三井不動産vs三菱地所 総合不動産トップ2の脱炭素戦略

「2050年カーボンニュートラル」を目指す上で、最終エネルギー消費の約3割を占める住宅・建築物分野における脱炭度化の取り組み強化は喫緊の課題だ。日本を代表する総合不動産会社2社は今、何を考えるのか。その脱炭素策を概観する。

意欲的な脱炭素化に取り組む、総合不動産大手2社

住宅やオフィスビル、商業施設などの二酸化炭素排出量は、2019年度時点で全体の約3割を占める。脱炭素化が急がれる部門だが、日本を代表する総合不動産企業2社は、どのような対策を進めているのだろうか。

業界トップの三井不動産では、中高層マンションや戸建ての分譲、不動産売買・賃貸借の仲介を担う他、オフィスビル、「三井アウトレットパーク」といった大型商業施設、ホテル、リゾートを展開する。2021年は東京ドームを完全子会社化し、今年春、大幅なリニューアルを果たしている。

同社は、グループ長期経営方針「VISION 2025」において、グループ全体の温室効果ガス排出削減目標を、従来の「2030年度までに2019年度比30%削減、2050年度までにネットゼロ」から、「2030年度までに2019年度比40%削減、2050年度までにネットゼロ」に切り替えた。それに基づいて5つの行動計画を掲げ、新築・既存物件では、2030年度に中高層マンション全棟をZEH-M、全戸建てをZEHとすることなどを目指す。また、再生可能エネルギーの安定的な確保に向けては、メガソーラー開発を推進し、既存事業に加えて、2030年度までに総発電量を年3億kWとする計画だ。一方、新技術創造に向けたオープンイノベーションも加速し、産学共同研究やベンチャー企業への出資などを通じて、同社関連施設のみならずエリア全体の脱炭素化を目指す。

業界2位の三菱地所は、大手町・丸の内・有楽町の「大丸有」エリアを中心とするオフィスビル、分譲住宅、ホテル・リゾートを展開する。

同社は2050年時点でのあるべき姿を示す「三菱地所グループのサステナビリティビジョン2050」をふまえ、「長期経営計画2030」において「Sustainable Goals 2030」を掲げて、環境、ダイバシティ、イノベーション、レジリエンスの4テーマそれぞれに目標を設定した。環境のテーマでは、二酸化炭素排出削減目標を、2030年に2017年度比35%、2050年に87%とし、再生可能電力比率を、2030年に25%、2050年に100%とすることを目指す。具体的には、2021年度から丸の内エリア18棟と横浜ランドマークタワーで全使用電力を再生可能エネルギー由来としている。グループの再生可能電力比率は約30%に達しており、目標を前倒しで達成できる見込みだ。国産木材の利用にも力を入れ、2021年には、札幌市において、北海道産木材を約80%利用した高層ハイブリッド木造ホテルを竣工した。

暮らしと産業の場を提供する総合不動産業には、サステナブルな未来を創造するための、具体的で実効性の高い目標設定と、着実な目標達成が求められる。両社の意欲的な取り組みに寄せられる期待は大きい。

両社の概要

三井不動産

設立 1941年
所在地 東京都中央区
代表 菰田 正信(代表取締役社長)
資本金 3, 401億円( 2021年7月)
従業員数 1, 776名(連結:23, 992名)(2021年3月)
主な
事業内容と
グループ会社
●賃貸事業:国内外でのオフィスビル、商業施設等の賃貸
(MITSUI FUDOSAN AMERICA 他)
●分譲事業:業務施設等の分譲、戸建て・中高層住宅
(三井不動産レジデンシャル 他)
●マネジメント事業
- プロパティマネジメント:賃貸事業での管理・清掃・保守 等(三井不動産ファシリティーズ 他)
- 仲介・アセットマネジメント:住宅等の販売代理事業(三
井不動産レジデンシャル)、不動産売買・賃貸借仲介(三
井不動産リアルティ)
●その他の事業
- 新築請負:設計・施工監理・施工請負(三井ホーム)
- 施設営業:ホテル営業(三井不動産ホテルマネジメント)
- スタジアム・アリーナ事業(東京ドーム)

出典:ホームページ、有価証券報告書

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