2017年10月号

20代起業家の構想力

20代で1000億円企業をつくる クラシルが世界で勝てる理由

堀江 裕介(dely 代表取締役CEO)

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大学在学中の22歳で起業し、料理レシピ動画の『クラシル』で躍進。同サービスは2017年8月、アメリカの先発サービスを抜き、レシピ動画数で世界一になった。delyの堀江裕介CEOは「多くの企業が戦略を間違えている」と、自社の成長に自信を見せる。

堀江 裕介(dely 代表取締役 / CEO)

「20代で、(企業価値が)1000億円の企業をつくりたい」

真剣そのものの表情でそう語るのは、delyの代表取締役CEO、堀江裕介氏だ。現在25歳の堀江CEOは、2014年4月、慶應義塾大学在学中の22歳でdelyを立ち上げた。

そして2016年2月、料理レシピ動画の『kurashiru(クラシル)』をスタート。現在、動画再生回数は月間で1億7000万回、SNSのフォロワー数は230万人を超える。2017年8月にはアメリカの先発サービスを抜き、レシピ動画数世界一を達成した。

『クラシル』は、「20代で1000億円企業」という目標から逆算し、やるべき事業を考え抜いた結果、生み出されたサービスだ。

「仮に10年をかけて、100億円企業がつくれたとしても、僕にとってそれは成功ではない。3~5年で企業価値1000億円を達成するためには、市場の立ち上がりが早く、拡大が見込めて、海外も狙える事業でなければなりません。有望な成長分野として動画メディアを考え、そのうえで、どういったジャンルが良いかを考えていきました」

堀江CEOは、既存の1000億円企業をリストアップ。そして、どのジャンルならば勝てるのかを検討していった。メディアの領域で、企業価値1000億円の企業は多くはない。その一つが、料理レシピサイトのクックパッドだ。

『クラシル』は、1分動画で料理のレシピをわかりやすく紹介。1万本近い動画があり、多様なニーズに応える

料理レシピは、専属料理人が考案。「冷蔵庫の余りものからつくれる新しいレシピ動画」など、日常の中で使いやすいレシピを紹介する

多くの企業が戦略を誤っている

料理レシピの分野では、クックパッドの独り勝ちが続いている。2017年6月の時点で、月間の利用者数は6000万人、有料会員数は約193.8万人を誇り、堀江CEOいわく、料理レシピのメディアとして世界一の規模だ。

そうした状況にある中で、なぜ料理レシピの動画に商機を見出したのか。

「多くの企業が料理レシピ分野に参入していますが、戦略を間違えています。クックパッドは、20年かけて集めた270万品を超えるレシピ情報を持っており、そこで勝負しても、一生追いつけません。しかし、動画ならば、自分たちが先行できます」

delyは、これまでに約40億円の資金を調達している。

「調達した資金を広告費や動画制作体制の強化に充てることで、レシピ動画市場において差を広げていく考えです」

クックパッドは、売上が約170億円、営業利益が約50億円の上場企業であり、株主の視線もある中で、未知の領域である動画への大規模な投資は決断が難しい。

「競合がどの時期までにどれくらいの規模で踏み込んで来るか、その時に自分たちがどれほどの優位性を築いていれば、勝つ条件が揃っている状態か。決算資料から、競合の経営方針の特徴や思想、数年先の状況をシミュレーションし、相手の心理を読みながら戦略を立てています」

日本だからこその強みで世界へ

多くの企業はSEO(検索で上位になるようにサイトを最適化すること)で集客を図っているが、堀江CEOによれば、それも「間違い」だ。

「例えば、バイラルメディアで上場した企業は、日本には1社もありません。なぜかと言えば、Facebookがアルゴリズムを変更したことで、閲覧が一気に減ったからです。料理レシピ動画も、Googleの上で勝負していたら先がありません。外部環境に左右されず、自分たちでコントロールできるようにすることが大切です」

堀江CEOは、アプリを中心に『クラシル』のサービスを設計。検索サイトには依存せず、動画の閲覧を伸ばすことに成功した。

『クラシル』は現在、ユーザー数を増やすことに力を注ぐ段階であり、有料会員の獲得など、本格的なマネタイズには踏み込んでいない。

堀江CEOは、近い将来の世界展開も見据えている。

「僕らには、世界で勝てる理由があります。delyは、料理レシピ動画において、世界でもトップクラスの制作能力を持ちます。また、海外の料理レシピ動画は、SNSでの拡散を狙ったものばかりで、見た目が派手だったり一風変わっている料理が多く、日々の生活では使いづらいものになっています。さらに、日本食は世界的に関心が高く、健康的なイメージもあるので、コンテンツの質の高さもある。『クラシル』は日本だからこそできる、世界に通用するサービスです」

delyが目指すのは、「70億人に1日3回の幸せを届ける」こと。そのために、さらなる資金調達や積極的な投資で事業を拡大していく。

delyは積極的な投資で、動画制作能力を拡充。料理レシピの動画を月1000本体制で制作している

長期目標から逆算、今を考える

業界動向や競合を分析し、どこにチャンスがあるのかを見出す。そうした視点を、堀江CEOは早くから養っていた。10代の終わりの頃には、すでに起業家になることを考えており、大学では、企業の決算書を独自に読み解くこともしていた。

「過去にさかのぼり、毎年の決算書を見ていると、ある時点で、特定の経営指標が前面に出なくなったりします。その企業は、何を隠したがっているのか、それはどういう意図なのかなどを考えていくと、そこにストーリーがある。さらに、自分で事業を始めてからは、肌感覚で決算書の内容をつかめるようになりました。その肌感覚は、事業のアイデアにもつながります」

堀江CEOは、株主からも多くの学びを得ているという。delyの株主には、Google出身で30歳にして2社を上場に導いたフリークアウトの佐藤裕介氏や、Gunosy創業者で投資家の木村新司氏など、広告・メディア業界に精通した事業家が揃っている。

堀江CEOは、長期的な視野に立って、20代、30代、40代と、それぞれの年代でなすべき目標を決めている。「20代で1000億円企業」も、そのプロセスの一つだ。

「多くの人が、短期的な合理性だけに基づき、意思決定をしています。長期の目標を決め、そこから逆算して、目の前の1日は何をするかを考えるような視点も重要だと考えています」

大きな目標に向けて、堀江CEOは手を緩めず、事業拡大に邁進する。

堀江 裕介(ほりえ・ゆうすけ)
dely 代表取締役 / CEO

 

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