人生に成績表なんていらない 優先すべきは「楽しめること」
編集者として「ドラゴン桜」や「宇宙兄弟」など、数々のヒット作を世に送り出した佐渡島庸平。ヒットメーカーとして名を馳せたが33歳で退職し、それまで日本では珍しかったクリエイターエージェンシー、コルクを創業した。「全ての人生が等しく価値があるともいえるし、無価値ともいえる。僕はどちらかというと、全てが無価値だと思っているんです」。そう語る佐渡島が見ているものとは。
文・油井なおみ
大きな組織の中では実現できない
自分のやりたいことのために
佐渡島が会社を立ち上げた2012年当時はまだ、漫画といえば紙の出版物が主流。大手出版社がようやくウェブコミックに参入し出したばかりの頃だ。
「インターネット自体、web3やAIなど、今も大きく変わっているじゃないですか。コンテンツもまだまだ変わります。コンテンツが変われば、作家の表現方法はもちろん、生き方まで変わっていくでしょう」
漫画は出版社ではなく、作家個人がSNSなどで発信する形がメインになるだろうと予想する。
「出版社などを通さずに食べられるようになっても、個人では持てる情報が限られます。例えば、映像化するときはどうすればいいのかなど、個人で判断できないじゃないですか。さらに、作家5年目でどういうスランプに陥り、10年目でどんなことが起こるのかなんて予測できませんから、ひとりで対処するのは難しい。そういうことをサポートできるエージェントが必要になるのではないかと考え、独立しました」
常に先を見据えて動いているように見えるが、突き動かすものは作家たちへの個人的な感情だ。講談社で立ち上げた『宇宙兄弟』とその作者、小山宙哉氏には並々ならぬ思いがある。
「『少年ジャンプ』なら小学生、『モーニング』なら35歳のサラリーマンと、漫画誌はそれぞれカテゴライズされていますよね。僕は35歳のサラリーマン向けの漫画を描くいろんな作家とつきあいたいわけではなくて、小山宙哉さんが年齢を重ねるごとにどんな作品を描いていくのか、一生近くで見ていきたい。その思いを叶えるのは、出版社の中では難しかったんです」
会社にいれば異動などで『宇宙兄弟』の最終回にも関われないかもしれない。
「今、コルクでは何人もの人間が小山宙哉さんの作品が長く残り、偉大な作家となるようにと、いろんな面から企画を考え支えています。そうやって深く関われることがうれしいんです」
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