セキュリティ対策は、ISMAP対応クラウドを軸にした「総合防御」を
サイバーリスクが世界共通の課題となるなか、自治体の情報セキュリティ対策も1つの製品導入だけでは対応しきれない。CYLLENGE取締役の大西良慶氏は、ISMAP対応のクラウド基盤を軸に、安全なファイル交換からメール防御、職員教育までを組み合わせた総合的な備えの必要性を語る。
株式会社CYLLENGE 取締役 大西良慶氏
世界共通の脅威となった
サイバー攻撃への備え
サイバー攻撃をめぐるリスクは、いまや国境を越えた世界共通の課題となっている。世界の潮流を毎年注視してきた大西氏は、その脅威認識が新たな段階に入ったと指摘する。
「グローバルリスクを毎年ウォッチしていますが、2026年から『サイバー不安全リスク』という言葉が使われるようになりました。サイバー空間が安定しないという状況は、日本だけでなく世界的な脅威として捉えられています」
国内に目を向けても、IPA(情報処理推進機構)がまとめる情報セキュリティ10大脅威では、ランサムウェアによる被害が11年連続で選出された。加えて2026年版では、AIの利用をめぐるリスクが新たに登場した。誤情報の拡散や生成AIの悪用も現実味を増すなか、攻撃の手口は年々高度化しており、自治体には従来の運用を見直す必要が生じている。
多くの自治体は、個人番号利用事務系とその他のネットワークを分離して情報システムを運用してきた。だが、重要情報を扱う領域からファイルを持ち出す手段として長く用いられてきたUSBメモリは、紛失やマルウェア感染の温床になりやすく、原則として利用が禁じられた。ここに、いかにして安全にファイルを移動させるかという新たな課題が浮かび上がった。
ISMAP対応の基盤で守る
ファイルとメールの安全
この課題への回答として大西氏が挙げるのが、ネットワークを分離したまま安全な受け渡しを実現するCYLLENGEの製品だ(図)。
図 CYLLENGEのセキュリティ対策ソリューション
出典:CYLLENGE
「USBメモリの代わりに当社が提供しているのが、『Smooth File ネットワーク分離モデル』です。1台の製品で、インターネット接続系、LGWAN接続系、個人番号利用事務系という3つのセグメント間のファイル交換と無害化が可能です」
同製品は、3層分離が始まった2016年の第1次ネットワーク強靭化の時期に投入され、現在では900以上の公的団体に導入されている。特定のセグメントへのファイル流入を禁じるなど、柔軟なポリシー設定にも対応する。こうした基盤の信頼性を担保するのが、国による安全性の認証だ。
「『政府情報システムのためのセキュリティ評価制度(ISMAP)』は、政府機関が調達を行う際にクラウドサービスが安全であると証明される認証です。当社は2026年3月に、提供するクラウドサービスの全てでこの認定を取得しており、安心・安全にお使いいただける環境を整えています」
安全な受け渡しをさらに支えるのが、個人情報の検知機能である。ファイルの授受に際して、機微な情報の流出を未然に防ぐ仕組みだ。
「アップロードされたファイルに含まれるマイナンバーや住所などの個人情報を検知し、当社が用意したテンプレートと、利用者が独自に設定した内容とを組み合わせて検出します。個人情報が含まれていれば、ファイル移動の保留や拒否を行い、漏洩を防ぎます」
安全なファイルのやり取りと並んで重視されるのが、メールを起点とする脅威への対策だ。送信時の情報漏洩を防ぐ仕組みについて、大西氏はこう説明する。
「送信者が普段お使いのメールソフトでファイルを添付するだけで、自動的にダウンロードURLに変換されます。ファイルそのものを送るのではなく、Smooth Fileに格納した状態で送信先に届く。専用のソフトを準備しなくても、いわゆるPPAP対策が実現できます」
受信側でも、外部から届くメールは本文や添付ファイルに危険が潜む可能性が高い。そのため一旦分離した上で添付ファイルを無害化し、再添付して受信する。これらの機能はオンプレミスでの提供が中心だったが、いずれもクラウド環境で利用できるようになった点を、大西氏は強調する。
単一策では守り切れない
総合防御という発想
自治体を取り巻くネットワーク環境も、クラウド活用の進展とともに変化している。柔軟性と安全性の両立を図るα'モデルや、通信経路が多様化するローカルブレイクアウトに対しても、同社は無害化の新たな仕組みで対応するという。もっとも、こうした対策は個別に導入すれば足りるものではない。安全なファイル交換からメール防御、新たなネットワークへの対応、そして職員教育まで、複数の対策が必要だ。
「自治体にとって情報セキュリティ対策は、どれか1つの製品を入れれば解決するというものではありません。複数の対策を組み合わせた総合的な取り組みこそが重要だと考えています」
総合的な備えの要となるのが、人的リスクへの対策だ。どれほど仕組みを整えても、それを使う職員の意識が伴わなければ守りは綻ぶ。
「攻撃の多くは、職員が何気なくメールを開いてしまうことから始まります。どれだけ堅牢なシステムを組んでも、最後は職員一人ひとりのリテラシーが問われる。だからこそ、メール訓練や教育が欠かせません。当社はこうしたセキュリティ教育サービス『CYAS』を10年ほど前から手がけており、これもISMAP認定のもとで提供しています」
総合的な備えという観点は、近年広がるゼロトラストの考え方との関係でも問われる。自治体から「分離をやめて全面的に移行すべきか」という相談が増えるなか、大西氏は両立こそが現実解だとみる。
「分離もしつつ、ゼロトラストの仕組みを入れるハイブリッドの環境が、一番安全ではないかと考えています。当社自身もランサムウェアの被害を経験しましたが、ハイブリッド型で運用していたために、途中で進行を食い止めることができました」
こうした対策を支えるのは、国産ならではの技術と伴走姿勢だ。同社は国内で初めて無害化技術を開発し、日本語処理に強いエンジンを強みとしている。
「導入して終わりではなく、必要とあればいつでもユーザーのもとへ駆けつけ、常に最新機能を提供する『オールウェイズアップデート』の姿勢で臨んでいます。これからも、自治体の安心・安全な強靭化セキュリティ基盤の構築をご支援していきます」
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