経営戦略をコミュニケーションで実装する 企業変革を牽引する広報人材の育成
ホールディングス体制への移行と「TOPPAN」への社名変更。第二の創業ともいえる変革期を迎えた同社にとって、企業価値を社会へ届ける広報機能の強化は急務だった。しかし、正解のない広報業務において、社内のOJTだけで戦略的広報人材を育てることには限界がある。同社広報本部 広報部長の大森裕二氏は、なぜ部下を社会構想大学院大学へと送り出したのか。本記事では、大森氏の客観的な視点から、教育投資に対する具体的なリターン(業務への還元)と修了生のリアルな成長を語る。
大森裕二 TOPPANホールディングス 広報本部 広報部長
「広報の本質」は社内で教えられない
変革期に直面したOJTの限界
当社は2023年9月、「凸版印刷」から「TOPPAN」へと社名を変更し、ホールディングス体制へと移行しました。多様な事業の強みを磨き、さらなる成長をめざす中で、多様なステークホルダーに対し企業価値や社会価値をどう伝え、深い理解を得ていくか。広報という仕事は数字で「定量化」することが難しく、マニュアル化や指導が非常に難しい領域です。
これまでは、先輩の背中を見て覚えるOJTや「経験と勘」に頼った人材育成が中心でした。しかし、会社が大きな変革期を迎える中で、過去の実務の延長線上だけで新しい時代のコミュニケーションを担う人材育成には限界があります。
広報機能を根本から強化するには、アカデミアの観点から「広報とは何か」を体系的に学び直す必要がある。そう痛感していた折、部下の西尾から大学院で学びたいという強い意志表示がありました。現場を離れ、学術的な視点と他社の実務家たちとの対話を通じて得られる知見は、組織全体に非常に大きな投資価値があると考え、彼の派遣を全力で後押ししました。
西尾大樹 TOPPANホールディングス 広報本部
広報部 メディアリレーションチームリーダー
情報発信の戦術から
社会視点の「戦略」へ、視座を高める
大学院での学びを経て、彼の中で最も目に見えて変わったのは「物事を捉える視座の高さ」です。広報部門で7年目を迎えていた彼は実務担当者として優秀でしたが、以前は「目の前の情報をどう処理するか」という戦術的な業務に寄りがちでした。
しかし修了後の今は、「そもそもこの取り組みの企業価値は何なのか?」「世の中にどう受け止められるか?」と、常に根源的な問いを立てる客観的な視点へと変化しています。半分社外にいるようなフラットな視点から物事を俯瞰し、一段深く踏み込んで考えられるようになったのです。
この変化は部下のマネジメントにも良い影響を与えています。ただ業務手順を教えるのではなく、大学院で得た体系的な知見をベースに「言語化された明確な視点」を持って指導・牽引してくれています。感覚的な指示ではなく、本質を問う論理的なマネジメント力は、チーム全体の大きな成長に繋がっています。

体系的な学びを経て客観的な視座を獲得した西尾氏。大森部長との日々の対話から、社会視点を持つ次世代の広報戦略が生まれる
経営戦略を翻訳し
全社を巻き込む推進力に
教育投資に対する最大の業務還元として実感しているのは、彼が経営戦略と広報を連動させる力を獲得したことです。
今期からまさに、会社の経営・事業戦略を「コミュニケーション戦略」へと置き換え、広報部の戦略として再構築していく重要なプロジェクトを彼と共に開始しました。広報が他部署を巻き込み、会社全体のベクトルを合わせるためには、「世の中からTOPPANはどう見られるべきか」を客観的かつ論理的に社内へ提示し、説得する力が不可欠です。彼は大学院でのアカデミックな知見を通じて、社内を説得するための強力な裏付けを培ってきました。

経営戦略と連動した広報戦略の構築を議論。西尾氏の大学院で得た論理的な裏付けが、他部署を巻き込み牽引する推進力となる
理論と実践を往復することで得た高い専門性は、彼の大きな自信に繋がっています。
今後は彼自身が次世代のロールモデルとなり、広報チーム全体、さらには会社全体の広報の視座を高める力強い推進力になると大いに期待しています。現場の課題を解決する人材は、こうした体系的な学びから育っていくのだと確信しています。
