シュンペーター、ドラッカーの指摘から見るヘルスケア領域

医学・行政・ビジネスの観点から医療・ヘルスケア業界の事業戦略を考える本連載。「イノベーション」というとき、それは未だ技術革新の観点から語られていることも多い。医療・ヘルスケア領域でも技術以外でイノベーションを起こすヒントは無数にある。

4月に入って新年度となり、新入社員の方が入ったり部署異動があったりするせいでしょうか、「イノベーション」に関する社内講演の依頼をいただくことが増えてきています。昨今さまざまなところでイノベーションという言葉を聞くようになりましたが、イノベーションとはどのようなことか、誤解されている点も多いと筆者は感じています。そこで今回は、今一度「イノベーション」について考え方を整理していきたいと思います。

いまだ根強い「技術革新」の
誤解

「イノベーション」という言葉に関して、よくある和訳だと「技術革新」とされていることが多くみられます。ただし、ここで強く言いたいのは、イノベーションは「技術(テクノロジー)」だけに関連したことではないということです。もともと「イノベーション」という言葉は1956年に経済企画庁(今の内閣府の一部)が「技術革新」と訳したことからブームとなりましたが、技術よりも「革新」のイメージを持ってもらったほうがよいでしょう。

イノベーションという言葉の意味の源流をさらにたどっていくと、1912年にイノベーションの父と言われるヨーゼフ・シュンペーターの著書『経済発展の理論』に行きつきます。本書では、「経済活動の中で生産手段や資源、労働力などをそれまでとは異なる仕方で新結合すること」と書かれており、この「新結合」がのちに1939年の著書『景気循環論』にて「イノベーション」と呼ばれるようになりました。

イノベーションとは新たな結合であり、既存のアイデアと既存のアイデアの新たな掛け合わせなのだといえます。『景気循環論』では、イノベーションの内容として、①新しい生産物の創出(未だ知られていない生産物、新しい品質の生産物)、②新しい生産方法の導入(生産方法で未知・未実施だった生産方法、商品の新たな意味づけも含む)、③新しい市場の開拓(従来参加していなかった市場への開拓、この市場が既存のものかどうかは問わない)、④新しい資源の獲得(新しい供給源)、⑤新しい組織の実現(独占の形成や破壊など)、という5つの領域が挙げられています。

冒頭でふれた「技術革新」は、①の新しい生産物の創出(新しい製品・サービスの開発)に該当するものであって、イノベーションを考えるうえで、技術はあくまでも一部だということがわかります。

イノベーションを見出す
7つの機会

イノベーションには5つの領域があるということを再確認したうえで、どのようなときにイノベーションの種を発見できるのでしょうか。これについては、「マネジメントの父」と呼ばれるP. F. ドラッカーが“7つの機会”をとらえることが必要だとしています。その7つとは、①予期せぬ成功と失敗を利用する、②ギャップを探す、③ニーズを見つける、④産業構造の変化を知る、⑤人口構造の変化に着目する、⑥認識の変化をとらえる、⑦新しい知識を活用する、です。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り55%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。