電力と交通のシステムを統合することで、まちの課題を解決する

ITを基軸に先端的技術を集結し、未来型の社会システムを目指すスマートシティ、スーパーシティ。早稲田大学理工学術院教授で、同大学のスマート社会技術融合研究機構長でもある林泰弘氏は、電力と交通の両システムの統合をテーマに、宇都宮市を実証フィールドとし、エネルギーのスマート化を目指している。

林 泰弘(早稲田大学理工学術院先進理工学部 教授)

電力と交通を一体的に考える

「スマートシティ、スーパーシティで重要なのは、異分野のカップリングです。違うセクターをつなげることだと考えています」と語る、早稲田大学理工学術院の林教授。

林教授のチームが宇都宮市や民間企業と連携し、官民の様々なデータを分野横断的に収集・分析する研究を始めたのは、2017年のこと。超スマート社会の前提となる持続可能な低炭素社会をまちレベルで実現する基盤をつくるべく、「電力システムと公共を含む交通システムの統合」をテーマに、「超スマートシティ・サービスマネジメント・プラットフォーム」の構築と、「電力・交通システム統合モデリングツール」の開発を目指している。その成果として、2020年5月には電力・交通の最適化を目指す「E-MaaS構想~時空間マルチダイナミクス予測エンジン」の開発を公表した。

持続可能な未来社会へ向け、太陽光発電などの再エネを主軸とするエネルギーへの転換は喫緊の課題だ。一方で、まちづくりの骨格となる交通システムにおいては、自動車の電化が大きな潮流となっている。

「車がガソリンで動いていた時代には、交通は交通セクター、電力は電力セクターで個別に研究・構築されてきました。しかし、今後EVがまちを走り回る時代が到来すれば、電力と交通を一体的に考えていく必要があります」

自治体への実装に向けた3つの壁

実証フィールドである宇都宮市は、環境と交通の未来都市を目指し、次世代型路面電車(LRT)の新設が進むなど、交通の様相が変化しつつある。LRTを始め、バスなどの公共交通の電化が進めば、「いつどこで電気を溜め、どこで吐き出すか」といった電力システムとの連携が重要になってくる。

「スーパーシティとは、市民が恩恵を被ることのできるまちだと考えています。環境に配慮して地域で創った太陽光の電気を、地域の中で最適に使う。例えば市のバスが全てEVになったとして、バスの充電を太陽光発電の電気が余っている時にできれば、エネルギー代は安くなり、市民の移動も安くなります。これを電力と交通、異分野のカップリングで実現するのです」

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