「学び直し」を経験した大学教員から見た 社会構想大での研究

広報プロフェッショナルを養成する社会構想大学院大学コミュニケーションデザイン研究科。今回は、オープンキャンパスで実施した「教員座談会」について紹介する。社会人大学院生として学び直しの経験のある教員が大学院の魅力を語った。

社会人の「問題意識」と「熱量」

広報・コミュニケーション戦略を専門とする国内唯一の専門職大学院「社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科」の社会人院生は、日々「コミュニケーションの本質」を捉えるための学びに取り組んでいる。今回はこうした学びを提供する本研究科の教員が社会人大学院の魅力や効果についてどのように考えているか、2023年8 月20日のオープンキャンパスで実施された「教員座談会」の一幕をご紹介する。座談会には筆者のほか、2人の教員が参加し語り合った。

コミュニケーションデザイン研究科は、2017年の開学以来「理念を基軸にしたコミュニケーション」をカリキュラムの中心に据え、理論と実践の両面から体系的な学びを提供している。昨今「理念」あるいはそれに準じた概念が注目されるようになった。その背景について、座談会では「社会全体の不確実性の高まりのなかで、組織が向かう方向性を従業員やステークホルダーに示し、それに賛同してくれるファンを増やすことがますます重要になった」、また「コロナ禍以降、リアルでの接触が減った状況で、拠って立つ理念がこれまで以上に重視されるようになった」といった要素が指摘された。

また、広報・コミュニケーションの「体系的な学び」そのものについても議論が及んだ。2023年の6月に日本広報学会が「広報の定義と解説」を発表し、そのなかで広報が「経営機能である」ことが明示された。広報・コミュニケーションが単なる方法論ではなく「経営の一部」だとすると、この分野は想像以上の広がり・深さがあると考えられる。そうだとすると、広報を「体系的に」学ぶためには、本を読んだり単発のセミナーに出席したりするだけではなく、社会人大学院のような実践的な学び合いの場において、知識を修得しながら他者とのディスカッションを継続的に経験することが効果的なのだ。

そうした学びに取り組む社会人院生について各教員で見解が一致したのは、その「熱量の高さ」だった。若い学部学生を教える機会を多くもつ教員は次のように述べる。

「まったく違うのは問題意識の明確さですね。社会人の場合は実務を通じて直面した課題を解決したいというモチベーションが非常に高いようです」。

とはいえ、全ての院生が現職で広報・コミュニケーションの業務に取り組んでいるわけではない。これまでの入学者のうち、入学時に「広報」「マーケティング」「経営企画」「社長室」など、組織のコミュニケーションを担う部署に所属していた方は57%にとどまる。そのほかの方は「現在直面している課題をコミュニケーションの観点から解決したい」、あるいは「これからコミュニケーションの専門家としてのキャリアに進みたい」といった意識で入学を決意した方々である。

このことからも分かるように「業種・年齢を問わず色々な人から知恵を得られること」こそが本研究科の魅力であるといえる。また、本研究科の教育課程全体について、会社経営者でもある教員は次のように指摘する。

「なかには在学中にジョブローテーションで広報担当ではなくなる方もいらっしゃいますが、本学で提供している学びは明らかに他部門の社会人にも役立つ内容です」。

8月20日のオープンキャンパスで実施された「教員座談会」の様子。写真右が筆者。

「社会人大学院」へ挑戦の意義

社会構想大学院大学の大きな特徴として、「ほとんどの教員が現役で実務家として活躍している」ことと「多くの教員が社会人になってから学位を取得している」ことが挙げられる。実際、座談会に参加した教員2人も、社会人大学院生として学んだ経験がある。座談会では両氏から参加者へ、経験者の立場からエールが送られた。

「私も社会人向け大学院を修了していて、その効果や大変さを理解していますので、例えばインプットとアウトプットを同時に行ったり、『ラーニング・バイ・ドゥーイング』のスタイルを採ったりなど、退勤後に授業を受ける場合でも集中力が落ちないような工夫をしています。社会が大きく動いているなかで、過去のケーススタディをなぞるだけでは正解にたどり着かない状況になっています。そうだとすると『今の人間が知っていることの一歩先を目指すこと』は全ての人にとっての課題ですので、大学院で学ぶ習慣を身につけて、そういうことができる人材になっていただきたいですね。一方で、やはり皆さん気にされるのが『仕事と学びの両立ができるのか』ということだと思います。自分の経験としては、2年間の大学院生活を経て業務がかなり効率化されたという実感があります。学びと実務を両立しようとすることで効率化やインプットの習慣化にもつながりますので、そうした自身の変化も楽しんでいただくとよいと思います」。

社会構想大学院大学は11月12日に本年度2回目のオープンキャンパスの開催を予定している。この分野の「専門家」になるための新しい挑戦にご関心のある方は、ぜひご参加いただきたい。

 

橋本 純次(はしもと・じゅんじ)
社会構想大学院大学 専攻長・准教授

 

社会構想大学院大学 コミュニケーションデザイン研究科
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