旺文社のベンチャー投資 英語学習やエドテック企業に照準

学習参考書や英語学習教材で長い歴史を持つ教育出版社の旺文社が、CVCを設立した。テクノロジーを利用した新しい学習・教育を提示するEdTech分野のスタートアップに投資する。事業会社としてのノウハウ、蓄積したコンテンツを、EdTech企業と組み合わせ、成長を目指す。

左から、旺文社ベンチャーズ 宮内淳 プリンシパル、本多輝行代表取締役社長 マネージングパートナー、粂川秀樹 取締役、三宅俊毅 プリンシパル

世界中が人材育成競争を繰り広げる中、ICTを用いて、広く教育全般に関わる諸問題の解決にあたろうと、EdTechのスタートアップが立ち上がっている。教育専門の出版社である旺文社は、2018年4月、EdTechのスタートアップに投資することを目的として、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)、旺文社ベンチャーズを立ち上げた。

教育出版社のCVC

旺文社は、高校・大学受験生向けの学習参考書や受験情報誌、英検の問題集などを発行してきた。創業は1931年、戦後にいち早くラジオを使った英語講座を開始し、最近はe-ラーニングを活用した英語教材などを、学生だけでなく社会人向けにも展開している。2000年以降は、少子化と大学全入時代に対応するため、新しいメディア活用した語学教材や、大学受験情報、辞書・語学コンテンツの電子辞書・ゲーム機・アプリなどへの提供など、社内での新規事業開拓を進めてきた。

CVCを立ち上げることになったのは、「旺文社の社内リソースだけでなく、よりオープンなイノベーションを実施する必要があると判断したため」と、旺文社ベンチャーズの代表取締役・マネージングパートナーを務める本多輝行氏は話す。同社のファンド規模は10億円で、出資規模は、1社あたり5000万円までを想定。主にアーリーからミドルステージのスタートアップに投資する計画だ。

CVCの目的は、旺文社のコンテンツや教育産業におけるビジネスのノウハウと、投資先のスタートアップの事業の相乗効果で、EdTechの新しい事業を生み出すこと。もちろん、投資先の企業が大きく成長することによる、財務面のメリットも期待している。

投資対象は国内に限定せず、約3割は海外ベンチャーへの投資としたい考えで、EduLab(東京都港区)が運営するファンドを通じて投資していく。EduLabは、eラーニングシステム開発、公的機関による学力調査の運営受託を手掛ける企業で、2018年12月に東証マザーズに上場したところだ。既に海外EdTech企業への投資実績があり、EdTech スタートアップが集うコンペティション「The Global Edtech Startup Awards(GESA)」の日本予選を主催した実績もある。

旺文社ベンチャーズは、2018年10月には、1号案件として、子供向けオンライン英会話スクールを運営するハグカム(東京都渋谷区)への出資・業務提携を決めた。ハグカムは、3~12歳を対象としたオンライン英会話スクール「GLOBAL CROWN」を展開。子供向けの英会話レッスンに関心を持つ親は多いが、スクールに通わせるためには送迎の手間がかかる。家で受講できるオンライン英会話は、多忙な親の支持も集めやすい。

ハグカムのGLOBAL CROWNは、幼児・小学生向けのオンライン英会話。英語教材に強みを持つ旺文社との事業シナジーを見込む

他のオンライン英会話サービスと、「GLOBAL CROWN」の差別化ポイントは、子供の英会話教育に特化したサービス設計だ。英語が全く分からない幼児・児童への教育のため、日英バイリンガルの教師を数百人規模で確保。このバイリンガル講師は将来他教科に展開する際にも活躍ができるポテンシャルを持っている。さらに、既存の音声会話アプリは使わず、自社専用アプリを開発して授業のデータを収集し、より良いレッスンの提供に役立てている。旺文社ベンチャーズでは、このような点を評価して、出資に至ったという。

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