上川大雪酒造 町との協働で生む企業ブランドと地域活性

北海道の上川町で、近年注目を集める上川大雪酒造。2017年に誕生した酒蔵だが、同社は創業時より取り組む戦略により、わずか5年で企業ブランドを確立し、JAL国内線ファーストクラスで採用されるなど、全国屈指の有名酒蔵に成長した。同社はどのような事業戦略で、スピード感ある発展を可能にしたのか。

塚原 敏夫(上川大雪酒造 代表取締役社長)

人口が減り続ける時代に、
地方ビジネスを成功させるには

北海道・大雪山の麓にある、人口約3300人の上川町。名湯として名高い層雲峡温泉があり、アウトドアを楽しむ人が年間を通して訪れる観光産業が基盤の町だが、近年は、2017年に創設された上川大雪酒造が全国から大きな注目を集めている。その背景にあるのは、地方創生と一体化した、前例のない新たな酒蔵経営の手法だ。

同社代表の塚原敏夫氏は脱サラ後、2012年に北海道出身のフレンチの巨匠・三國清三シェフとレストラン運営会社を設立。上川町ではイタリアンレストラン「フラテッロ・ディ・ミクニ」を経営している。上川大雪酒造の創設のきっかけを、塚原氏は「冬場のための産業を新たに作りたかったから」と語る。

「上川町でレストランを開きましたが、国立公園の中ですし、ニセコのように冬場に多くのお客様が来るスキー場があるわけではありません。夏は繁忙期ですが、冬は11月から翌年の5月まで半年以上雪の中で、開店休業状態が続きます。冬にも何か産業を作らないと従業員の給料を払い続けていけないので、冬のための産業を作ろうと考え、日本酒の事業を立ち上げました」

上川町はもちろん、日本の人口は今後、確実に減っていく。そのような時代に、「地方でビジネスをやる上で、絶対にやらなくてはならないこと」が2つあると塚原氏は言う。

「1つは、酒蔵ではなく、その地域を有名にしなくてはいけないということ。上川町という町を知っている人が増えることが必須です。もう1つは、優秀な人材の採用です。『北海道の田舎だからこういう人でいいだろう』というのは絶対になく、東京でも通用する人を確保して連れて行かないと、地方でもビジネスはできません。そのような人を採用するためにも、上川町を有名にすることが必要でした」

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