閉鎖的な農業・食流通業に新風を 100兆円の放置市場の可能性

世界人口の増加による「食料危機」が目の前に迫ってきた。一方で、世界の食料廃棄や可食作物の未利用は100兆円近くになり、需要と生産の乖離は明白だ。この課題を解決するための事業の切り口を紹介する。

ミラノ国際博覧会の日本パビリオンでは、デジタル技術を駆使して、日本の農村の原風景や和食の魅力を伝えた

「食料危機」という現実的な問題

2015年7月に「Feeding the Planet, Energy for Life(地球に食料を、生命にエネルギーを)」を掲げるミラノ国際博覧会を視察した。「食料の安全、保全、品質のための科学技術」や「農業と生物多様性のための科学技術」、「農業食物サプライチェーンの革新」などのサブテーマに沿った展示を通じて、今世紀中に訪れると言われている「食料危機」に対する各国の問題意識と取り組みを垣間見ることができた。中でもドイツのパビリオンは、資源問題や代替エネルギー、農畜水産業における新しいテクノロジー、食料流通と廃棄などの多岐に渡る議論とソリューションが有機的に繋がっており、非常に充実した内容に感じた。

さて、「食料危機」と言われているが、具体的には何が起きているのだろうか。世界人口は、2050年には90億人をゆうに超え、今世紀末には100億人に達することは確実視されている。一方で、食料生産適地は、温暖化や降水エリアの移動などの環境変化によって移動・減少しているほか、人為的な要因によっても急速に減少している。

このように需要と生産の乖離が懸念される中にあって、世界の食料廃棄も75兆円を超えていることが国連の発表でも明らかになった。この数値は、流通に乗った食料を前提に算出されているので、生産地における未出荷や可食作物の未利用分等を含めると、食料廃棄・未利用は100兆円近くになることも指摘されている。

有史以来、都市形成が進む中で「人口集中に応じた食料の大量供給」は人類最大のテーマであり、特に近代においては生産規格化や物流の大型化・効率化が世界中で進められてきた。しかしその陰には、規格外の大量廃棄が発生したり、適地適作を度外視した生産による環境負荷やコスト増が発生したり、食料の効率的生産及び分配の観点ではかえって「非効率」を進めてきてしまったとも言えるのだ。

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