保育園探しをスマホで完結 練馬区のICTを活用した区政改革

コロナ禍において住民サービスのデジタル化を進める練馬区。「またない、まごつかない、何度も書かない」をコンセプトにした申請書一括作成システムなど多様な取り組みを、企画部 情報政策課長 小沼氏が語った。

小沼 寛幸 練馬区企画部情報政策課長

練馬区では区民に対して30年後の将来像を共有するため、練馬区グランドデザイン構想を策定した。その実現に向けた基本計画が、「第2次みどりの風吹くまちビジョン」だ。さらに個別計画として、情報化基本計画を作成した。計画の骨子として、いつでもどこでも簡単便利な窓口サービスの実現、ICTを活用した安心して心豊かに暮らせるまちの実現、業務改革の徹底などを掲げており、37の取り組み項目を設定・実施している。

現状の実施内容を振り返ると、「コロナ禍によって、当初計画よりも一層デジタル化が加速しました」と練馬区企画部 情報政策課長 小沼 寛幸氏は語る。テレワークシステムやWeb会議システム、生活相談AIチャットボットの導入や保育園のICT化など、ウィズコロナ時代のDX推進の取り組みを始めているという。

申請書を「何度も書かない」

まず一つは窓口サービスの向上として、窓口混雑状況をWeb上で事前に確認し、マイナンバーカード交付窓口等での来庁予約を可能にした。2020年度は約84万件のアクセスがあり、待ち時間や待ち人数の改善が図られ、窓口の混雑緩和などに寄与している。

次に住民の記入負担の軽減として、「またない、まごつかない、何度も書かない」をコンセプトに申請書一括作成システムを稼働させている。これはAI-OCRの活用や住民情報システムとの連携により、申請者が画面上に表示される質問に答えていくことで、必要な申請に対して氏名や住所などの情報を複数の申請書に一括して転記・印字できるものだ。対象となる申請書は、転入届や住民票、税証明など34種類にわたり、区民は庁内で迷わずに手続きすることができ、何度も書く手間が省けて楽になったと好評だ。

これに合わせて、窓口サービスの向上と職員の意識改革に取り組むことで、住民の利便性向上と業務の効率化につなげている。

保育園探しをスマートフォンで完結

福祉の面では妊娠期から子育て期までの切れ目ないサポートを実現するため、妊婦健診や乳幼児健診の健診情報等を電子化する母子健康電子システムと、区民が健診や予防接種などの子育ての案内を閲覧できる母子手帳アプリを構築中で、2022年1月から順次運用開始する準備を進めている。さらに将来的には、健診記録などの情報を関連施設で共有・連携することで、居住地に関わらず、区内どこの保健所でも、健診や相談を受けられる体制を整備することとしている。

また子育て世代の利用率が高いLINEの活用にも積極的だ。例えば保育施設を調べたいときにLINE上で距離を設定すると、該当する保育施設を検索することができ、施設の種類、児童の年齢に合ったクラスの有無、食物アレルギー対応の状況など条件ごとの絞り込みが可能だ。

AIチャットボットによる自動応答では、保育に関する質問をLINE上で入力すると、AIチャットボットが24時間365日自動で応答。また、プッシュ型の情報配信として、保育課の手続きのほか、区の子育てに関する事業のお知らせも行っている。2021年の10月からは、保育指数シミュレーション機能を追加し、保育園探しをスマートフォンで完結する仕組みを完成させた。

練馬区ではグランドデザイン構想の実現に向けて、AIを活用した税務の大幅な業務効率化など様々な政策を展開しており、小沼氏は引き続き各分野における多様な区民ニーズを的確に捉えながら、創意工夫を凝らしたDXの推進に取り組みたいと語った。