新規事業は提案制度だけでなく風土醸成へ 成功をもたらすポイント

想定外の事象がさまざまな分野、業界で、次々に生じている。企業にとっては、環境変化を味方につけ事業機会と読み替えて、新規事業を探索し、立ち上げる必要性が強まっている。全管理職・全社員が、常に事業機会を探索し、新規事業を構想すべき時代になりつつある。

今、「新規事業提案制度」は、ほぼ全ての大企業に存在し、中堅企業でも導入されつつある。しかし、「制度」を作れば、自然に新規事業の構想が生まれてくるものでもない。むしろ、逆に、事業構想に「取り組む社員/取り組まない社員」の二極化が進み、経営トップにとって予期せぬ「分断」が、社内に起こる企業も少なくない。一度は、事業構想に「取り組む」意欲を見せた若手社員も、「挑戦をするよりも、言われたことだけをする方がよい」との価値観に変容し、やがて自社に幻滅し、転職や起業に転ずる、という。

こうした状況に強い危機感を抱き、「新規事業への挑戦風土」や「社員が自発的に事業構想する風土」を作りたいが、どうしたら良いか?、と本学に相談にみえる経営トップや新規事業支援部署の方が増えている。そこで本学でも、昨年度「事業構想風土醸成プロジェクト研究」を立ち上げた。

風土醸成は4段階で進む

事業構想の風土醸成では、第1段階として、経営トップ主導で新規事業の必要の意思「表明」がされる。新規事業に関する方向性や目標値が提示されるのである。この時、同時に、新規事業専門の推進部署が新設または改組、統合されることが多い。

トップの「表明」を受けて、新規事業提案制度に代表される「制度」が出来、そのための事務局組織、すなわち、新規事業支援の部署が立ち上がることが多い。これらは、風土醸成の第2段階である「仕組」段階といえる。

「表明」「仕組」の2段階を経て、社内に挑戦や変革の萌芽が見え始める一方で、制度のみによる限界に遭遇する。制度を持続的に機能させるためには、別途、打ち手が必要なのだ。支援部署は、制度の設計・運用以外に、応募啓蒙イベントや、応募のための準備学習ワークショップなどを開催し、社員の興味や意欲を引き出し、新規事業へ自ら挑戦する「自発性」を促進する。いわば、第3段階の「仕掛」段階とも言えよう。

支援部署の「仕掛」が奏功すると、提案制度への応募者数も増え、質も高まることが多い。個人の高まった意欲を、組織の行動に伝播させられるか否かの鍵を握るのが、提案者の直属の上司の「姿勢」である。上司が「本業が忙しいのに、何をしているのか」という「監視」姿勢を見せるか、提案内容に関連する情報や人脈を紹介したり、一時的に業務の軽減へ考慮する「支援」姿勢を見せるか、に二分される。

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