NTTデータ 誰もが簡単・安心にAI/RPAを活用するスマート社会を実現

4月、コロナウイルス感染症の流行を受け、特別定額給付金の支給が決まった。多くの自治体は、ただでさえ人手が足りない中、給付用システムを構築する猶予さえ無かった。この時、200以上の団体に無償で特別提供され、迅速な支給開始に貢献したソリューションがあった。

特別定額給付金が支給されるまでの経緯を簡単に振り返ってみよう。2020年4月7日、国は制限付き30万円給付の方針を発表するが、同月20日、一律1人10万円を給付することに方針転換。5月1日からオンライン申請の受付を開始すること及び5月中旬以降に自治体ごとに順次申請受付を開始することを発表した。これを受けて自治体は、詳細も不明な新たな給付金業務を数週間で立ち上げるという難題を抱えることとなった。

コロナ給付金応援プロジェクト
RPA×AI-OCRの力を活用

NTTデータにて長年にわたりRPAとAI-OCRのサービス展開を主導してきた橘俊也氏はこの短期決戦に挑むことになる。

橘 俊也 NTTデータ 社会基盤ソリューション事業本部 ソーシャルイノベーション事業部 デジタルソリューション統括部 RPAソリューション担当 課長代理

「この話が持ち上がったころ、業務整備に困る多くの自治体様から、相談や支援依頼が寄せられていました。特に困ったのが、『人を集められない』、『準備期間がない』、『業務が未確定』の3点で、一般的なシステム開発という解決策では解消の難しいものでした。

しかし私は昨年度より、RPAとAIを簡単・安心に活用する『スマート自治体プラットフォーム(以下「スマート自治体PF」)』という新サービスを企画開発中だったので、『これを応用すれば解決できるかもしれない、今こそ、自治体や住民の力になる時だ!』と考えたのです」。

橘氏のいうRPA(Robotic Process Automation)とは、いわゆるホワイトカラー業務を簡単に効率化、自動化するツールである。またOCRは書類の文字をデータ化する技術である。ここ数年のAI技術の発展によりOCR技術は劇的に進化し、難しいと言われてきた日本語の手書き文字も、AI-OCRであれば正確に自動入力できるようになった。

「当初、スマート自治体PFは、ふるさと納税業務や介護保険業務の自動化サービスから始めていく計画で開発していましたが、急遽、コロナ給付金の支給業務に切り替えました」。

こうして誕生したスマート自治体PF第0弾「特別定額給付金自動化ソリューション」は、大きく3つの領域から構成されている。1つ目は「RPAツールWinActor+支給業務用シナリオ+専用のシナリオチューニング手順書」、2つ目は「AI-OCR+申請書の推奨様式+専用帳票定義」、そして3つ目は「専属のヘルプデスク+e-ラーニング」だ。

そしてNTTデータは、社会貢献のため、なんと新ソリューションを無償で提供することに決めた。

奄美市の成功事例から
特別定額給付金の現場と裏側

結果として、特別定額給付金自動化ソリューションは全国200自治体で活用されたのだが、その効果はどうだったのだろうか。

奄美市の事例から、確認していこう。同市では国の動きを見ながら緊急でプロジェクトチームを立ち上げ、過去の給付金支給事務経験のある福祉政策課を中心に10人以上の専任体制を構築。当初は人力でデータ入力する計画であったが、NTTデータが当該ソリューションを提供していることを知り、採用を決めた。支給業務フローは「申請書開封・チェック」⇒「申請書の画像化」⇒「申請書の読み取り(AIOCR)」⇒「OCR結果確認」⇒「データ投入(RPA)」⇒「結果確認・振込依頼処理」という流れで組んだ。

「申請書が奄美市独自様式であったため、当社が提供する標準のOCR帳票定義をそのまま使うことはできなかったのですが、職員さん自ら手順書を参考にチューニングをされたそうです。事後の話ですが、チューニングが簡単であることと、OCR認識精度が素晴らしいことに、大変驚いたと仰っていました」。

こうして、5月15日から始めた新ソリューションの導入は2週間もかからず完成し、28日から運用が開始され、すぐに大きな効果が表れた。

「最大の日で22名もの追加動員を必要とした業務が、たった5.5名で運用できるようになりました。わずか1か月の間に奄美市約2万世帯の大半の申請が処理され、6月6日以降は追加動員0名となっています。また自動化により申請書の投函から入金までわずか4日間で処理できるようにもなりました。市民から市長へ、迅速に振り込まれたことへの感謝の言葉まで寄せられたそうです」。

スマート自治体化を促す
3つのカギ

「振り返れば山あり谷ありのプロジェクトでしたが、このお陰で、スマート自治体化の3つのカギを確信できました」。

橘氏の提唱するカギとは以下のものである。第1は、RPAは従来の技術では難しかった自治体のIT共同利用に適しているということだ。コロナ給付金業務にも、全自治体共通部分と独自部分があった。共通部分はRPAのサンプルシナリオが有効であることを確認でき、独自部分も業務部門の担当者が、NTTドコモ社のRPAサポートを活用しながら自らチューニングし、自動化できることを確認できた。

第2は、環境構築が不要であり、使いたいときだけ使えるものであれば、業務部門が積極的に活用しやすい、ということだ。従来のIT技術導入では、業務部門主導で、たったの2週間で業務を自動化させるということなど、考えられなかったことである。

第3は、セキュリティの確保されたLGWAN上でサービスが提供されており、加えて業務部門の監視やサポートまでサービス化されていれば、IT部門は管理・統制面を心配せずに済むということだ。今回、多くの自治体でIT部門が業務部門にNTTデータのサービスの利用を安心して推奨する結果となった。

この3つのカギが備わったサービスが、前述の「スマート自治体プラットフォーム NaNaTsu(ナナツ)」だ。

図 スマート自治体プラットフォーム NaNaTsuⓇ

AI-OCRとRPA活用サービスを組み合わせ、スマート自治体プラットフォーム NaNaTsuとして2020年10月から自治体向けに提供する

 

月額利用料型のRPAツールとLGWAN専用AIOCR、RPAの業務シナリオサンプル、OCRの帳票レイアウトサンプル、帳票定義サンプル、手厚い遠隔サポート、利用状況の監視・管理がセットで提供されるため、業務部門にとっては簡単にRPAとAIを導入でき、IT部門にとっては現場に任せておいても安心できるサービスとなっている。

NaNaTsuは、8月より無償トライアルを実施中であり、10月から本格的にサービスを開始する。大きな成果をあげた「コロナ給付金業務」のような自動化業務が、年度末までに100業務まで順次拡大される予定である。多くの自治体で100業務が自動化されるとき、遠くにあると考えられてきたスマート自治体化が理想から現実のものになると言える。

RPAとOCRのリーディングカンパニーNTTデータは、今後もスマート自治体の実現に貢献し続けていく。

お問い合わせ


株式会社NTTデータ
社会基盤ソリューション事業本部
RPAソリューション担当:中川、伊藤、早川、橘
URL:https://winactor.com

 

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。