2018年3月号

地域×デザイン2018

地震のブルーシートをバッグに再生 ネガをポジに転換する発想術

佐藤 かつあき(デザイナー、BRIDGE KUMAMOTO代表理事)

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2016年4月、熊本県と大分県を襲った熊本地震。損壊した屋根を覆うブルーシートの光景は、被災地の人々の心までブルーにした。今、そのブルーシートを再生したトートバッグが人気を集めている。ネガティブをポジティブに変える、地元クリエイターたちの挑戦とは。

佐藤 かつあき(デザイナー、BRIDGE KUMAMOTO代表理事)

熊本地震で発生したブルーシートをトートバッグに再生した「ブルーシードバッグ」

ネガティブをポジティブに

熊本地震によって発生した大量のブルーシートをトートバッグとして蘇らせる「ブルーシードバッグ」プロジェクトが注目を集めている。

プロジェクトを立ち上げたのは一般社団法人BRIDGE KUMAMOTO。震災後の2016年5月、"クリエイティブの力で未来を創造する"をコンセプトに、熊本で活躍する3人のクリエイターが設立した。

熊本地震で崩落した阿蘇大橋は、地元の人々に大きな衝撃を与えた。"本物の橋をすぐにかけることはできない、でも、創造の橋はすぐにでもかけられる"。BRIDGE KUMAMOTOの団体名には、そんな意味が込められている。デザイナーで代表理事を務める佐藤かつあき氏は、「橋はなくても人と人、地域と地域は繋がっているといった想いを込めています」と話す。

「ブルーシードバッグ」は、熊本地震を象徴し、ネガティブなイメージを持たれていたブルーシートのイメージをポジティブなイメージに転換し、同時に長期化する被災地への関心の風化を防ぐためのプロジェクトだ。"ブルーシートをブルーシードに"をコンセプトに、明るい前向きなイメージに転換させることで、〈復興の種〉としていく。

地震では多くの住宅が倒壊・半壊。街中にブルーシートが溢れることになった

メイドイン被災地の製品を

ブルーシートをトートバッグに再生するアイデアは、熊本のボランティアセンターに来ていた東北の被災経験者の話がきっかけ。『津波で流された漁師の大漁旗を洗浄しブレスレットにリメイクしている』という。

「話を聞いた時、すぐにブルーシートを思い浮かべました。何にリメイクするかと考え、トートバッグに決めました」(佐藤氏)。

製品の生産管理には、熊本発の小ロットアパレル生産のスタートアップ、シタテルの力を借りている。通常、工場に依頼すると1000個単位のロットでしか生産できないが、シタテルは100個の小ロットからの生産に対応している。

トートバッグは、廃棄される前のブルーシートを手洗いで丹念に洗浄し、その生地に裏地と取手を合わせ、製品にする。この過程には地元住民やボランティアが多数関わった。縫製工場探しは「ブルーシートでバッグなんて作れない」という声が大半で難航したが、最終的に、被災地である大分県竹田市の竹田被服が手を挙げてくれた。売上のほとんどが被災地に落ちる仕掛けで、うち20%は寄付の形で被災地への支援金に充てている。

熊本のクリエイターが企画し、熊本発のベンチャー、大分の縫製会社の協力で完成したトートバッグ。「企画デザインから製作まで、メイドイン熊本、メイドイン大分のモノを作りたいと考えました」と佐藤氏。

ブルーシートの収集や洗浄には、地元の住民やボランティアが多数関わった

縫製は大分の竹田被服が担当。企画デザインから製造までのすべてを被災地で行う

学びを次の被災地に繋げる

初回の生産は100個。2016年11月に東京・表参道で販売し、一週間ほどで完売したという。新聞やメディアにも多く取り上げられ、企業や大学のロゴを盛り込んだコラボバッグなども実現しており、追加生産を重ねてこれまで約1,400個を売り上げた。被災地への寄付総額は90万円を越え、寄付の詳細はウェブサイトやFacebookで公開している。

ダメージジーンズのようにそれぞれの表情があり、ひとつとして同じモノがないのが、ブルーシードバッグの良さ。価格は3,900円と安くはないが、実物を手に取ればすんなり価値が伝わり、思わず欲しくなる商品だ。

「カタチを切り取って再構築することで、ぼろぼろのブルーシートが違うモノに生まれ変わる。それがデザインの面白さです。ブルーシートだらけの風景は見る人を悲しい気持ちにさせますが、これがいずれトートバッグに生まれ変わると思えば、悲しい気持ちが明るく、前向きになるかもしれない。一人のデザイナーとして、デザインの力を信じたい」(佐藤氏)

デザインコンセプトは、Remake(災害ゴミの利活用)、Return(売上の一部を被災地に還元)、Remind(災害を忘れない)。表面的なデザインだけでなく、その裏に込められたストーリーや想いが評価され、2017年度グッドデザイン特別賞を受賞した。

「たくさん売ることが目的ではありません。様々なメディアやイベントで取り上げてもらうことで、熊本で地震があったこと、いつどこで起こるか分からない災害への関心を高めてもらうことが目的です。地震大国の日本、私たちが東北のボランティアからもらったアイデア、学びを、次の被災地に繋げていく。ブルーシードバッグが、そんな役割を担えればと考えています」(佐藤氏)

"寄付するクリエイティブエージェンシー"を標榜するBRIDGE KUMAMOTO。広告製作やグラフィックデザイン、映像制作、WEB制作、イベント企画運営などを通し、あらかじめ取り決めた寄付額を復興支援団体に寄付する。

今後は震災関係だけでなく、広く熊本のPRを行っていくことと、熊本のクリエイターの底上げが目標。被災地と人々、熊本と県外や世界、そして、社会課題とクリエイターを繋ぐ。そんな架け橋になることを目指し、BRIDGE KUMAMOTOの活動は続く。

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