宮島プロジェクトに見るデータ活用 人を惹きつける地域づくり

地域創生Coデザイン研究所は、2022年10月、地域創生に取り組む人々が集い・学び・繋がる“地域創生Coデザインカレッジ こでざと”を開講。特別企画として「データ活用×コミュニティ」のウェビナーを開催。宮島での取り組み、関係人口づくりのデータ活用の重要性などを議論した。

トークセッションの様子。モデレーターは地域創生Coデザイン研究所の津田 康太朗氏、
SlalomのData & Analyticsコンサルタント 藤原 理香氏

コロナ禍で気づいた
関係人口の大切さ

津田 宮島は、観光客こそ増加しているものの人口の減少が進んでおり、一部は過疎地域に指定されています。厳島神社に近い中江(ちゅうえ)町において、地域に長期的に関与してくれる関係人口を増やすことをタスクに、ここにいる皆さんと一緒に活動に取り組んでいます。まずはそれぞれの自己紹介からお願いします。

藤原 宮島プロジェクトで地域創生Coデザイン研究所の支援に携わっています。

寺澤 2013年10月、元造幣局保養所をゲストハウスに改装し「宮島ゲストハウス三國屋」をオープンしました。コロナ前は海外客が9割を占めていたのですが、コロナ禍でパタリと止まってしまいました。米国人のグレースさんは滞在中にコロナ禍に巻き込まれそのまま三國屋で3カ月間滞在されました。彼女を囲んでの食事会や交流会が開かれ、宿泊客以外に地域の方も三國屋に来られる大きな変化が生まれ、関係人口の大切さに気づきました。

宮島ゲストハウス三國屋マネージャー
寺澤 潤哉 氏

吉沢さんはもともとワーケーションの予定で三國屋にふらっと来られたのですがたまたま同い年だったこともあって意気投合し、40日ぐらい滞在して、移住を決められました。吉沢さんのスキルで中江町のホームページも作ってくれました。交流人口から関係人口になり、さらに永住人口になったケースです。今後は吉沢さんとともに多様な人が交流し合える場所づくりをめざして活動していきます。

吉沢 以前は東京で管理栄養士として働いていましたが、10年で4回転職し、適応障害で退職。その経験から会社勤務をあきらめフリーランスとなりました。当時は移住する気は全くなかったのですが、ワーケーションでたまたま三國屋さんに宿泊したことで人生が変わりました。40日の滞在中、寺澤さんが地域の方とつなげてくれたことで飲食店経営の話をいただき、移住を決意したのです。

コワーキングカフェ「ミヤジマベース」店主
起業支援「ベースカレッジ」主催 吉沢 元太 氏

このことから関係人口の増加で大切なのは、地域のハブになる存在と仕事につながる関係を作れる場所だと感じています。

今後は移住した側の立場から地域創生に取り組みたく、コワーキングカフェ「ミヤジマベース」を開きました。地域内外がつながるコミュニティと仕事の創出が目的の場所です。かつての私のように働き方で悩む人や起業を考える人の課題を解決し、仕事を生み出して関係人口につなげます。これまで出会った皆さんとともに、地域創生の拠点のひとつとして作り上げていきたいです。

データ活用で目標が明確になり、
議論も活発に

津田 これまで中江町で関係人口候補をつなげるイベントや座談会を行ってきました。また、データを生かすべく、イベント時の人の流入の経路やSNSでどのような人が興味を持っているのかなどのデータを活用し、今後はつながった人と継続的につながっていくためにマルシェなどのイベントを活発にしていきたいと考えています。

KT データ分析のためのデータ分析になっておらず、関係人口を増やすというタスクを常に念頭に置いて活動されているところが素晴らしいと思います。

Snowflake株式会社 シニアプロダクトマーケティングマネージャー 兼エヴァンジェリスト KT 氏

津田 次のステージとして、地域でデータリテラシーを向上するためのトレーニングや、宿泊施設の予約・運営管理システムのデータを活用した実証を行っています。トレーニングには、産官学の方々と、長期に関わっていただく可能性のある学生にも参加してもらいました。吉沢さんはトレーニングに参加していかがでしたか。

吉沢 参加するまではデータが地域創生にどのようにつながるのかイメージできませんでした。ところがデータを見ながら皆が話をすることで目標が一つになり、参加者の意見が活発になることを実感しました。データがあると話すテーマが決まり、やらなくて良いことも見えてくるので、無駄な議論をしなくて済む点もメリットです。

津田 実際にデータをもとにした活動を進めていく中で、中江町の飲食事業者さんが自分の店の課題を解決したいから勉強会に参加したいと声をかけていただき、どんどんつながりも広がっているところです。寺澤さんが参加されたグループからは実際にどのようなアイデアが出たのでしょうか。

寺澤 私たちのグループではTwitterの分析をしたのですが、1月に宮島で花火大会があったときは投稿数が伸びたのですが、はざまの日は少なかったので、投稿を促す発信が必要だと感じました。

津田 PMSの実証を受けた取り組みについては、次年度以降地域内でお金が回る仕組みづくりを考えていきます。例えば、ミヤジマベースに登録していただいた事業者さんと連携して地域のプロモーションをしていくといったことを考えています。

データ専門家の存在で速くなる
事業スピード

藤原 おふたりはそれぞれのコミュニティをどのようにエコシステムにしていきたいと考えているのでしょうか。

寺澤 長期的にかかわってもらう人を増やすため学生にも参加してもらっているのですが、データを見て、学生たちからマルシェを自分たちで企画したいという意見が出てきました。地域創生に関わるプレイヤーはすごくやる気があって、いろんなことをやりたいと考えているのですが、思いが強く、多すぎて、時にめざす方向がぶれてしまうことがあります。それを冷静な視点で地域にとって良い活動なのかどうかを分析してくれるのがデータです。客観的な視点を提供いただける地域創生Coデザイン研究所さんはベストパートナーであり、いろいろな活動を一緒にしているところです。データを生かしながら仲間を募り、町を盛り上げていく活動を継続的に行っていきたいですね。

吉沢 コミュニティづくりを行っていくには4つの役割・特性を持つ人が必要だと考えます。経営企画・マーケティングを行う「戦略立案」、営業や現場スタッフを務める「事業推進・実務」、データサイエンティスト、メンターなどの「事実の分析・相談先」、専門人材の「戦略実行サポート」。今回の活動で、この4つの人材が揃うと事業が回ることを強く感じました。中でもデータ分析できる人が揃うと事業を回すスピードが圧倒的に速くなることを実感しています。こうした仕組みづくりにより仕事を創出し、宮島・広島の事業者さんと関係人口の候補の方をつないでいけるハブのような場所になっていければと考えています。

KT おふたりの包容力、吸引力、推進力によって関係人口を増やすというタスクがしっかり遂行され、かつデータを有効に活用しながら取り組みを進められていることを実感できました。次は、皆さんの情熱を仕組み化できるよう、コアな部分を見極め、明文化し、だれでもがこの取り組みに携われるよう受け継いでいけるようにしてほしいと思います。

 

お問い合わせ先

株式会社地域創生Co デザイン研究所
地域創生Co デザインカレッジ こでざと事務局
codezato-inquiry@west.ntt.co.jp
https://codips.jp/

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