企業誘致の先進地・徳島県美波町 キーパーソンに頼らず地域活性
人口7000人の徳島県美波町は、早くからサテライトオフィス誘致に取り組み、現在、17社が進出。人口の社会増も実現し、移住者による新しい事業の立ち上げも活発化している。美波町はなぜ、変化が起きる町になったのか。同町で奮闘する「あわえ」代表、吉田基晴氏に話を聞いた。
――吉田さんはもともと、東京でIT企業・サイファー・テックを経営されていましたが、2013年に本社を徳島県美波町に移しました。なぜ美波町への移転を決めたのですか。
吉田 深刻な採用難に直面したのがきっかけです。サイファー・テックは2003年設立の会社ですが、小さなソフトハウスが東京で募集をかけても、思うように人材を集められませんでした。
仲間づくりができないのは、自分を否定されたような気がして、正直ショックでしたね。何とか突破口を見出したい一心から、地方に目を向けました。
2012年に私の出身地である美波町にサテライトオフィスをつくり、そこで採用を始めました。ITが生業ですから、徳島県には全国屈指の光回線網が整備されていたことも大きなポイントでしたね。
海も山も近い美波町は、釣りやサーフィン、狩猟などのアクティビティを楽しめる豊かな自然があります。そうした環境に魅力を感じる人を惹きつけるため、私が打ち出したのが「半X半IT」。それは「ITを活用して時間や場所に縛られず、仕事も個人の生きがい(X=趣味や暮らし)も両立しよう」というライフスタイルの提案です。
「引っ越ししてでもやりたい趣味」は、人を動かす大きな力がある。「半X半IT」は注目を集め、アウトドア雑誌などでも紹介され、応募が急増しました。
採用は順調に進み、最大で東京にいた頃の4倍まで増えたんです。採用難という経営課題が田舎で解決できた。東京であれだけ探しても見つからなかった答えが過疎地にあった。その気づきが、現在につながる私の原点です。
今、企業も個人も次の一手に不透明感を抱えていて、未来を先読みしたがっています。
大きな流れでこの国の行く末を見越した時、実は地方こそが、その最先端に位置する。少子高齢化や過疎化、働き手不足、伝統文化や技術の継承難――。間違いなく到来するであろう日本の未来の姿は、すでにリアルな問題として地方に現れている。地方には、これからの経営の方向性を示すヒントがあふれています。
多くの経営者は、地方の可能性に目を向けていません。それは知りながら選択していないのではなく、そもそも、そこに答えがあることに気づいていないんです。
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