サプライチェーンから支える防衛産業 経産省職員が語る政策づくりの最前線

(※本記事は経済産業省が運営するウェブメディア「METI Journal オンライン」に2026年1月20日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

間山 貴裕:製造産業局 航空機武器産業課。防衛産業のサプライチェーンを支える業務に携わる。
間山 貴裕:製造産業局 航空機武器産業課。防衛産業のサプライチェーンを支える業務に携わる。

【製造産業局 航空機武器産業課】に聞く、日本の防衛産業のサプライチェーンを支えるために必要なこととは。経済産業省という複雑な組織を「解体」して、個々の部署が実施している政策について、現場の中堅・若手職員が説明する「METI解体新書」。今回は、製造産業局 航空機武器産業課で、防衛装備品などのものづくり企業への支援を通じて、日本の防衛産業を支える間山 貴裕さんに話を聞きました。

国力を左右する防衛産業を、経産省が支える?

―――ご所属の製造産業局はどのような部局ですか。

名前の通り製造業の産業振興を担当している部署です。皆さんが「製造業」と聞いて思い浮かべるような、自動車や鉄、工作機械など各産業の振興のための政策を担当しています。

―――その中で、間山さんが所属している航空機武器産業課はどのような業務を担っていますか。

課名に「航空機」、「武器」という言葉が入っていますが、もう少し幅広く防衛産業を担当しています。防衛省・自衛隊が必要とする様々な物品を届けるためにものづくりをしている企業を支援することが、課のミッションです。

―――間山さん自身の業務は。

防衛省・自衛隊に、様々な防衛装備品を納める方々を支援しています。防衛省・自衛隊と連携しながら政策を進めていて、例えば、防衛省・自衛隊は、直接契約をしている相手方のことはよく見えていますが、サプライチェーンのさらに上流にいる企業、防衛省・自衛隊と直接契約する企業に、いろいろな部品を製作・加工して納品している方々までは目が届かないことがあるので、そういった方々は経産省が目を向ける、といったイメージです。

―――どのような支援をしているのですか。

防衛産業と言っても幅広い方々が関わっていて、例えば戦闘機は防衛装備品の一番分かりやすいものですが、サプライチェーンをよく見ていくと、ボーイングやエアバスのような民間航空機の部品を作っている企業がその中に入っています。護衛艦にも、一般的な民間商船を作る際と同じような技術が使われているなど、サプライチェーンも実はデュアルユース(民防共用)で、民間だけ、または防衛だけに参画している企業は少なく、両方の仕事を担われている企業がとても多いのが現状です。

経産省は民間側の仕事を応援するのがミッションだと思われがちですが、デュアルユースが進む中で、民防どちらにも活用いただける政策が多くあります。経産省の政策で本来は支援の手が届くはずなのに届いていない防衛産業の方々に、政策を届け、うまく活用いただいて防衛産業の方々が抱えているお困りごとに応えていく仕事をしています。

間山 貴裕さん

国内に製造業のサプライチェーンが残っていることの価値

―――ご自身の担当政策や業務でぜひ世の中の皆さんに知っていただきたいことは。

一つは、製造業が社会的に大事な産業だということです。アメリカやヨーロッパは、情報産業、IoT、スタートアップが勢いよく成長していますが、日本経済は30年停滞している、日本は他国に置いていかれているように言われることもあります。実際そういった側面もあるのだとは思いますが、様々な国の防衛産業に携わる方々や防衛関係の政府当局者と話をすると、日本は製造業のサプライチェーンがしっかり残っていて素晴らしい、協力したいという声を多くもらいます。

製造能力を持っていること自体が、防衛力や抑止力につながることもわかってきました。アメリカもヨーロッパも、製造業のサプライチェーンを人件費が安いところに移していて、国内にサプライチェーンが残っていないというのです。一方で、日本はまだサプライチェーンが残っていて、技術を持つ中小企業が国内で生産しています。精密な機械の加工などは人手の場合もありますが、そういった技術者を育てるには5年、10年単位で時間がかかります。製造業の技術者も含めて、産業の裾野が残っているのは、海外に対する日本の優位性にもなっていて、財産です。中小企業の方々を支える政策や製造業の裾野を守る仕事が、実は今になって国際的に大きな価値になっていると実感しています。

―――経産省の中でも防衛省・自衛隊と仕事をする部署は珍しいですよね。

はい。防衛省・自衛隊の方々と日々やりとりをする中で、彼らが24時間365日、日本の防衛のために一生懸命仕事をしているんだということを強く感じますし、防衛省・自衛隊の仕事が、日本経済に与える影響も大きいと感じています。

以前、岐阜県にある航空自衛隊の基地を訪れた際、基地の真向かいに川崎重工の大きな製造拠点があり、その周辺には川崎重工と共に仕事をしている中小企業がたくさんありました。お話を伺うと、自衛隊からの仕事で企業のみなさんが技術力を長年蓄えてきたことがわかりましたし、戦後の日本の航空機のサプライチェーンの発展に寄与してきたんだなと感じました。防衛省・自衛隊を支えている産業の皆さんを支援するのが私のミッションですが、その業務の重要性を改めて体感した経験でした。

