NTT西日本ら5者のアセットを結集、地域の「Well-being」向上をめざす

「第1回 地域創生推進フォーラム」では、地域創生推進コンソーシアム構成員が取り組む地域実践事例の紹介やデジタル庁幹部による地域創生を取り巻く最新状況に関する講演、構成員によるパネルディスカッションなどが行われた。講演のポイントを紹介する。

NTT西日本 「地域創生Coデザインカレッジ」を開講

コロナ禍でのテレワーク経験などを踏まえ、地方への移住定住への関心が高まっている。その一方、地域には少子高齢化による働き手不足、社会インフラの老朽化、都市部との格差などさまざまな課題が山積している。

NTT西日本グループでは、これらの課題を抱える地域社会の活性化に向けて、2019年9月から「地域創生プロジェクト」に取り組んでいる。これは各支店長をプロジェクトオーナーに、地域課題を自分ごととして深掘りして考え、地域のパートナーとともに持続可能な解決策を創出する活動だ。10の重点分野を通じて地域社会のスマート化に貢献する「Smart 10x」と併せ、同プロジェクトの推進を加速させてきた。

NTT西日本の小林充佳社長は「一般的に地域創生の取り組みは長続きしない、あるいは機能しないまま終わることも多かった」と指摘した上で、真に地域課題を解決するためには2つのポイントがあると話す。

小林 充佳 NTT西日本 代表取締役社長 社長執行役員

「地域創生の主役はあくまで地域住民です。利用者目線・住民目線で進めていくには、地域の主体として、思いを同じくするパートナーと連携し活動を促進する体制が必要です。もう1つは、地域創生を進める上で多様なノウハウを蓄積・展開し、地域主体の地域創生活動を支援していくことも欠かせません。例えば、他の地域の事例を横展開することも肝要です」

そうした考えのもと、昨年7月、地域創生を専門とする子会社「地域創生Coデザイン研究所」を設立。同時に、パートナー5者との連携で「地域創生推進コンソーシアム」を設立し、リソースの相互補完や相乗効果を形成しながら、誰もがどこにいても、相互に助け合いながらいきいきと暮らし働ける世界「Social Well-being」の実現をめざしていることを紹介した。

地域創生活動を一層推進するため、今年10月、地域創生のノウハウを地域に提供し、実践できる人材を育成する「地域創生Coデザインカレッジ」を開講する。講座では、今年3月に開設したオープンイノベーション施設「QUINTBRIDGE(クイントブリッジ)」と連携し、アイデアを社会実装までつなげていく。

「事例の共有や情報発信の場として、今後も地域創生推進フォーラムを継続的に開催していくことで、Well-being社会への扉を皆様と一緒に開いていきたいと思います」と小林氏は力強く語った。

パソナグループ 淡路島移転でめざす「真に豊かな生き方・働き方」

国内・海外 約50社で人材ビジネスを展開するパソナグループは、2020年9月、兵庫県淡路島に本社機能の一部移転を発表した。2024年5月までに管理部門を中心に1,200人を移動する計画だ。

「地域が日本経済を牽引することで、日本中を元気にしたい。そのためには、工場ではなく人材を誘致すべきです」と代表取締役グループ代表の南部靖之氏は話す。パソナグループでは、2008年から農業ベンチャー支援として「パソナチャレンジファーム」を淡路島に開設。その後も淡路島を拠点に数々の就業支援を実施し、各地から人材を誘致してきた。

南部 靖之 パソナグループ 代表取締役グループ代表

今回の移転は3つの狙いがある。1つは、コロナ禍を踏まえたBCP(事業継続計画)。2つ目は、「真に豊かな生き方・働き方」を実現するため。3つ目は、スタートアップと連携し、淡路島から日本の未来を創る人材と新産業を創出するためだ。

これらの狙いを達成すべく、島では3つの取り組みに力を入れている。

1つは、「Wellness Life」を実現するため、今春開業した座禅リトリート&レストラン「禅坊 靖寧(ぜんぼう せいねい)」だ。禅やヨガなどのアクティビティと健康的な料理を通じ、心身のバランスを整えるという。

2つ目は、地域創生の観点から「Art&Culture Base」として、兵庫県立淡路島公園にアニメパーク「ニジゲンノモリ」を設立し、「クレヨンしんちゃん」や「NARUTO」「ゴジラ」「ドラゴンクエスト」「鬼滅の刃」などのアトラクションやイベントを実施。

