「公権力の行使」を再定義 民間を「第二自治体」として活用せよ

前号では、地方公務員の定員割れが今後10年で激増する背景について述べ、人材の流動化、平準化のあり方を提言した。今号では、自治体が住民に提供する様々なサービス、事業のあり方について論じる。人材の質低下や、専門的な知識を持つ職員の確保が困難になるなどの課題への解決策を考えていく。

地方公務員の志願者数は直近10年で3分の1減となり、人口減少の進行を考慮すると、特に小規模自治体が受ける影響は深刻だ。2045年には、地方公務員の充足率(なり手÷必要数)は、大規模自治体では80%を維持するものの、町村などの小規模自治体では65%程度に落ち込むと推計される。その現象が、離島などの過疎地域で、すでに顕在化している。

公務員の「質の低下」で
事務ミスが増加

「(地方公務員の)定員割れという数の問題に加え、現場の質の低下はさらなる問題です。単純ミスも明らかに増えています」と指摘するのは、今村寛・自治体総研特別研究員だ。今村は福岡市職員時代に200回以上の職員オフサイトミーティングを展開し、「対話で変える公務員の仕事」(公職研)の著書もある、現場を知るスペシャリストだ。

こうした現状を裏付ける事案は、全国で多く見られるようになった。滋賀県長浜市では2024年6月、「適正な事務執行を求める決議」が全会一致で可決された。補助金処理や交付金の算定など、市民生活に影響の大きいミスが1年間で5件も立て続けに発生したため、市議会が再発防止を求める事態に発展。その後、市長が単純ミスについても戒告以上の懲戒処分が適用されうるという異例の方針は示し、メディアやネット上で物議を醸した。

今村は「単純ミスを処分しても効果は薄いと思います。いわゆる質の低下の背景には、応募者数の激減や合格率の半減以上に、採用抑制によって現場で職員を育てる体制が崩れたことが大きな原因です」と分析する。

こうした地方自治体の現状について、小川康則・総務省自治行政局長も「かつてはOJTも可能だったし、失敗を見守ることもできました。それを許さないぐらい人を減らしたことは、正面から反省すべきです」と、率直に認める。そのうえで、今後の方向性を、「欠員を公務員で埋めるのは正直無理だと思っています。1つはデジタルで代替する。もう1つは、民間へのアウトソースで機能として補うしかないでしょう」との見解を示す。

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