電力販売契約活用で地域の再エネを促進 地産地消実現へ

ESG投資を呼び込み、地域脱炭素を実現するためには、再エネの地産地消が重要になる。再エネ電力会社のLooopは、電力販売契約(PPA)モデルを活用した地域での再エネ地産地消を提案する。

中村 創一郎(Looop 代表取締役社長)

再エネ導入と地産地消を
進めてESG投資を呼び込む

Looopは東日本大震災直後の2011年4月、被災地で行ったソーラーパネルと蓄電池の設置ボランティアをきっかけに創業した。現在は再生可能エネルギーの設備開発からメンテナンス、電力供給までを一貫して行う世界的にも珍しい再エネ電力会社だ。

「日本のエネルギー事情は、深刻な状況です。東日本大震災後、原子力発電による発電量は落ち込み、現在は発電の67.2%を化石燃料に頼っています。世界では環境・社会・企業統治に配慮するESG投資が増えていますが、その投資先を選ぶ際に、企業が再エネを利用しているかが条件の1つになります。現状ではESG投資を呼び込めません。この状況を変えるために必要なのが、エネルギーの地産地消の実現です」。

Looop 代表取締役社長の中村創一郎氏は言う。Looopでは、エネルギーの地産地消に向けた最も効率が良い手法で、その第一歩となる「PPA(電力販売契約)モデル」を提案している。このモデルでは、エネルギーサービス会社が太陽光パネルを無償で設置し、運用・保守も提供する。需要家は電気代を支払い、そこで発電した電気を購入する。契約期間は15~20年程度で、期間終了後は設置した太陽光発電設備が需要家のものになる。

「PPAモデルは、国内でも既に広がっています。収益性の高いモデルですが、大部分は都心部の会社がやっています。今後は地域が中心となるべきで、私はPPAモデルを活用した地元企業との合弁(ジョイントベンチャー)モデルを提案します。地元企業がエネルギーサービス会社に出資し、地元の金融機関もESG投資や出資をします。私たちも一部出資して、オペレーションを担うことができます」。

PPAモデルは家庭用のほか、工場や公民館のような公共の施設への太陽光パネルの設置にも活用できる。太陽光発電による電力の地産地消は、蓄電池の設置に加え、利用者が相互に融通し合うことで効果的に行える。

「再エネによる地産地消が進めば、ESG投資が集まり、脱炭素への取り組みを加速させられます。また、地域での投資が盛んになれば、地域に人材も集まり、地方創生も現実的になるはずです」(中村氏)。

防災拠点にもなる再エネ拠点で
堅牢な地産地消を実現

再エネの促進やエネルギーの自給自足、PPAモデルの普及には追い風が吹いている。2020年10月には菅義偉前首相が「2050年カーボンニュートラル宣言」を行い、今年6月には国の「地域脱炭素ロードマップ」が公表された。また、国土交通省などの有識者の検討会は、2030年までに新築戸建て住宅の約6割に太陽光発電設備を設置する目標を打ち出した。

「目標の達成は難しいですが、PPAモデルを組み合わせれば可能になるはずです。第6次エネルギー基本計画の素案には、2030年度の総発電量のうち36~38%を再エネで賄う計画もあります。その実現に向けては地方から変えていくことが重要で、自治体の協力があれば加速できるでしょう」。

自治体や地元の企業、金融機関、そしてエネルギーサービス会社の協働で設置した再エネ拠点は、防災拠点にもなる。PPAモデルによる太陽光パネルの無償設置や蓄電池、防災グッズを活用すれば、より堅牢なエネルギーの地産地消が実現するはずだ。

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