―――業務において苦労した点はありますか。

防衛省と仕事をするのは初めての経験だったので、はじめは戸惑いもありました。経産省は本省と地方局をあわせても職員数は8千人程度ですが、自衛隊は20万人以上が所属する組織です。組織の規模が違うので、同じ物事を進めるにも、防衛省と経産省で省内の関係者の規模が違い、一緒に仕事をする中でのスピード感は当然変わってきますし、より丁寧な調整が必要だと感じます。

また、産業を育てることがミッションの経産省と日本を守ることがミッションの防衛省とでは、目指すべきところや目線が違うところもあります。経産省が何かを変えたい、防衛省と一緒にやっていきたいと思っても、決裁のスピード感や組織風土、前提が異なる中で、共通のゴールとしてすり合わせできる落としどころを見つけ、うまくバランスを取りながら根気強く調整することは、慣れるまでとても大変でした。

まずは防衛省から頼まれた仕事に全力で取り組むことで信頼を得て、組織としてのミッションが違っても双方折り合えるポイントを探していくような協力関係を構築していきました。お互いに信頼を積み重ねていった結果、現在のポストについて三年目になりますが、防衛省ととてもよい関係が築けているのではないかと思っています。

今では、「こういうことをやりたい」と防衛省に相談すると、人を紹介してもらえたり、アドバイスをもらえたりするようになり、仕事がスムーズに進んでいます。培ってきた信頼関係が、仕事に生きているんだという実感がやりがいになっています。

経産省の仕事は「知的集約度の高い仕事」。政策の根幹を一人で考え抜くやりがい

―――もともと防衛産業には興味があったのですか?

はい、2022年の終わり頃に、「国家安全保障戦略」、「国家防衛戦略」、「防衛力整備計画」という戦略三文書が出され、日本としてこれから防衛力強化が大事なので力を入れていこうという機運が高まっていました。防衛力の強化をこれからやっていくぞというタイミングだったので、ぜひ今ホットな業務を担当してみたいと思って希望しました。様々なタイミングが合い、現在の部署に異動することが叶い幸運だったと思っています。

学生時代の友人や職場の人たちとお酒を飲みながら仕事の話をすると意外な気付きがあるという間山さん。「職場以外で仕事の話をすると、捉え方がちょっと変わって、来週も仕事を頑張るか!とリフレッシュできます」
学生時代の友人や職場の人たちとお酒を飲みながら仕事の話をすると意外な気付きがあるという間山さん。「職場以外で仕事の話をすると、捉え方がちょっと変わって、来週も仕事を頑張るか!とリフレッシュできます」

―――経産省の仕事の魅力を感じるのはどんなところですか。

課内では、企業や地方自治体からの出向者など様々なバックグラウンドの方がいますが、その方々に話を聞くと、経産省は一人一人ができる業務の範囲が広いと言われます。課長と議論していても、ちゃんと自分の頭で考えたロジックであれば、対等に話ができると感じます。

防衛産業の企業の人たちや、防衛省・自衛隊の方々との私自身のネットワークがあって、それは担当者ならではのものです。そこで拾える声は担当者しか知らないので、その声をもとに、こういった政策をやったほうがいいとか、こういったことが課題だということを課長にぶつけると、その方向でやってみようとなることもあります。

経産省の仕事は、得られる情報が限られている中で、自分がどういったスタンスを取るか意思決定して、関係者と調整する必要があります。裏を返せば上司も限られた情報量の中で、意思決定をしなければならないので、自分自身のネットワークで得られた現場の声をベースにした提案が、上司にとっても大きな価値として取り扱われるのだと思います。

現場の声に一番価値を置いている組織だと思いますし、だからこそ年齢関係なく筋が通ってさえいれば、意見は通ります。自分がどういったスタンスを取るか次第でどれくらい大きい仕事ができるかも変わる、そんなところが経産省の仕事の面白さだと思います。

―――「働いて働いて……」を楽しく体現しているように見えます。

「労働集約度が高い」という言葉がありますが、そのアナロジーで、経産省の仕事は「知的集約度が高い」のだと思っています。先ほどお話ししたように、情報を集めてスタンスを決め、その仮説の正しさを証明するためにさらに情報を集めたり、関係者と調整をしたりして、少しずつ仮説を修正していき政策を完成させるという仕事なのですが、政策の根幹部分を考えるこうした仕事は役割分担ができません。

出口の政策が出てきたら、そこから先は役割分担をして進めることができますが、政策作りの幹となる考え方の部分、例えば防衛産業でいうと「なぜ防衛産業を成長させなければならないのか」といった根本的な問いや、防衛産業の目指す絵姿を役割分担して考えることはできません。

もちろん、チームメンバーと議論をして色んな視点から捉える、といったことはしますが、一人で考え抜かなければならないという構造は変わらないと思っています。1から10まで自分で考えてみたい、根本の部分を考えることを仕事にしたいと思えば、ここでしかできない仕事なので、一人で考え抜く大変さもセットで楽しんでみるといいのかなと思いながら日々業務に取り組んでいます!

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