3つ目は「International Hub」として、世界から集まった若者を育成するプログラム「Awaji Youth Federation」を展開するほか、今春にはインターナショナルスクールも開校した。「インターナショナルな島として、淡路島と世界がつながることをめざします」

講演では「心の黒字」という言葉を繰り返した南部氏。その状態になるには地域創生とICTの活用が鍵を握ると語った。

NTT社会情報研究所 集団の調和と個人の自律が両立した「Social Well-being」な社会を共創

地域創生推進コンソーシアムにおいて、未来社会をデザインする役割を担うNTT社会情報研究所。

所長の平田真一氏は、社会は経済的価値の競争モデルから、Well-beingを尊重する持続的共創社会モデルへ移行していると述べた上で、「地域創生を考える上では、個人のWell-beingはもちろん、地域における集団のWell-being、すなわちSocial Well-beingを重視した未来社会を考えることが重要です」と話す。

平田 真一 NTT社会情報研究所 所長

Well-beingな未来社会のイメージについて、平田氏は「働く(well-working)」、「学ぶ(well-learning)」、「家族・地域(well-bonding)」の3つのシーンに分けて紹介した。

「働く」は、自分の意欲に素直に働くことで、お金に限らない報酬を得られる社会。そして「学ぶ」は、リアル世界と情報世界を行き来しながら<教える・教えられる>ではない学びを続けられる社会。「家族・地域」は、血縁や物理的な距離に関わらず、自分らしいと感じられる関係性の中で生活を選択でき、新たな支えあいやチャレンジにつながる社会が実現されるという。

Social Well-beingな社会をつくり、広げていくには共通の土台が必要だと平田氏は言う。その土台づくりには、テクノロジーと人文・社会科学の知見を融合することが重要となる。

「私たちは、長年培ってきたICT技術と人文社会科学を融合し、社会システムの変容を促す技術の研究開発を行ってきました。それらの成果をもとに、皆様とともにSocial Well-beingな社会の実現に取り組んでいきたいと思います」と平田氏は語った。

地域創生Coデザイン研究所
持続可能な共創循環を創出

地域創生Coデザイン研究所は、持続可能な共創循環を生み出すことで、地域主体の地域創生を推進する役目を担う。地域創生活動を持続的なものとするには、課題探索からシナリオ構想・実行計画策定・シナリオ検証・社会実装のサイクルをうまく機能させることが肝となる。「まず課題探索とシナリオ構想では、地域へ深く入り込んで真の地域課題に迫り、その解決プロセスをしっかりと探索し紡ぎ出すこと。次に、解決プロセスを社会実装につなげるために、多様なサービスやデータを活用して構想を具現化すること。さらには、プラットフォームを通じた横展開で、活動地域や事業領域を連鎖させ、広く社会へ浸透・波及させていくことが重要です」と所長の木上秀則氏は3つのポイントを説明した。

木上 秀則 地域創生Coデザイン研究所 代表取締役 所長

取り組みの一例が宮崎の「ICTを活用した森林経営管理」だ。「ドローンなどを用いて森林情報をデジタル化し、地域のデータと掛け合わせることで、木材を提供する森林所有者や素材生産者と木材を必要とする工務店や製材所をつなぎ、国産木材の安定供給やカーボンニュートラル社会の実現をめざしています」

愛媛では、健康・福祉などのコミュニティ活動を自助・共助で支えることをめざし、「自助・共助を育む協働と共創のまちづくり」を推進。活動に参加した住民に地域ポイントを付与するとともに、SDGsを旗印とした地域課題解決への貢献度を可視化して、住民の行動変容を促し、地域経済活動とコミュニティ活動を両輪で活性化させているという。

さらに木上氏は、地域創生の主体者が集い・学び・つながる場として、「地域創生Coデザインカレッジ」を開講することを発表した。地域創生推進コンソーシアムをはじめとしたNTT西日本グループのパートナーのアセットを活用し、共学(実践力研鑚)、共創(実践・実現)、共鳴(つながり)のサイクルを回していくと語った。

デジタル庁 地域に創造的人材を集め共助のデジタル生活基盤を構築

人口減少期にある現在は、購買価値よりも利用価値が重視されるようになり、シェアリングエコノミーを活用したサービス重視の経済(サーキュラーエコノミー)が重要になりつつある。デジタル庁統括官の村上敬亮氏は「デジタル技術を活用し、共助のビジネスモデルを積極的に活用した、新たな生活経済モデルを構築する必要があります」と話す。

