希薄な存在感、一流の地域資源 栃木の「強み」と「弱み」を分析

多数の大企業が立地している一方で、地場の中小企業の出荷額は低落傾向が続く。また、優れた観光資源を持ちながらも、交通網の未整備など、誘客には課題を残す。業種を問わず、「ブランド」の確立に課題を抱える、栃木県の可能性を検証する。

栃木県は、イチゴをはじめ、全国トップクラスの生産量を誇る1次産品も多い Photo by Norio.NAKAYAMA

首都圏周縁部の県や市町村は、その立地上のアドバンテージゆえに、経済的には総じて恵まれている。しかし、その反面、首都圏外から見たとき、その県なり市町村なりは、“首都圏”が名実ともに有する圧倒的な存在感の内に包摂されてしまい、独自の存在感は希薄になりがちである。

「地域ブランド調査2014」(ブランド総合研究所)で、北関東3県が、そのブランド力において、41位(栃木県)、46位(群馬県)、47位(茨城県)となったことにも、それは明確に表われていよう。これら3県は、地域資源にどれほど魅力があっても、それが県全体のイメージに直結していない。今回は、その中の栃木県を扱い、可能性と課題を検討したい。

首都圏を支える“優等生”県

栃木県は、1人当たり県民所得全国7位、1人当たり県内総生産(名目)10位など、経済的に豊かな県である。

東北新幹線で東京から50分。また、北関東磐越5県は高速道路網で結ばれ、国際港湾「茨城那珂港」とも直結するなど、盤石な交通基盤を構築するに至っている。

産業構成比は、1次産業2%、2次産業36%、3次産業62%であり、1次・2次産業で全国平均を大きく上回り、3次産業で著しく下回るのが特徴である。

1次産業に関しては、関西経済圏の周縁部に位置する鳥取県や徳島県が「関西の台所」として機能するように、栃木県も、農業生産額全国9位で、「首都圏の食料基地」として長年貢献している。46年間、生産量日本一を誇るイチゴ(とちおとめなど)を筆頭に、全国3位以内の1次産品の数は十指に余り、県としても成長・戦略産業として重視している。

一方、2次産業は、工業生産額8.18兆円(7位、2013)、県内総生産に占める2次産業比率7位、工場立地件数3位(面積1位)。まさに日本有数の「ものづくり県」である。

出荷額で全国1位の品目だけでも20品目近く、業種的には、自動車・航空宇宙・医療機器関連などが多い。

また、3次産業については、“観光資源の宝庫”である。世界遺産「日光の社寺」、ラムサール条約登録湿地「奥日光の湿原」&「渡良瀬遊水地」、日本3大名瀑の一つ「華厳の滝」、明治~戦前期の外国人別荘地「中禅寺湖」、鬼怒川、塩原などの歴史ある温泉地、御用邸のある保養地・那須高原、歴史遺産の「足利学校」「足尾銅山」「大谷石採掘跡」など枚挙に暇がない。

以上のように、“一見”非常に恵まれた状況にある栃木県であるが、しかし、実は、極めて深刻な事態が進行しつつある。

「製造業の二重構造」問題

栃木県には、大企業の研究所・工場・事業所が多数立地している一方、レオン自動機やマニーなどを別にすれば、地場創業のリーダー的企業はほとんどない。そのため、県内製造業は、誘致大企業と地場の中小零細企業とに「二極分化」し、両者の格差は拡大し続けている。

地場企業の3分の2は誘致大企業の下請けであり、しかも、大企業からの評価は低く、大企業群が京浜地区の中小企業と取引する比率が上昇している。

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