大阪・関西万博で学ぶ「防災メタバース」自然災害から命を守る最新XR体験

(※本記事は経済産業省近畿経済産業局が運営する「公式Note」に2025年8月26日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

大阪・関西万博で学ぶ「防災メタバース」– 自然災害から命を守る最新XR体験

仮想空間や現実世界を融合させることで、新たな体験が可能となるXR技術(※)。VR元年といわれる2016年以降、様々な分野での活用が広がり、2025年大阪・関西万博でもXRを用いた展示や催事が数多く見られます。近畿経済産業局では、XRを活用して社会課題の解決に取り組む企業や、大阪・関西万博を契機にXRがさらに広がりを見せる様子を「シリーズ:XRが拓く未来社会 〜万博で見えた可能性〜」としてお届けします。

※XRとは、AR(拡張現実)、VR(仮想現実)、MR(複合現実)といった、現実の物理空間と仮想空間を融合させて、新たな体験を創造する先端技術の総称。

第1回は、防災教育にも XR が使われる──その最前線を取材しました。2025年5月28日に、大阪・関西万博のEXPOホール(シャインハット)で開催された「防災万博」をご紹介します。

EXPOホール(シャインハット)
EXPOホール(シャインハット)

「防災万博」とは

防災を「自分ごと」として考える社会を目指して、メタバースやAIなどの先端技術を用いたアイデアや取り組みの発表がありました。
発表者は小学生、大学の先生、市長、ベンチャー企業、障がい者、Tik Toker(ティックトッカー)など、世代もバックグラウンドもさまざま。

共通するのは、「自然に」防災意識を根づかせるためのアプローチ。ストーリー性があるゲームを楽しんでいるうちに身についていたり、地元の事例や建物を使っているので自分事として捉えたりできます。

「防災万博」は、防災を専門知識ではなく、誰にとっても身近で必要な日常スキルへの進化することを目指し、新しい形での防災教育を日本に根付かせたいと開催されました。

聴覚障がい者も楽しめる“サイレントワールド”

例えば、聴覚障害者でインフルエンサーの「難聴うさぎ」さんは、音を可視化するギミック(仕掛け)を活用して、的を撃ちながらゴールタイムを競うメタバース上のゲームを、骨伝導イヤホンを開発するソリッドソニック株式会社(兵庫県神戸市)の久保さんとともに開発しました。「耳が聞こえないとサイレンが聞こえない。このゲームが防災にも活用されれば」という難聴うさぎさんの思いが、久保さんが取り組んできた「聴覚ハンディキャップが存在しない社会の実現」とマッチ。聴覚レベルに関係なく楽しめるメタバース空間「サイレントワールド」 の構築も開始しています。

現在は、このゲームのデフリンピック(※)登録を目指しているそうです。

※国際ろう者スポーツ委員会(ICSD)が4年に1回主催する「きこえない・きこえにくい人」のためのオリンピック。

サイレントワールド 登壇者紹介のスライド

宇部市が挑む“メタバース × 地方創生”

山口県宇部市は教育研究機関が多く、野外彫刻展として世界で最も歴史ある「UBEビエンナーレ」を開催する都市ですが、人口減少が喫緊の課題となっています。「研究シーズを生かし、成長産業分野を増やしていきたい。そのためにメタバースを活用してデジタルスキルを持つ人材を育成していく」と篠﨑市長は話します。

具体的には、野外彫刻展の会場である「ときわ公園」をメタバース上に再現した「メタバースときわ公園」をフィールドに、イベントを開催するほか、実際に市長のアバターを作成してみるなど、若者がデジタル技術に触れる機会を提供しました。今後は「防災訓練や国内外の観光客への誘致に活用していきたい」とのことです。

メタバース上に再現した「メタバースときわ公園」を説明するスライド画像

マインクラフトで描く防災×SDGs の未来

また、子どもたちによる防災アイデアの発表もありました。

「すまいるキッズ&子どもSDCクラブ」の子どもたちは、自分たちの住む街をWell-Being、SDGs、防災のキーワードをもとに、マインクラフト(※)でワールドを制作し、子供たちの目指す社会を発表しました。

独創的なアイデアはもちろん、大人も驚くほどの堂々たるプレゼンテーションで、子供たちの未来を思う真剣な気持ちが伝わってきました。

※マインクラフト:バーチャル空間の中で「ブロック」を使って自分の好きな世界を創造するゲーム。

登壇する子どもたち

Meta Heroesが育てる次世代“防災ヒーロー”

防災万博を主催した株式会社Meta Heroes(メタヒーローズ)の代表取締役の松石さんは、「これまでの環境や価値観で評価されなかった人が輝ける場所がメタバースにはある」として、大人も子どももメタバースやAIなど最先端のテクノロジーを学んで、社会全体で学び合う循環を目指しています。

登壇する松石さん
登壇する松石さん

次世代の「ヒーロー」を各地域で生み出すことを目指すMeta Heroes。「ヒーローとは社会を変える力を持っている人。テクノロジーを使いこなすことができれば、どんな人でも世界を変えることができる」と語る松石さんは、今日の発表者からたくさんのヒーローが誕生することを確信しています。

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近畿経済産業局 公式note