴う農薬の大量使用などの環境破壊によって、1971年に絶滅した。
最後の生息地となった豊岡では、絶滅前の1965年から「コウノトリを再び空に帰す」ことを約束して人工飼育が始められ、2005年には自然界への放鳥にも成功した。
2003年からは、『コウノトリも住める自然環境は私たち人間にとっても素晴らしい自然環境に違いない』という信念のもと、「肉食で大食漢のコウノトリ」の餌場である田んぼを、生きものでいっぱいにするため、農薬や化学肥料に頼らず、美味しいお米と多様な生きものを同時に育む「コウノトリ育む農法」に取り組んでいる。除草剤を使用しないこの農法では、雑草を生えにくくするため「深水管理」を行う。深水管理では常に5~8㎝の水位を維持する必要があり、その水位の管理は多大な労力を伴ってきた。
そこで、水田に水位や水温・地温を自動で測定できるIoTセンサーを設置し、クラウドサーバーにデータを上げて観測できるようにした。これによって、従来は毎日必要だった水田の見回りが減り、毎夕、人の手で行われていた水位や水温の計測も不要になった。
その一方で、水位の管理を自動化しても、水位が下がれば放水のために現場へ行く必要が生じる。このため、岐阜県飛騨市の実証プロジェクトでは、センサーで水位を検知するだけでなく、水田に自動水門を設置し、自動で放水できるようにした。
さらに、地域の漁業を支援する取り組みの事例では、福井県小浜市で2017年11月にIoTを漁業に活用する「『 鯖、復活 』養殖効率化プロジェクト」を開始した。小浜市周辺の海では、1970年代まで非常に多くの鯖が獲れていたが、1980年代以降、漁獲量が激減した。乱獲や気候変動による水温上昇に関する指摘もあるが、その原因は明らかにされていない。
このような中、鯖を復活させる取り組みが始まったが、鯖は繊細で取り扱いが難しく養殖は困難とされてきた。また、鯖養殖で事業の採算性を確保するには、海面の環境を把握し、効率的な給餌を行う必要があった。しかし、海面環境の把握と給餌は漁師の経験や勘に頼ってなされ、明確な養殖技術が確立されていなかった。
これらの課題を解決するプロジェクトでは、IoTセンサーを使い水温や酸素濃度、塩分に関するデータを取得し、給餌量との関係を明確化。さらに、給餌計画や給餌記録などを基に飼育方法をマニュアル化することで解決していく。
齋藤氏の語る両プロジェクトで目指す姿は、勘や経験に基づく農業、漁業における現場ノウハウをIoTやデータを駆使した管理に変え、効率化や後継者育成につなげること。現在、更なる価値創造を目指した取組みを行っている。
実装を意識したより良い
ソリューションを提供
KDDIが取り組む農業・漁業のIoTプロジェクトには、「実証/実験」と「実装」という2つの狙いがある。「実証/実験」では、実際の場面で実用化に向けた問題点を検証する。ここで生じる費用は、国や地方自治体、企業が負担することが多い。
一方、「実装」は「実証/実験」が終了した「新しい農業や漁業に役立つ機能」を導入するもので、その費用は、その価値を認めた生産者が負担することが多い。この「実装」フェーズでは、①コストミニマムである、② 効果が見える、③ないと困る機能である、という3つの点が必須となる。
多くの実証実験の結果は機能的に問題がなくても、コストがネックとなり、実装フェーズに移しにくいのが実状だ。このような中、KDDIでは常に実装フェーズのコストを意識し、より良いソリューションの提供に努めている。
国連のSDGsでは、17番目の目標に「パートナーシップでの目標達成」が掲げられており、これは地方創生に関して特に重要な点だ。「自治体や企業は、様々な課題を抱えている。一方、KDDIには5Gをはじめとしたテクノロジーがあり、これらを掛け合わせて価値を共創すれば、地域社会の成長を目指せるはず」齋藤氏は最後にこう述べた。
KDDIのブランドメッセージは、「Tomorrow, Together」、「さあ、一緒に。おもしろいほうの未来へ。」というものだ。その地方創生への取り組みでは、各地域の企業や自治体とのパートナーシップを活かし、「おもしろい未来」の実現を目指していく。
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KDDI株式会社
地方創生支援室
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