全員共創の「LINKED CITY」で新スマートシティを実現

デジタルやクリエイティブの力を活用し、地域が本来もつ魅力を活かしたまちづくりを目指して、産学連携で開催してきたスマートシティ研究会。締めくくりとなる今回は、公開イベントとして各社がこれまでの取り組みの推移と今後に向けたビジョンを語った。

分散型社会のためのスマートシティをテーマに議論・構想を進めてきたスマートシティ研究会。その議論の総括として開催された第3回。冒頭、同研究会のファシリテーターを務める事業構想大学院大学の河村昌美教授は、「スマートシティはとかく技術論になりがちですが、本研究会を通じ、改めて、イノベーションを起こしていく上で、人間中心の視点が欠かせないことを認識しました」と話した。

さらに、共に価値を創っていく「コ・クリエーション」の重要性を指摘。その前提となるのは、全てのステークホルダーによる経験の共有であるとし、過去2回の議論における気づきとした。

新たなスマートシティの
実践としてのLINKED CITY

「データ利活用型の課題解決都市を目指す従来型のスマートシティは、データの抱負な都市部に有利な取り組みとなっており、首都圏と地方の格差はますます広がります」と指摘したのは、スマートシティ企画の石垣祥次郎氏。対して、「関係人口の拡大」「創造的都市形成」を目的とし、データ以外の地域資源を用いた、地方でも適用できるテクノロジーを活用した結びつきを促進する、新たなスマートシティの在り方を提唱する。

「新たなスマートシティを実現するために必要なのが、関係人口です。中でも地域に知恵を落とす『共創人口』を増やしていくことが重要です」

ヒト・モノ・コトの地域資源を、共創人口へシームレスに適切な形で繋げていくことが、新しい暮らし、働き方、観光へと結びついていく。スマートシティ企画では、ソニーマーケティング、ジョルダン、ジョルテ、十勝シティデザインなどと共に、新しいスマートシティを実現するためのLINKED CITY構想を打ち出している。

図 観光型スマートシティ「 LINKED CITY」

地域の資源×AI&IoTデジタルオープンプラットフォームによる事業インキュベーションで雇用を創出するとともに都市と地域、地域と地域を繋げることによる分散型社会を構築

出典:スマートシティ研究会

 

LINKED CITYソリューションを実装したのが、十勝シティデザインが運営する、北海道・帯広市の「HOTEL NUPKA」。「HOTEL URBANISM」を基本に、ホテルの交流機能を拡大することで、新しいまちを生み出す取り組みを進める。

石垣氏に続いて登壇した十勝シティデザインの柏尾哲哉氏は、「中心市街地の空洞化という地域課題の解決に向け、これまで、様々な事業を縦展開してきました」と話す。2016年の「HOTEL NUPKA」開業後、2019年には地域商社事業を開始、同年、夜の帯広中心市街地を馬車で巡る「馬車BAR」の運行を開始し、人気を呼んでいる。

2021年4月に開業した「NUPKA Hanare」は、ワーケーションを進化させたリゾベーションをテーマに、テクノロジーを活用し、仕事をしながら長期間滞在できるよう、様々な工夫を凝らしている。ホテルを起点とした関係人口創出へ向け、実証実験を展開中だ。

デジタルでヒト・モノ・コトを
繋げるプラットフォームに

関係人口を増やしていくソリューションとしてのLINKED CITYにおけるテクノロジーの役割について、ソニーマーケティングの光成和真氏は「ソニーマーケティングだけでなく、ジョルダン、ジョルテと一緒になり、地域の人を主役に、法人向けブラビアをコミュニケーションツールとして活用しデジタルによりヒト・モノ・コトを繋げる。そのプラットフォームとなっていきたい」と話す。

ジョルダンとジョルテが連携し構築した、予定と移動の統合型プラットフォーム。ソニーマーケティングでは、これをスマホだけでなく業務用ディスプレイ・テレビでも表示。双方のインタラクティブな関係を作っていくことで、関係人口を創出する仕組みを作る。その第一弾が「NUPKA Hanare」に導入した「まちじゅうホテルソリューション」。客室のディスプレイに地域情報を表示し、宿泊者のまちへの回遊を促す。

さらに、人を中心とした「コワーキングHUB」ソリューションも用意。「まちじゅうホテル」と組み合わせ、関係人口の創出に貢献していく。

スマホ向けカレンダーアプリを提供するジョルテでは、地域情報を集約し届けるプラットフォーム「スマートシティカレンダー」を、「NUPKA Ha nare」の客室テレビに提供。宿泊日周辺だけでなく、月ごとの地域イベントなども紹介することで、リピートに繋がるような地域の魅力を季節ごとに紹介する。

「情報は、単にデジタル化されただけでは必要な人に届きません。『知っていたらやっていた』ということは意外に多く、カレンダーに地域情報が表示され、『自分ができることに気づく』ことが、人の行動変容を促すのです」と、ジョルテの下花剛一氏。

ジョルテでは、ジョルダンの乗換案内アプリと連携し、行動中心の統合方プラットフォーム「ジョルジョル」を構想、展開を開始している。

「さらにソニーとも連携し、ヒト・モノ・コトを繋げるLINKED CITYを進めています」(下花氏)

一方、乗換案内・ジョルダンの岡田円氏は、「移動手段を提供しながら、同時に移動する目的も提供していくことが大事だと考えます」と話す。

ジョルテの「スマートシティカレンダー」との連携では、時間軸と移動軸を1つにする統合型プラットフォームを構築している。移動手段や様々なサービスとの連携を組み立てていく中で、地域情報を集約し、全国のユーザーに届けていく。地域で情報を集め、全国へ発信できるというのが、「ジョルジョル」の1つの可能性と言える。

「旅前から旅後までを一気通貫で繋ぐ。ワンIDであらゆるサービスに繋いでいく中で、移動と目的づくりをサポートし、関係人口づくりの一歩手前を担っていければと思います」(岡田氏)

データ共有による新結合、
全員共創から始まる日本再興

第3回スマートシティ研究会の総括として、ジョルダンの佐藤博志氏が、地域活性に向けたビジョンを語った。

ジョルダンは、月間検索回数2億3000万回を超す乗換案内の提供のほか、MaaSにも取組んでいる。世界におけるMaaSの主題はスマホとの融合、交通のDXだ。ジョルダンでは、英・Masabiと総代理店契約を締結し、経路検索からチケット購入・乗車までをスマホ1つで実現するモバイルチケットサービスを提供。令和元年には、豊田市で開催したラグビー国際大会で、来訪する国内外の観光客向けにアプリを提供し、大きな効果を上げた。

一方、ジョルダンではMaaSの取り組みで得た利益やデータを独占しない、非独占的な共創体連合「JMaaS」を立ち上げている。

「データを共有することで、様々な新結合が生まれます。プラットフォームを統一し、そこからあらゆるサービスに繋ぐことで、スマホ1台、ワンクリックで、日本のあらゆる魅力を届けられるようになります」(佐藤氏)

交通のDXにとどまらず、町の魅力を伝え、繋がり、誘致し、産業まで興して日本中を活性化する。それが、日本ならではのMaaSだ。1つのプラットフォーム、ワンクリックで全てできる時代をつくる。日本中を繋げて元気にしていく。それがLINKED CITY、新しいスマートシティの形だと言えるだろう。

 

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スマートシティ企画株式会社
E-mail:info@smartcity-planning.co.jp

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