村上 敬亮 デジタル庁 統括官

翻って地方では、需要が供給に追いついていない場面が散見される。村上氏は、免許を返納した高齢者が急増する一方、バス会社の多くが経営に苦しんでいたり、スマートウォッチを持つ患者がいる一方、健康データを活用した医療サービスを受けられない病院が多いことを例に挙げ、「民間企業が別々に新たな技術を開発すると、利用者が少ないため投資資金を回収しにくい。そのため、複数のシステムを共有する共助のデジタル生活基盤の構築が必要です」と訴えた。

一方、副業や二拠点居住を希望したり、さまざまなビジネスに挑戦したい創造的な人材に、都会の暮らしは閉塞感を与えている恐れがある。「共助のデジタル基盤を構築するには、東京よりも地域の方が可能性は大きい。『デジタル田園都市国家構想』の狙いはまさにここにあるのです」と強調した。

村上氏が提案するのがサテライトオフィスの整備だ。創造的な人材を一か所に集め、化学変化を起こす場をつくることが重要だという。同時に、補助金などの各種支援策やふるさと納税、クラウドファンディングを活用し、チャレンジプロジェクト群を組成することも欠かせないと話す。

「地域で新しい事業が生まれた場合は、市民をその輪に加えることが鍵。積極的な市民参画でまちのつながりを強化し、Well-being向上にむけたまちづくりの好循環を生み出していただきたいと思います」

PTP クリエーション・技術・協働で「金継ぎ」の如くまちの魅力を繋ぐ

江戸時代、日本海を往来する北前船の寄港地として栄えた福井県坂井市三国町。かつては「三國湊」と呼ばれ、九頭竜川沿いに廻船問屋や商家、土蔵、遊郭が軒を連ね、まちが発展した。伝統的な「かぐら建て」の町家や豪商の面影が残る歴史的建造物など、当時の歴史文化が色濃く残る三国町で、官民連携のまちづくりが進んでいる。

2013年度から2015年度まで実施された「三國湊町家プロジェクト」では、6軒の空き家を改修。市有公園を新たなコミュニティの場、木材倉庫の一部をミニ資料館、元薬局はゲストハウス、土蔵はフレンチデリ、元麹屋は盆栽ショップに生まれ変わり、まちに賑わいをもたらしている。そして今、北陸新幹線の敦賀延伸(2024年春開業予定)や文化庁の日本遺産認定を背景に、地域主体のまちづくりが加速しつつある。福井県で地域づくりのコーディネートを行うPTP代表取締役の福嶋輝彦氏は、「めざす先は三国町にしかない魅力を活かした地域創生です。地域創生推進コンソーシアムが加わることで、次なるステージの可能性に期待をしております」と話す。

福嶋 輝彦 PTP 代表取締役

新たなコンセプトとして掲げるのが、バラバラになった陶器の欠片を金でつなぐ「金継ぎ」だ。「越前瓦や格子戸、袋小路、夜の美しい光、江戸時代から続くまちの骨格、まち並み、みちなどの予定調和ではない美を、クリエーション・技術・協働といった「金」でつなぐことで、新たな風情をつくり出したいと考えています」

最後に、地域創生推進コンソーシアムに期待することとして、①地域も主体的に参画するステークホルダーグループの構築、②地域の実情やニーズ、リアルな社会課題に沿った実証・実装、③地域を豊かにしていくためのフローからストックの転換の3点が語られた。三国町はICTによる多様なネットワーク化や関係性を構築し、地域の魅力を活かしたまちづくりをめざす。

NTT西日本熊本支店
市民とともに地域共創のまちづくり

NTT西日本は熊本で産学官連携によるスマートシティ構想を推進している。熊本県・市と連携し、交通や観光、一次産業などの幅広い分野で、3期9年で28のICT利活用による地域活性化に関する実証を実施してきた。

これまでの経験をもとにNTT西日本熊本支店長の朝倉順治氏は「地域共創のまちづくりでは、地域アセットを活用した実証を通じ、地域内でデータ活用価値の理解醸成を行うこと、つまり『仲間づくり』が重要です」と指摘する。例えば交通分野では、バス路線ごとの乗降者数・人流データをバス会社の路線最適化や時刻表の見直しなどに活用してもらいながら仲間づくりを推進。その後、社会実装に向けた各種施策を実施し、公共交通利用者の増加や街中の滞在人口拡大に成功している。

