前橋市の住民サービスの向上と業務効率化 協創で実現するITのまち

地域のDXを推進し、市民の利便性向上、行政事務・サービスの効率化に積極的に挑む前橋市。ドコモとの連携協定など公民連携も進む。同市の大野副市長とドコモ町田氏が、自治体DXについてトークセッションする。

自動車社会の前橋では、子どもや高齢者など車を運転できない人の移動手段の確保が大きな課題だ

群馬県の県庁所在地、日本のほぼ真ん中に位置する人口約33万の前橋市。物価が安く、医療が充実しており子育て世代に優しいまちと言われる一方で、公共交通に大きな課題を抱えている。

車社会の交通弱者を救え

前橋市の交通分担率は自動車が75%で公共交通機関は4%に満たない。完全な自動車社会で、子どもや高齢者の移動手段の確保が大きな課題となっている。こうした課題に対し前橋市は、JR東日本、ドコモ、群馬大学などと連携し「前橋市新モビリティサービス推進協議会」を設置。公共交通の高度化を狙った「前橋版MaaS(MaeMaaS)実証実験」を行っている。

早くからマイナンバーカードの活用に着手してきた前橋市。前橋版MaaSでは、マイナンバーカードと交通系ICカードの連携や、自動運転バスに、マイナンバーカードと顔認証を活用し手ぶらで乗車できる取組みなどの実証実験も進めている。

「前橋市ではさまざまな方との連携協定を積極的に結んでいます」と副市長の大野誠司氏。2018年5月にドコモと連携協定を締結。5Gとマイナンバーカードを活用した救急搬送の高度化に取り組む。

大野 誠司 前橋市 副市長

行政の事務・サービスの効率化については、DXの推進により、市民が時間や場所に縛られず、いつでもどこでも市役所に繋がれる未来を目指す。他自治体と共創で「自治体行政スマートプロジェクト」を推進するほか、東京大学、帝国データバンク、三菱総合研究所などと連携し、データに基づいた政策策定(EBPM)推進にも力を入れる。

「今後の方向性としては、スーパーシティ構想を掲げています。ただ、SF映画のような近未来を目指すのではなく、デジタル技術がそれぞれの人に寄り添ってゆとりを生んでいく。“スーパーシティ×スローシティ”をコンセプトとしています」(大野氏)。

前橋市DX推進計画では、DXを「デジタル技術とデータの活用を推進し、住民本位の行政・地域社会に再構築するプロセス」と定義。デジタイゼーションからデジタライゼーション、そしてDXへと3つの段階を経ながら、あるべき姿に向かっていく。

「群馬県の郷土かるたに、『県都前橋生糸(いと)の市(まち)』とありますが、今後はこれを『県都前橋IT(いと)の市(まち)』にしていくところを目指し、取り組んでいきたいです」(大野氏)。

自治体DXへソリューションを提供

前橋市と連携協定を締結するドコモでは、総務省の「自治体DX推進計画」に対し、「くらしのDX」「行政のDX」「産業のDX」の大きく3つの分野におけるDX推進を支援する。

ドコモ・法人ビジネス本部 DXソリューション部長の町田直氏は「自治体DXにおいては、『組織文化・働き方変革』『住民サービス変革』『ニューノーマル変革』の3つの方向性でソリューションを用意しています」と話す。

株式会社NTTドコモ・法人ビジネス本部 DXソリューション部長の
町田 直氏(右)、事業構想大学院大学 事業構想研究所教授の
河村 昌美氏

「くらしのDX」としては、住民向けサービス向上ソリューションを提供。例えば「FAQチャットボット」は、問合せ対応を自動化することで、業務時間外の問合せを可能とし、自治体職員の業務も効率化する。ドコモの「FAQチャットボット」を導入することで、郡山市では戸籍・住民票などの手続きに関するよくある問合せの一次対応を自動化。横浜市ではごみ・資源物の分別方法をチャットボットで案内している。24時間365日の自動応答で、全体の3割を占める業務時間外での問合せにも対応する。また、GPSデバイスの位置情報を活用したサービスは、認知症徘徊対策として、多数の自治体が導入している。

「行政のDX」としては、自治体の業務効率化による住民向けサービスの品質向上ソリューションを提供する。国内シェアNo1※1のRPAソリューション「WinActor®」は、パソコン上で日常的に発生している定型作業をソフトウェア型のロボットに記録させることで自動化することができる。

北海道紋別市では、「WinActor®」を導入し、ふるさと納税業務を改善。年間336時間の業務の削減を実現し、業務短縮で空いた時間でデータの詳細な分析や新たな返礼品開発など、地元業者とのコミュニケーションを深めている。

「こうしたRPAを各自治体で作るとなるとコストが高くなります。当社ではRPAをプラットフォーム化し、コストを抑えたソリューションも提供しています」(町田氏)

自治体DXの成功のカギは面白さ

前橋市のDX、ドコモの自治体DXへの取組みについての紹介の後、進行役の事業構想研究所・河村昌美教授を交え「住民サービスの向上と業務効率化に向けた取組みと展望」と題したトークセッションを実施した。

ICT活用によって市民の利便性、自治体業務の効率化を進めていくにあたり意識していることについて、前橋市の大野副市長は「『面白い』という視点が大事」と話す。DXの取組みには財政的にも人的にも一時的なコストがかかる。「『面白い』と思えることは、財政的には国の事業への採択、支援につながるでしょうし、民間企業との協業にも繋がりやすい。また、それにかかわる職員のモチベーションにも関わるかと思います」(大野氏)。

ドコモの町田氏は、自治体DXの推進に向けて、部局横断の重要性を指摘。「自治体に限らず、企業においても、横の業務、課題を知ってディスカッションできる組織は、DXが上手く機能する傾向にあります。部局横断の考え方が浸透してくると、自治体DXはもっと進むかと思います」(町田氏)。

また、両者が意識するのがアジャイルの発想。100人いたら100人使えないとシステムとして価値がないと見るのではなく、80点でも動かして、住民の評価、声を反映しながら改善していく考え方が自治体DXには必要となる。

進行役の河村氏は「DXはイノベーション。トランスフォーメーションしなければなりませんので、専門部署を作ればいいということにはなりません。チャレンジ、部局横断、アジャイル、人材交流も含めた公民連携といったキーワードが、今後の自治体DXのカギになっていくかと思います」とまとめた。

※1ミック経済研究所2019年10月発刊「驚異的な拡大続くRPAソリューションの市場動向2019年版」より

 

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