低コスト×先端技術 アジアの再エネ成長市場で起きている変革
インドネシア国内では依然として手の届かない太陽光パネル
(※本記事は『Global Voices』に2025年6月16日付で掲載された記事を、許可を得て掲載しています)

2025年4月、米国商務省は、ベトナム、マレーシア、カンボジア、タイからの太陽光パネルの輸入に対して最大3,521%の関税を課す新たな措置を最終決定した。これは、米国の太陽光製造貿易委員会が、中国の大手太陽光パネルメーカーがこれら4か国を通じて原価を下回る価格でパネルを輸出し、米国市場に不当に安価な製品を大量に流通させていると訴えたことを受けた対応である。同委員会は、数十億ドル規模の米国内の太陽光関連事業を守るため、米政府に対し関税引き上げを求めていた。最終的な関税の決定は2025年6月に行われる予定だ。
米中間の太陽光関連の貿易摩擦は、すでに数十年にわたって続いている。2012年には、米国商務省が、中国の太陽光企業に対して30%以上の懲罰的関税を課した。これは、米国企業が、中国側が不当な補助金により価格を引き下げ、米国内企業を相次いで廃業に追い込んだと主張したことが発端である。これを受けて、中国企業は生産拠点を東南アジアに移し、マレーシア、カンボジア、タイ、ベトナムが中国の太陽光製造拠点としての地位を確立するに至った。
これら4か国は、中国以外での太陽光モジュール生産能力の40%以上を占め、世界の太陽光輸出の約20%を担っている。BloombergNEFによると、2024年上半期には、これらの国々の生産量の80%が米国向けに輸出されていた。2023年には米国への輸出額が120億米ドルに達している。こうした製造拠点の拡大により、中国は2023年時点で世界の太陽光パネル出荷量の80%を占め、依然として圧倒的な支配力を維持している。
しかし、近く新たな関税が発動される見通しであるうえ、中国国内では利益率の低い熾烈な競争が続いているため、中国の太陽光企業は、現在の関税回避国であるインドネシアなど、新たな魅力的な市場へのシフトを図っている。ウッド・マッケンジー社で世界の太陽光サプライチェーン研究を統括するヤナ・フリシュコ氏は、VOAの取材に対し、以下のように述べている。
「東南アジア諸国の中でも、インドネシアは最も有望な太陽光市場である。特に、海上に設置するフローティングソーラー(浮体式太陽光発電)の潜在力が大きい。沿岸部の海域に設置できることが強みであり、加えてインドネシアは国土が広く、内陸部にも太陽光プロジェクトを展開する余地が十分にある」

中国の太陽光企業がインドネシアで急成長
中国の製造業者によるインドネシアへの移転は、「急速かつ大規模に」進行している。過去18か月間に、少なくとも中国資本が関与する4つの太陽光プロジェクトがインドネシアおよびラオスで稼働を開始しており、さらに2件が予定されている。
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