朝倉 順治 NTT西日本 理事 熊本支店 支店長

また、今年3月からは中心市街地において商工会議所と商店街の方々と共同でxR技術を活用した賑わい創出に関する調査研究を行い、街中でのxR体験イベントを行っている。これは住民と地域が主体的にまちづくりに参画してもらうための仕掛けでもある。

「地域共創では、市民が効果を実感できる小さな成功体験を積み上げ、そこから大きく育てていくことが必要です。また、まちづくりを牽引し一体感を醸成するコミュニティリーダーの創出や、成長投資と地域リターンの好循環なサイクル構築も求められます。まだ道半ばですが、地域共創まちづくりをさらに深化して参ります」

NTT西日本滋賀支店 地域資源循環で、持続可能な食と農の実現へ

農林水産省は「みどりの食料システム戦略」を推進し、2050年までに耕作地に占める有機農地面積を約25%へ拡大することをめざしている。目標達成に寄与するため、NTT西日本グループは地域資源を堆肥化し、循環型農作物の栽培・販売につなげる実証を開始した。

「最初に着目したことは、琵琶湖に大量繁茂し課題となっている水草です。これに畜産堆肥やもみ殻、米ぬかなどを組み合わせ、地域資源由来の有機肥料にリサイクルすることにしました」とNTT西日本滋賀支店長の長田裕幸氏。

長田 裕幸 NTT西日本 滋賀支店 支店長

実証では、食品残渣発酵分解装置や堆肥化促進材、土壌の肥沃度を診断する技術などを活用し、従来農法と同等の農作物の栽培が可能かを検証するとともに、収穫した農作物を『循環型農作物』として販売し、環境に配慮した消費(エシカル消費)に対する動向や農家の新たな販売手法を調査した。「有機堆肥で栽培したブロッコリーは、道の駅で作り方や作り手の想いを伝えながら販売したところ、従来品より1~2割高い価格でも売れ行きは好調でした」

飲食店や小売、食品加工など、需要サイドのニーズに合わせた農作物の生産にも取り組む。「今後は地域の有機質資材を地域ごとに堆肥化し、有機肥料を製造してから流通するによって、運搬コストを抑制できると考えています。いち早く地域循環型社会を実現し、その取り組みを滋賀から全国に横展開していきたいです」と長田氏は語る。

パネルディスカッション
共創×地域創生のこれから

地域創生を理念や構想に終わらせることなく、地域で実践していくために必要なことは何か。地域創生推進コンソーシアムの構成員によるパネルディスカッションでは、観光、一次産業、スマートシティ、脱炭素、雇用創出をキーワードに、「共創を通じて実現する地域創生のこれから」について議論を交わした。

パネルディスカッション登壇者。左から、NTT社会情報研究所所長の平田 真一氏、パソナグループ取締役副社長執行役員の山本 絹子氏、NTT西日本代表取締役副社長の上原 一郎氏、事業構想大学院大学学長の田中 里沙、地域創生Coデザイン研究所代表取締役所長の木上 秀則氏

冒頭、NTT西日本代表取締役副社長の上原一郎氏は、同社が支店を持つ西日本30府県900超の自治体では、以前からICTを活用した地域課題の解決を望む声が多かったとし、「多様なパートナーとともに地域課題を解決する必要性を感じ、2年半前から全社的な地域創生活動を展開してきました」と説明。活動を通じて実感した最も重要なポイントは、課題に直面する地域が主体的に参画することだと話す。

「この課題を解決したい、このまちをこんな風に変えたい、といった地域住民の思いや熱量が何よりも重要であり、それが地域創生活動のスタートになると感じました。我々が技術ありきでソリューションを提供していては、なかなかサービスを使っていただけず、活動も継続していかないでしょう。やはり地域が主体となり、我々が仲間として地域の中に入れていただき、利他的共存のもとに多様なパートナーの皆様と一緒に汗をかきながら取り組むことが一番大切だと考えています」

パソナグループ取締役副社長執行役員の山本絹子氏も、地域の主体性が鍵になると述べた上で、自らが主体者となって地域創生に取り組むことも欠かせないと話す。

「私たちは地域が気づかなかった豊かな自然や食材の素晴らしさといった足元の宝を見つけ、それをレストランや観光施設などの新しい産業に変えていきました。この2年間で、淡路島では年間400万人以上の関係人口が生み出されています」

地域を巻き込む上で最も大切なのは雇用の創出だという。

「当グループの観光事業で従業員として働く人は約800人。そのうち約半数は地域の方です。また、地元企業を中心に取引をすることで、約8年間で投資として87億円の地域経済への貢献を行いました。今後は、進学や就職で淡路島を出た人が、帰ってくる仕掛けをつくりたいと考えています。夢は人に帰属します。1,000人の方が集まれば、1,000個の夢が実現する可能性が生まれる。そうした思いで、引き続き地域創生活動に取り組んでいきたいと思います」

