アバターロボットとともに万博へ 病気のこどもたちに届ける「どこでも万博」
(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2025年9月10日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

XR※を活用して社会課題の解決に取り組む企業や、大阪・関西万博を契機にXRがさらに広がりを見せる様子に注目する「シリーズ:XRが拓く未来社会 〜万博で見えた可能性〜」
※XR:AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)といった、現実の物理空間と仮想空間を融合させて、新たな体験を創造する先端技術の総称。
第3回は、日常生活において制限を抱えるこどもたちが、病院や自宅からでも万博を体験する「どこでも万博」の取組をお届けします。
病院や自宅から、万博を「歩く」
「分かるお友達いるかな?チャットでもいいよー」と優しく司会の男性がアバターロボットに語りかけます。ロボットの上部にいる画面の向こうでは、こどもたちがそれぞれの場所から、それぞれのペースで、万博の世界を楽しんでいます。
連日大人気の大阪・関西万博のイタリア館。日常生活において制限を抱えるこどもたちが、病院や自宅からでも万博を体験する「どこでも万博」がイタリア館の全面協力のもと開催されました。
「どこでも万博」は、さまざまな企業や医療機関が協力した「スペシャルキッズ未来構想チャレンジコンソーシアム」を中心に実施。兵庫県神戸市にあるiPresence株式会社が提供する遠隔操作型アバターロボット「temi(テミ)」を使って、病気や障がいのあるこどもたち=スペシャルキッズが、病院や自宅から万博の会場を体験できるようになっています。
こどもたちはスマートフォンやタブレットを使って「temi」を操作し、会場を歩くように散策します。ロボットにはカメラやスピーカーがついていて、展示を見たり、来場者と会話をしたりすることもできます。

万博の期間中には、全国の病院と連携して約40回の実施が予定されており、約3000人のこどもたちが参加することを目指しています。7月に実施されたイタリア館の体験プログラムには、全国の医療機関や家庭から30組のスペシャルキッズが参加しました。
※イタリア館では混雑を考慮し、ロボットの移動は現場の担当者が操作しました。
画面の向こうに広がるイタリアへの旅
temiは、イタリア館の職員さんとこの日の案内人である佐伯恵太さん(こどもたちからは「けいくん」と呼ばれていました)と回ります。佐伯さんはサイエンスショーでも活躍しているタレントさんです。
古代ローマ時代の彫刻やレオナルド・ダ・ヴィンチの素描など貴重な美術品が多く展示されているイタリア館。佐伯さんは説明したりクイズを出したり、ずっとtemiを通してこどもたちに話しかけます。こどもたちの反応はそれぞれ。音声をオンにして答えたり、ジェスチャーをしたり。集中して見つめている子もいます。

temiは屋上の庭園にも移動します。ここには現地に来なければ取得できないミツバチの生態や役割を紹介する二次元バーコードがありますが、もちろんそれも映します。こどもたちや保護者の方が、それぞれのスマホでパチリ。
最後はこどもたちから質問タイムです。「好きなイタリア料理は?」「イタリアでおすすめの場所は?」などこどもたちは興味津々。佐伯さんは「○○ちゃんも質問は大丈夫?」「お話してくれてありがとうねー!」と優しく語り掛けます。
最後はグラッツィエ!(イタリア語で「ありがとう」)で集合写真。佐伯さんが「旅の記念に撮ろう!」と言っていたのが印象的でした。

万博は、すべての参加者にとって、日常では味わえない特別な体験です。事前の準備を通じて、この時間に込められたスペシャルキッズたちの強い思いを感じ取った佐伯さんは、得意のエンターテインメントを活かしながら、こどもたち一人ひとりと楽しい時間を共有することを何よりも大切にしていました。
「みんなの気持ちに寄り添いながら、僕も一緒にわくわくを感じて、この時間を楽しんでいます!」と、佐伯さんは笑顔で語ってくれました。
テクノロジーで思いやりを~誰もが主役になれる社会の実現に向けて~
「どこでも万博」は、単なる遠隔体験にとどまらず、テクノロジーと人の思いやりが融合した未来の体験です。移動の自由が制限されているこどもたちにとって、ロボットを通じて世界を「歩く」体験は、自分が世界とつながっていることを実感できるかけがえのない時間。それは万博の理念である「いのち輝く未来社会のデザイン」を体現するものです。
万博という世界的な舞台で、誰もが主役になれる社会の実現に向けて。「どこでも万博」は、今日も新たな旅を支え続けています。
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- 近畿経済産業局 公式note