2020年10月号

アンダーコロナの自治体デジタルシフト

データ活用農業で新しい社会に スマート農業の加速化を目指して

島村 知亨(農林水産省 研究推進課 課長)

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国内の農業分野で、ロボットやAI、IoTなどの先端技術を活用するスマート農業の導入が始まった。世界の潮流である持続可能な食料システムの構築に向け、スマート農業によるSociety5.0などのデジタル化を推進している。

スマート農業と農業DXで
食料の安定供給に挑む

国内の農業分野では、担い手の減少や高齢化が進んでおり、労働力不足が非常に深刻な問題となっている。「農業を主業とする農業就業人口は、1995年から2015年の20年間で半減。年齢をみても、65歳以上が63.5%、70歳以上は46.9%となっています。一方で、1経営体当たりの平均経営耕地面積は、1995年の1.6haから2015年には2.5haとなり、増大傾向にあります。状況を打開するためには、1人当たりの作業面積の拡大に対応した技術革新が必要です」と島村氏は語りかける。

島村 知亨 農林水産省 農林水産技術会議事務局研究推進課 課長

日本全体の人口減少が進む中で、2045年には、山間農業地域で人口が半減し、65歳以上の人口比率が5割を超えると推計されている。「現在の農林水産業の中心地は中山間地域です。食料の安定供給を確保するため、こうした地域を維持していくことは喫緊の課題」と言う。

また別のデータによれば、市場に農産物を販売する販売農家のうち約8割は水稲農家で重要だが、農業総産出額の割合を見ると、米よりも、野菜や畜産が上回っている。現状を踏まえつつも、社会のニーズに的確に応えられる生産基盤を構築していくことも非常に重要となってきている。

こうした農業分野を取り巻く課題に対応するため、農林水産省は今年3月、スマート農業の加速化と農業のデジタルトランスフォーメーションの推進を基本的視点の一つに据えた「食料・農業・農村基本計画」を打ち出した。

世界の潮流は
持続可能な食料システムの構築

世界に目を向けると、民間シンクタンクによれば、現在の食料システムの市場規模は約1000兆円と推計されている。世界の人口増大を勘案すると、グローバルには食料供給の市場規模はは今後大きく伸びていくのではないか、と分析されている。ところが現状は、肥満、栄養不足などの健康コストが約660兆円、温室効果ガスなどの環境コストが310兆円、地域福祉、フードロスなどの経済的コストが約210兆円となっており、実質的コストが市場価値を上回り、マイナス約200兆円の産業になってしまっているとの見方もある。こうした中で、食料システム自体を持続可能なものにするためには、フードテックなどのテクノロジーを投入していくことが重要ですが、世界ではフードテック関連に年間2兆円以上が投資されているのに対し、日本の投資は97億円程度で、今後は、この分野の取組も重要になる」と指摘する。

また欧中米では、持続可能な食料システムの構築自体を新たな産業と位置付けている。EUでは、今年5月に農場から食卓に至るまでの食料システムをより持続可能なものにするため、具体的な数値目標を定めた「ファーム to フォーク」戦略を策定した。特筆すべきは、研究やイノベーションが持続可能な食料供給を加速させる鍵と位置付けられている点だ。また中国では、国家全体でグリーン農業に関する法規制の整備などを進めている。さらにアメリカでは、技術開発によって食品ロスや食品廃棄物を50%削減するといった取組が始まっている。

今後の方向性として、「イノベーションを通じてより持続可能な食料供給システムを構築することは、世界的に重要な課題です。日本でも、スマート農業を浸透させ、そのデータを活用することで、持続可能な食料供給システムの実現にも貢献していくことが重要ではないでしょうか」と訴えかける。

実証プロジェクトで
スマート農業を加速化

こうした世界の潮流の中で、ロボット、AI、IoTなどの先端技術を活用するスマート農業には大きく3つの効果がある。ひとつは、ロボットトラクタやスマートフォンで操作する水田の水管理システムなどの活用により、作業を自動化し、人手を省くことが可能になる。また、位置情報と連動した経営管理アプリの活用により、作業の記録をデジタル化・自動化して情報共有できるようにすれば、熟練者でなくても生産活動の主体になることができる。さらには、ドローン・衛星によるセンシングデータや気象データのAI解析などを活用することで、農作物の生育や病虫害を予測し、高度な農業経営を可能にする。

国レベルでも、データ面からスマート農業を支えるプラットフォーム「農業データ連携基盤(WAGRI)」を立ち上げた。生産から加工・流通・消費・輸出に至るデータの連携・提供を進め、2025年までに農業の担い手のほぼ全てがデータを活用した農業を実践することを目指している。

さらに2019年から農林水産省は、先端技術を生産現場に導入・実証し、経営効果を明らかにする「スマート農業実証プロジェクト」をスタートさせた。水田作、畑作、露地野菜、施設園芸、果樹、畜産など多種多様な品目に加え、地域の特性も勘案して、棚田、中山間地域、離島も対象に、全国延べ148地区で実証が進んでいる(下図参照)。実証で得られたデータは地区ごとに分析し、農業者がスマート農業を実践する際の参考となるよう、経営情報も可能な限り提供する。

スマート農業実証プロジェクト 採択一覧 ー合計148地区ー

スマート農業実証プロジェクトで先端技術を生産現場に導入・実証し、経営効果を明らかにする

出典:農林水産省

 

現在、検証中の段階ではあるが、水田作を例にあげると、技術、地域による差はあるが、労働時間の削減や生産量増加などが見られた。経営面以外では地域の維持や新規就農者の拡大、コミュニティ保全などへの効果も期待できるという。

新潟県十日町市まつだいの棚田に設置された自動給水栓

「営農活動のデータを取得することで効果もより明確に把握できます」。

同時に推進上の課題も見えてきた。スマート農業の普及には、圃場や通信環境の整備、導入コスト等を抑えるためのレンタルやシェアリングの仕組みづくり、操作に対応できる人材育成などを進めることが求められている。

「新型コロナウィルスの影響で、生活様式や社会の在り方の変化が加速する今、データをベースにしたスマート農業による安定的な食料供給がより一層重要になってきています。スマート農業は、農業版Society5.0として、新しい社会の実現にもつながります。スマート農業を取り入れ、新しい社会づくりに参加してほしい」と島村氏は呼びかけた。

 

スマート農業に関する

スマート農業に関するお問合せ

農林水産省 技術会議事務局 研究推進課
スマート農業実証プロジェクト担当
E-MAIL:smart-pr@maff.go.jp

 

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