Web3.0事業環境を「諸外国並み」に 経産省が方針提示

世界的にWeb3.0ビジネスのムーブメントが高まっているが、日本は金融規制や税制が障壁となり、「Web3.0関連の事業が困難」と言われてきた。こうした中で経済産業省は2022年12月に「Web3.0事業環境整備の考え方」を公表、政策的視座をまとめた。

Web3.0とはブロックチェーン技術を活用した新しいインターネットの在り方を指す。インターネットは、メールやHPを通じた情報の受発信を可能にしたWeb1.0から、ビッグデータのような集合知が価値を生み出すWeb2.0へと進化したが、それに伴いプラットフォーマーによる情報管理の独占の懸念が増大。対抗するものとして、情報管理を自立分散的に処理するWeb3.0というコンセプトが台頭してきた。

すでに足元では、パブリック型のブロックチェーンを基盤に、暗号資産等のトークンを価値交換媒体とするWeb3.0ビジネスが、文化経済・金融領域で拡大してきている。急速な変化に対応するために、経済産業省は2022年7月に部局横断チーム「大臣官房Web3.0政策推進室」を設置。国内外の起業家、エンジニア、法律・税務・会計の専門家など100人以上と半年間の議論を経て、2022年12月16日に「Web3.0事業環境整備の考え方~今後のトークン経済成熟から、Society5.0への貢献可能性まで~」を産業構造審議会の経済産業政策新機軸部会に提出した。

75ページから成る本資料では、Web3.0の社会的インパクトや、ブロックチェーン技術のSociety5.0への貢献可能性を明らかにした上で、今後の政策展開の考え方をまとめている。

Web3.0の社会的インパクト

経済産業省は本資料で、国内外の事業例を提示しつつ、Web3.0の持つ社会的インパクトとして6つを挙げている。

1つ目が、文化経済領域の産業振興。日本の強みであるコンテンツ・ゲーム・アート等の文化経済領域で、①クリエイターの収益多元化、②ロイヤリティの高いファンの維持・取り込み、③ゲーム業界の新たなビジネスモデル構築等を可能にし、大きな経済価値を生む。

2つ目が、個人向けの金融商品等の多様化による投資・経済活性化。ブロックチェーン技術ならば権利移転管理等のコストが大きく個人向け販売が難しかった金融商品を、トークン化(デジタル化)して販売できるようになる。国内では銀行による不動産信託受益権等のトークン化や、ウイスキー樽中の蒸留酒をNFT化しNFTとして販売する例がある。

3つ目は、社会課題解決の促進。NFTやトークンは自治体やNPOの新たな資金調達・コミュニティマネジメント手法としても注目されており、地域とグローバル社会が直接つながるツールにもなり得る。新潟県山古志村は村の象徴である錦鯉のアートをNFT化、現在のリアル村民800人に対して、1000人を超えるデジタル村民を獲得した。

4つ目は、個人のエンパワーメント。コンテンツ制作・販売などの従来参入障壁があった領域に、子どもから高齢者まですべての人がより強い経済的インセンティブを持って参入することを容易とし、多様で自由な働き方を促進する。

全文をご覧いただくには有料プランへのご登録が必要です。

  • 記事本文残り53%

月刊「事業構想」購読会員登録で
全てご覧いただくことができます。
今すぐ無料トライアルに登録しよう!

初月無料トライアル!

  • 雑誌「月刊事業構想」を送料無料でお届け
  • バックナンバー含む、オリジナル記事9,000本以上が読み放題
  • フォーラム・セミナーなどイベントに優先的にご招待

※無料体験後は自動的に有料購読に移行します。無料期間内に解約しても解約金は発生しません。