リモートワークソリューション導入 庁内DXで持続可能な行政に

4月の統一地方選挙で、42歳の若さで北海道伊達市長に当選した堀井敬太氏。大手監査法人で自治体の総合計画づくりに携わった経験を生かし、自身が掲げる「いつでもだれでも安心して住めるまちづくり」に向けDXを有効活用しようとしている。

堀井 敬太 北海道伊達市 市長

5月に市長就任、
DXを施策に生かす

北海道南西部に位置する伊達市。北西に活火山の有珠山や昭和新山を、南には噴火湾(内浦湾)を望む風光明媚な土地だ。産業の柱は農業、水産業で、農業では、特にトマト、ブロッコリー、長ねぎ、馬鈴薯、キャベツの生産が、また水産業では、ホタテ貝の養殖のほかに秋サケ漁も盛んだ。四季を通じて気候が温暖で、札幌と函館の中間地点であることから、交通利便性も高い。

北海道南西部に位置する自然豊かな伊達市は、農業と水産業が基幹産業だ

 

伊達市出身の堀井敬太市長は、大学院卒業後に大手監査法人に入所、17年間一貫して自治体の総合計画の策定などに携わってきた。2023年4月23日に行われた伊達市長選挙に立候補し当選した。人口減少対策や若者や子どもへの支援、いつでもだれでもが安心して住めるまちづくりなどを公約に掲げた堀井市長にとって重要な取組の一つがDXの推進だ。

伊達市では先立つこと2022年7月に、NTTコミュニケーションズが提供する高セキュリティのリモートワークソリューションを導入し、運用を始めていた。コロナ禍の経験、今後想定される有珠山の噴火災害への対処、結婚・出産後の女性職員の復職推進などをふまえ、どんな状況下でも市政を滞らせず、また柔軟な働き方を実現させる目的から導入した。「職員からの評判を聞くと、それ以前は通信環境の制約からパソコンの動きが重たく、使い勝手が悪かったようですが、そうしたストレスからは解放され、デジタル化、DXを推進していく基盤がようやく整ったといえます」と語る。

導入に当たってはNTTコミュニケーションズのゼロトラスト(社内外問わずすべてのアクセスに対して認証と許可を厳密に行うこと)の考え方にも共鳴したという。「自治体のネットワークは3層対策が求められていますが、対応には費用も手間もかかります。今般導入したソリューションでは、総務省が新たな三層対策として提示した、LGWAN系に配置していた端末やシステムをインターネット接続系に移行するβ´モデルを取り入れることができるとのことで採用に至りました」と導入の経緯を説明する。

ゼロトラスト※1の考え方にもとづく
NTT コミュニケーションズのリモートワークソリューション

特長
(1) ロケーションフリーな執務環境
インターネット環境があれば、庁舎内に限らず自宅、出張先など勤務場所を選ばず通常の業務が行えるため、限られた職員数でも滞ることなく業務を進めることができます。また、育児、介護といった家庭環境においても業務継続が可能となり、人材の流出防止にも貢献します。 (2) ゼロトラストの考え方にもとづくセキュリティ

NTT Comが提供するリモートアクセスサービス「Flexible Remote Access」※2や次世代インターコネクトサービス「Flexible InterConnect」※3など、ゼロトラストの考え方にもとづく先進的なセキュリティ技術を採用し、SaaSなどのパブリッククラウドサービス利用時における不正侵入や情報流出リスクを低減します。

※1:ゼロトラストは、「信頼(Trust)を何に対しても与えない(Zero)」という前提に立ったセキュリティ対策の考え方で、社内外問わずすべてのアクセスに対して認証と許可を厳密におこないます。
※2:「Flexible Remote Access」は、NTT Comが提供するデータ利活用基盤「Smart Data Platform」の1メニューで、オンプレミスやパブリッククラウドに点在する社内業務システムやSaaSなど各種のICTサービスに、在宅勤務環境などどこからでもセキュアに接続できるリモートアクセスサービスです。
※3:「Flexible InterConnect」は、NTT Comが提供するデータ利活用基盤「Smart Data Platform」の1メニューで、さまざまなICTリソースを閉域網内でオンデマンドかつセキュアに接続可能な次世代インターコネクトサービスです。

 

まずはデジタル化から

堀井市長はDXに取り組む手前のステップとしてまずデジタル化の必要性を説く。「限られた人数の職員で市民向けサービスを向上させるためには、業務の効率化が欠かせません。紙ベースでのやり取りや資料作りに時間をかけていた仕事をデジタル化することによって市民向けの仕事に時間を振り向けられるようにしていきたい」と語る。

だが、ハードが整ったからといってデジタル化、DXが進むとは限らない。「どの業務を効率化できるのかという意識を一人ひとりが持つことはもちろんのこと、効率化を進めていくための知識、経験も積み重ねていかなければ」と堀井市長。そのため、デジタル人材も迎え入れ、「まずはシステムの扱い方について指導をいただきながら、自分たちが担っている業務の中でどういうところが非効率で、どのようなツールを使えばそれが改善できるのかを自分自身で判断し、実行できるところまで能力を高めていきたい」とその役割に期待を寄せている。

リモートワークの普及については、堀井市長の就任後、さらに強化していく方針だ。「例えば新型コロナウイルスのような感染症が再び起こった時や、当市の場合有珠山の噴火も想定され、役所で勤務することができない事態も想定されます。働き方改革の視点からはもちろんのことBCPという観点からもいざというときに市民サービスが円滑にできるよう、職員が日常的にリモートワークに慣れておくことが必要」と話す。また「オンラインで仕事をすると、ルーティンワークと自分が判断すべき仕事の切り分けが明確になり、業務の整理につながる。それに伴ってマニュアルなども作成できれば仕事の標準化にもつながり、業務の引継ぎもしやすくなる」とリモートワークの効用にも着目し普及を図っていこうとしている。

デジタル化の先に見据えるDX

デジタル基盤が整った今、堀井市長がデジタル化の先に見据えるのが「デジタルを使って新しい価値を創出する」DXだ。「例えば、市民とのやり取りを双方向で行うことで相談内容を解析し、子育て施策の立案に生かすことができるほか、市役所内部にある情報を可視化して外部に発信することによって、それを見た事業者が市内の出店適地の判断材料にするなど産業にも寄与できると考えています」と堀井市長。「EBPMの観点でも、健康や医療、教育など、複合的なデータをきちんとまとめて政策立案に活用することが必要です。また、オープンデータ化を進めデータを有効に活用いただくことで、イノベーションの創出へと繋げていきたい」とDXの可能性を語った。