DXですべきは「顧客への寄り添い」、変わるマネタイズのかたち
経営学者・川上昌直氏による、デジタル時代のビジネスモデルを実例とともに紐解く本連載。第2回の今回は、DX時代にあるべきビジネスモデルとマネタイズのあり方を解説する。企業がデジタル化で目指すべきは、「効率化」でなく「ユーザーへの寄り添い」だ。
DXは"ユーザーへの寄り添い"
を強くするために
ビジネスモデルとは、ユーザーに価値を与え、企業も必要な利益を獲得する仕組みです。
では、優れたビジネスモデルとは、何を指すのでしょうか。答えは明白です。商品やサービスを購入した後もなお、ユーザーに寄り添い続けるビジネスです。購入後に寄り添うには、ユーザーに使い方を教えたり、目的を達成できたか確認したり、あるいはそのためのアンケート調査をしたり、サポートを手厚くしたりと、多くの活動が必要になります。これらはユーザーとのタッチポイント(接点)として重要であることは認識されつつも、労働集約型の取り組みとなるため、実際にはなかなか大規模にコストを投じてすすめることができません。
ここで、デジタルがひとつの解決策を提示してくれるのです。DX(デジタル・トランスフォーメーション)は、こういったプロセスをローコストで、しかもユーザーが納得できる形で実現するソリューションです。もちろん、人が丁寧に対応するいわゆる「ハイタッチ」な取り組みも依然として必要ですが、ユーザーにとってのスピードや利便性、なによりコスト効率で考えたときには、デジタルが最適な解決策を提示してくれます。この脈絡でDXを定義するなら「ユーザーへの寄り添いを効率的かつ効果的に実現するビジネスモデルの構築」となります。
しかし、いざDXを実行する段になると、すでに確立している既存事業のデジタル部分の割合を増やすことに終始するケースをよく見ます(図)。それはDXとは言えません。現在の事業の「効率」を高めただけのものだからです。DXのあるべき姿とはなにか。伝統的なものづくり産業をDXさせた事例で見ていきましょう。
図 ユーザーに寄り添うビジネスモデルづくりのためのDX
DXで伝統産業に風穴を開ける
2020年7月、イーロン・マスク率いるテスラが、あのトヨタを時価総額で抜いて、「世界一の自動車企業」となりました。財務実態でみれば、アリと象のようですが、投資家がテスラにここまで期待を寄せるのは、自動車産業をDXしたことにあるのです。
これまで自動車会社は、「もの」としてユーザーが欲しがるプロダクトを作り込み、平均的に2年に一度マイナーチェンジを施し、あるいは4年に1度の割合でフルチェンジした新車を販売し、その当時の先進機能を盛り込んできました。
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