自発的に地域に目を向けて学ぶ人、
動ける人を増やすためには

一方、地域の主体者だけでは地域創生は進まないという課題もある。地域が主体的に地域創生に取り組むには、自発的に地域に目を向けて学ぶ人・動ける人を増やすことも必要だ。

地域活性化に携わる人材育成を担う事業構想大学院大学学長の田中里沙氏は「地域には、『自分たちの地域が好きで、地域を何とかしたい』という思いを持った熱量のある人が多くいますが、そうした地域住民による活動を応援してくれる仲間の存在も欠かせません」と指摘。その上で、今、東京一極集中の流れが大きく変わりつつあると続けた。

「生まれ故郷はもちろん、親戚・縁者が住んでいる地域や旅行で訪れて好きになった地域など、全国各地に縁のある地域を持つ人が増える中、地域ごとの経営資源に注目する傾向が高まっています。そうした人たちと地域の主体者をつなぐことで、新しいビジネスが生まれるのではないでしょうか」

事業構想大学院大学には地域課題を自分の将来と結びつけ、主体的に事業構想を学んでいる院生が多く在籍するが、そうした夢を語れる人たちの周りには自然と人が集まるものだとも田中氏は語る。「気づきを得るための場を提供することで、互いに触発し合い、進んで何かをやりたくなるような空気感を醸成していきたいと思います」と抱負を述べた。

これを受けて、NTT社会情報研究所所長の平田真一氏も、「地域住民の多くは大なり小なり自分のまちに対する理想や将来像を持っている」と同意した上で、その思いを実際に行動に移せる人はそう多くはないと指摘。一方で、外部の第三者から地域の理想の姿を語られても、なかなか持続的な活動にはならないとも話し、外発的な動機ではなく、内発的な動機を育むことが重要だと結論づけた。その上で、さまざまな選択肢を視野に入れつつ実際にアクションへとつなげていくには、「地域の主体者が起点となり、仲間を作って活動を広げていく協調・共鳴の仕組みをつくることが必要です」と語った。

コンソーシアムを通じて
地域のWell-being向上をめざす

「個人の多様な内発的動機と共鳴させる」という点について、地域創生推進コンソーシアムでは、地域としてのWell-being(Social Well-being)向上をビジョンに掲げている。なぜこの5者がコンソーシアムを組んだのか。上原氏はその狙いをこう話す。

「我々5者には、地域創生には地域で自発的に行動できる人材を増やすことが必要であり、そのためには自らが地域の中に入り、仲間の一員としてともに汗をかくという共通の価値観・志を持っています。そして、地域がWell-beingな状態を生み出す仕組みが確立されていない一方、5者それぞれの強みを活かし組み合わせることで、その仕組みをつくることができると考え、コンソーシアムを通じた地域創生をめざすこととなりました」

パネルディスカッションを総括して、田中氏は「構想を行動に移すには、共鳴してくれる仲間が周りにいることが必要であり、このコンソーシアムはまさにその装置になると感じています。コンソーシアムを通じて得た気づきや学びを自分の中に落とし込み、互いに触発し合い成長しながら地域創生活動に取り組んでいきたいと思います」とコメントした。

最後に、木上氏は「今後も地域創生推進フォーラムを継続的に開催し、取り組みの成果や事例の報告をさせていただきたい」とまとめた。

ご案内
地域創生Coデザインカレッジ  第1回オープンカレッジ

持続可能な観光に向けて変わりはじめる
次世代観光まちづくり

参加費 無料

プログラム
① 地域の実践者に聞く!地域観光のいまとこれから
持続可能な観光地の国際的な認証団体「Green Destinations」のトップ100選に4年連続で選ばれた釜石市でのゼロからの観光への挑戦について講演

登壇者 株式会社かまいしDMC 代表取締役 河東 英宜 氏

②現場の汗かき奮闘記! ここでしか聞けない実践現場のリアル
③地域創生を実践していくポイントとは?

実施日時 : 6月28日(火)15時~17時(終了後現地参加者交流会を予定)
実施形式 : QUINTBRIDGE(大阪京橋)会場 または リアルタイムオンライン視聴
主  催 : 地方創生Coデザイン研究所  運営協力 : 事業構想大学院大学

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