地方へのサテライトオフィス開設支援 官民でヒト・情報の流れを加速

テレワークなどの柔軟な働き方が進んだことで、都市圏企業のサテライトオフィス設置が進み、「転職なき移住」や「地域での新事業」が生まれてきている。地方公共団体と企業のマッチング機会を創出する総務省担当者に、企業の地方サテライトオフィス進出や地域での新規事業創出に関する期待感を聞いた。

磐梯町では二次交通インフラの充実を目指し、カーシェアリングを開始

岸田文雄内閣総理大臣は、2022年1月の施政方針演説で「新しい資本主義」の成長戦略第1の柱として「デジタルを活用した地方の活性化」を示した。そのための施策の1つとして総務省では「サテライトオフィス・マッチング支援事業」に取り組んでいる。総務省が実施しているサテライトオフィス開設状況調査によれば、令和2年度末時点で、地方公共団体が誘致又は関与するサテライトオフィスは916箇所にのぼる。新型コロナウイルス感染症の影響によって急速にテレワークが定着してきたことで出社に捕らわれない働き方改革等が民間企業で進んでいることが、地方へのヒト・情報の流れを加速させている。

地方へのサテライトオフィス設置等を通じ、地方へのヒト・情報の流れが更に加速することで、地域にはどんなメリットが生まれるのか。総務省地域力創造グループ地域自立応援課長 小谷克志氏は「地方においては、人口減少や少子高齢化、あるいは、働く場や交通への不安など、様々な課題を抱えています。また、東京一極集中もなかなか歯止めがかからないという状況であり、地域においては、深刻な担い手不足が進んでいます。他方で、若い世代を中心に、地方移住や地方での暮らしに対する関心が高まっているという調査結果もあります。地方へのヒトと情報の流れが加速することで、東京圏への過度な一極集中是正と活力ある地域社会の実現につながると考えています」と語る。

活力ある地域社会の実現を目指す中で、地域で新規事業を生み出すためのキーワードは、”よそ者の視点”と”地域での参画”と言われる。例えば石川県珠洲市には持続可能な地域振興を推進する拠点として2018年に同市が開設した「能登SDGsラボ」があるが、その流れを受けて2021年にプライム市場上場企業であるアステナホールディングス(本社:東京都中央区)が同市に本社機能を一部移転しサテライトオフィスを開設した。現在両者は企業版ふるさと納税を活用してSDGs新事業開発のプロジェクト研究会を始動し、事業構想大学院大学や各地の企業とともに、同市をフィールドとして社会課題解決の事業構想を行っている。他地域・異業種の人材が地域で自社資源を活かすことで、新たな社会課題解決の事業を生み出すきっかけとなるが、こうした企業の誘致や受け入れ後の場づくりも地方公共団体の重要な仕事だ。

珠洲市ではアステナホールディングスが地域課題解決の新事業開発のためにサテライトオフィスを開設

「政府では、地域が抱える課題をデジタル実装を通じて解決し、地域の個性を生かした地域活性化と持続可能な経済社会を目指す『デジタル田園都市国家構想』を推進しています。そこで重要なのが、地方公共団体が受け皿となることと考えています。サテライトオフィスは移住・定住人口を大きく増やす有力な手段であり、都市部から地方への新しい人の流れの創出につながるため、各地方公共団体と連携して推進してまいりたい」と小谷氏。総務省では、官民ネットワークの拡大を目指し、平成30年度より、サテライトオフィス誘致を希望する地方公共団体とサテライトオフィス設置を検討する企業とのマッチングセミナーを開催している。今般のコロナ禍を機に、テレワーク等の働き方が広く浸透し、地方公共団体が誘致又は関与したサテライトオフィスの開設数も年々増加している。こうした機運の高まりを受け、今年は、11月に、規模を拡大し、3年ぶりにリアルイベント形式で開催する予定だ。

デジタルと地域活性化の取組も生まれてきている。福島県磐梯町では、一般社団法人Publitech代表理事の菅原直敏氏をCDOに迎え、磐梯町と東京・渋谷のサテライトオフィスの2拠点にオフィスを置き、人材面においては町役場の職員だけでなく複業として行政に関わってもらう民間人を積極的に活用するなど、既存の行政では難しいと考えられていた町全体のDXを進めている。ブロックチェーン技術を活用したデジタル地域通貨を発行して業務効率化と地域活性を進めたり、二次交通問題を改善するために民間企業のカーシェアリングシステムを町が導入して市民や観光客の足にしたりと、民間企業のサービスを積極的に取り入れ地域課題の解決を行っている。さらに外部人材の登用として、総務省『地域プロジェクトマネージャー』制度を活用してデジタル人材の獲得を行っており、地域外からの移住定住・関係人口の創出の流れが出来ている。

「様々な地方公共団体が企業の誘致に取り組む中、サテライトオフィスはいまの社会環境にあったアプローチだと思います。ただ今後はその土地にサテライトオフィスを開設しなければならない『必然性』や『ストーリー』が地域のテーマになると思います。中長期でどのような地域に変えていきたいのか、変革のビジョンを地域が示すことができれば、民間企業も決断できるのではないでしょうか。昨年度のマッチングセミナーはオンライン開催でしたが、今年度は、サテライトオフィス環境や地域の魅力をPRするために、全国から100を超える地方公共団体が一堂に会します。ぜひご参加ください」

サテライトオフィス開設に関心のある民間企業経営者の方へ
(総務省主催)サテライトオフィス・マッチングセミナー

登壇:
内閣官房デジタル田園都市国家構想実現会議事務局
認定NPO法人グリーンバレー
面白法人カヤック
レオス・キャピタルワークス株式会社

出展:地方公共団体を主として100団体程度

日程:2022年11月9日13時~18時

会場:
ベルサール高田馬場
東京都新宿区大久保3丁目8-2
  住友不動産新宿ガーデンタワーB2F

相談会のお申込み・お問合せ


サテライトオフィス・マッチングセミナー運営事務局
https://satelliteoffice-match.jp/

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。