「SF」×新事業 斜め上の発想を生む、SFの思考法
――SFの思考をビジネスに活用するという視点に着目されたきっかけは何ですか。
数年前からフィクションの力の研究を行っていて、海外の企業でこうした流れがあることを掴んでいました。また個人的にも、企業からSF情報の提供を求められるケースが増えていました。そこで、SFプロトタイピングの実践を進めているアリゾナ州立大学や中国の成都市に調査に行ったところ、非常に多様な取り組みが行われており、これは大きな流れになると感じました。
――宮本さんご自身も、企業に向けてSFプロトタイピングの手法を伝えるワークショップを始めていますね。
新規事業部ではいかに新しいもの生み出すかが重要ですが、なかなか「斜め上のアイデア」を出すのは難しい。特に未来のシミュレーションは、5年後であれば想像がつくのですが、10年後となると人々の価値観も変わっている段階です。皆さん、人口や経済の動きなどマクロな予測はできるのですが、未来で暮らす人の価値観は? となると、現在の感覚に引きずられた想像しかできなくなってしまう。未来を考えたはずのストーリーでも、舞台が今と代わり映えしない社会になるケースは多いです。
強い会社は強いストーリーを持つと言いますが、SFはこのストーリーづくりをずっとしてきたジャンルで、現在と全く異なるビジョン・世界観と、筋道立てたストーリー展開の両輪を回します。この点がビジネスに役立ちます。企業の中にいるとどうしてもアイデアが小さくなってしまったり、世代間で感じるリアリティにズレがありアイデアが理解されないというケースがあります。ここでも、SFの方法論でストーリーに乗せていくとイメージが持て、アイデアが広がる。さらにSFの特徴である「宇宙規模の視点」を意識することで思考の枠組みを外すことができます。
――SFの発想はクリエイティビティも刺激しそうです。
日本人はクリエイティブが苦手だと「思っている」だけです。海外の方は2、3語日本語を知っていれば「できる」と言いますが、それと同じように粗くていいのでどんどんアイデアを出すことが重要です。
SF作品を読むのはとっつきづらいかもしれませんが、本書はビジネスサイドの方との座談が中心なので、構えず読んでいただけると思います。SFのビジネス活用は海外ではスタンダードになりつつあることを感じていただけたら幸いです。
- 宮本 道人(みやもと・どうじん)
- 科学文化作家、応用文学者
『SFプロトタイピング SFから
イノベーションを生む新戦略』
- 宮本 道人 監修・編著、難波 優輝・大澤 博隆 編著
- 定価 本体1800円+税
- 早川書房
- 2021年6月刊
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