中小企業を支える「山梨DX推進支援コミュニティ」 地域DXを強力にバックアップ

地域におけるDXの推進のため、各地で公民や業種の垣根を超えたコンソーシアムが組まれている。「山梨DX推進支援コミュニティ」もその1つ。地元の中小企業のDXを、さまざまな組織の人材が支える。国は地域のDXコンソーシアム結成を後押ししており、活動開始のための補助金も手厚い。

セッションでは5人の登壇者が山梨DX推進支援コミュニティや国の支援策を紹介した

「中小企業におけるDXの取り組みに関してさまざまな数字が報告がされていますが、実感としては取り組めているのは1割に満たない印象」と話したのは、「山梨DX推進支援コミュニティ」創設に携わったNTT DXパートナー代表取締役の長谷部豊氏だ。コミュニティの創設は、企業からの「DXのセミナーなどには積極的に参加しているが、実際に計画や構想を立てるという、一歩先になかなか進めず悩んでいる」という声が発端となった。

DXの推進とは単純なICT化ではなく、デジタルを活用した経営の変革であるべきだと長谷部氏。「そのためには、デジタル実装支援だけでなく、新事業立ち上げ、事業拡大や人材確保、資金調達などさまざまな支援が必要。それらの相談をワンストップで受け、支援できる体制を作ろうということで、創設には11の企業と団体がそれぞれの強みを持ち寄って集まりました」。

人口の少ない山梨県
経済持続にDXは不可欠

「山梨DX推進支援コミュニティ」構成員の1つが山梨中央銀行だ。常務取締役の田中教彦氏は、「私たちは地域金融機関として、DXを、私たちと地域がどう歩んでいくか、そして、その進化を実現していくための価値創造プロセスの中のドライバーと位置付けています」。山梨中央銀行では独自に、これまで地域企業約150社、300名を超える人々とコミュニケーションを継続。「がんばっている地域の方たちをつなぐ仕掛けとして、2022年の7月にカジュアルに利用できるイノベーションスペースも作りました。また、ワイン紹介アプリや金融クイズアプリなども開発。自分たち自身がワクワクしながら取組む姿をお客さまにお見せすることが早道と考えています」。

同じく構成員の甲府商工会議所中小企業振興部部長の佐藤達也氏は、「山梨県の人口は47都道府県中41位。甲府市でも20万人を下回っており、県庁所在地の中では下位に位置するコンパクトな地域。このような地域で中小企業が存続するために不可欠なのがDXによる変革です。山梨DX推進支援コミュニティへの参画で、商工会議所単体ではなくさまざまな企業や経営団体と共に幅広い支援ができると考えています」とし、その中における商工会議所の使命は、企業にDXの必要性を解いていくことだと話した。

登壇しているもう1社の構成員、NTT東日本山梨支店長の横山明正氏は、「当社では、従来の情報通信インフラサービスに加え、地域の持続可能な発展に向けた新たな価値創造に取り組んでいます。山梨DX推進支援コミュニティは、地域全体のDXを底上げしたいという、経済団体や行政、金融機関などに共通する課題感の高まりから生まれました」と話した。

コミュニティ構成員が
それぞれの強みを活かして支援

設立されて約半年。山梨DX推進支援コミュニティではセミナーや勉強会を実施するほか、その先の支援として、個社別にDX相談を受け、どう進めていくか、伴走支援している。NTT DXパートナーの長谷部氏は、「セミナーはこれまでに6回開催し、約180名が参加。ヒアリングをした方の半数以上が、これまでDXを相談できるところがなかった、と答えられています。その相談先にコミュニティが位置付けられたと考えています」。すでに、DX推進に向けて支援中の企業は2023年1月時点で24社。「コミュニティの構成員が力を合わせ、具体的な支援ができているという手ごたえをこの半年で得ています」と述べた。

続いて、山梨中央銀行の田中氏が、「私たち銀行自身は地域社会の課題解決に、コミュニティは地域企業にフォーカスし、並行して支援している。具体的な悩みも寄せられており、DXをどう進めればいいか分からないという声は、実際にその通りなのだと実感しています」と話すと、甲府商工会議所の佐藤氏は、「これまで商工会議所へのDX相談はほとんどなく、あっても、専門家に引き継ぐことしかできませんでした。商工会議所がコミュニティの構成員になったことにより、伴走型支援が受けられるという点で地域企業にはメリットがあると思います」。

また、NTT東日本山梨支店の横山氏も「相談をいただく企業ごとに個別の課題や事情があります。コミュニティは、構成員それぞれの強みを持ち寄ったチーム。だからこそ、相談いただいた企業とコミュニティが一緒になってDX推進に取り組む体制を根付かせられればと思います」と話した。

図 山梨DX推進支援コミュニティについて

地域DXコンソーシアムに
国も手厚い支援

経済産業省関東経済産業局の川野千春氏は、山梨DX推進支援コミュニティについて、「産業界と地元の皆さまから自発的に始まった取り組みであることがすばらしく、心強いです」と述べ、リアルなネットワークの場であるオープンイノベーションスペースとオンラインの両方を活用するという、環境も整えた中で熱心に地域企業のDXを支援していると語った。

加えて、2022年12月に成立した令和4年度第2次補正予算の中で「地域新成長産業創出促進事業費補助金」という支援策補助金メニューが措置されていることを紹介。山梨DX推進支援コミュニティのような、地域企業のDXを支援するコンソーシアムの発動活動費が補助されるもので、1カ所あたり3000万円。対象費用の全額が補助される点が特徴だ。また他地域の事例として、「新潟県にもDX推進プラットフォームがあり、地域のインキュベーション施設を活用しながら、地域企業のDX推進を伴走支援しています。県予算も活用し、DXを支援する人材育成を並行してやっている部分が特徴。デジタルにこだわらず、地域内外の他社とのオープンイノベーションを促進するため、マッチング支援も強力に進めています」と紹介した。

最後に、ファシリテーターを務めた事業構想研究所の河村昌美氏は、山梨DX推進支援コミュニティのように、構成員の中に普段から企業が相談をしているような商工会議所や金融機関が入っていることは、DXを進めたい企業にとって非常なメリットであるとし、「DXは1社だけで進めることは難しく、コミュニティのような体制が必要。国も支援に力を入れているし、自治体も地域企業や団体と手を組み、補助金などの情報共有もしながら、地域のDXを進めてほしい」と話した。

 

お問い合わせ


東日本電信電話株式会社
地方創生推進部公共ビジネス担当
chisou_pub-ml@east.ntt.co.jp

この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。