出生率2.2の小さな村 過疎克服の秘訣は「村民が楽しむこと」
西米良村は宮崎県で最少人口の村ながら、出生率は2.2。「過疎」を逆手にとった交流人口拡大を進めている。成功のポイントは、「村民自身が楽しむこと」にある。
宮崎県の中央部最西端に位置し、九州中央山地の山々に囲まれた西米良村。面積217km2は、千葉市とほとんど同じ広さだが、96パーセントを森林が占める土地に人口約1200人が暮らす。全国に先駆けた「西米良型ワーキングホリデー」、それぞれにテーマ性と物語性を持たせた「8つの庄づくり」などの施策で、都市との交流を促進。交流人口の増加が村民に自信と誇りを与えたサクセスストーリーとして全国に知られることになる。
その立役者、西米良村長の黒木定藏氏は1948年生まれの66歳。西都農業協同組合企画課長を務めていたが、1995年に策定された「カリコボーズの休暇村・米良の庄」構想に必要な人材として西米良村助役に抜擢される。1998年に西米良村長に就任。今日まで村の活性化をリードし続けた黒木村長は、今年5期目を務め、観光庁が認定する観光カリスマにも選ばれている。
西米良型ワーキングホリデー
西米良村の主産業は農林業。かつて木炭生産日本一を誇るなど、1940年代の最盛期には人口も7500人を超えた。しかし、林業の衰退により人口は減り続け、1995年には1457人にまで減少。しかも当時の推計で、将来人口は2010年に748人になると、村の存続そのものが危ぶまれるような数字がはじかれた。
定住・交流人口を増やさなければ、村に将来はない。そこで着目したのが、中山間の西米良村にしかない魅力、すなわち山の精霊「カリコボーズ」が住むと言われる美しい自然や、そこで育まれた豊富な農畜産物、個性的な文化だった。村全体を「休暇村」、「桃源郷」としてブランディングし、都市生活者との交流を促進しようという戦略を立てた。
第一弾として1998年に開始したワーキングホリデー制度は、お金を稼ぎながらゆっくり休暇を楽しみ、地域住民と交流する点で日本初の試みであり、今では「西米良型」と呼ばれる。これまで延べ420人が参加。当初は中高齢者層をターゲットにしていたが、予想に反して、参加者の半数以上が若い世代の独身女性が占めるという結果となり、中には受け入れ農家の男性と結婚する喜ばしいケースもあった。
「制度がうまく稼働したのは、初めての取り組みにもかかわらず、村全体が一つにまとまり、村民一人ひとりが積極的に参加し、自分達も楽しみを持って取り組んだことにあります」と黒木村長は分析する。
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