第3条「本質に気づく」 経営は気づきから

物事の表面を見るだけでなく、その本質に気づく力が事業構想には不可欠と筆者は説く。「ななつ星」では、豪華な寝台列車が大ヒットするという旅行市場の本質に対する気づきや、ブランド価値の向上こそが最優先課題との気づきが、成功につながった。

クルーズトレイン「ななつ星」は、多くの気づきを積み重ねることで実現に至った。今年10月で運行7周年を迎える

見えないものが見える

成功した経営者に共通するのは、気づく力があること。彼らは、卓越した気づく力を持っている。特に本質に気づく特殊能力といえるものを身につけている。物事を見て、表面的な変化や違いといったことだけでなく、その本質を見抜くことができる。

日清食品の創業者・安藤百福氏は、「経営者とは、人の見えないものが見え、聞こえないことが聞こえるような人間でなければならない」と断言する。

大正末期、松下電器(現パナソニックの前身)の創業者・松下幸之助氏は、自転車につける電池式砲弾型ランプの開発に取り組み、何度も試作を繰り返した末に新製品の完成にこぎ着けた。それまで主流だったローソクランプは、風によく吹き消され不便だった。電池式ランプも一部に利用されていたが、寿命が短く故障も頻発し評判がよくない。

そこに目を付けた(気づいた)のが幸之助翁だ。

幸之助翁は新製品の売り込みに問屋をまわった。しかし、どの問屋もいい顔をせず、なかなか商談が進まない。問屋からすれば、従来の電池式ランプの低品質のイメージが消えず、松下の新製品に対しても信用が置けなかったのだ。

幸之助翁はつぎなる作戦を思いつく(気づく)。

商品の信用を得るために、問屋ではなく直接小売店に無料で2、3個のランプを預け、店頭での連続点灯を依頼してまわった。今でいう、デモンストレーション販売だ。この作戦が功を奏し、松下のランプは飛ぶように売れはじめた。

幸之助翁は、まず自転車の電池式ランプの市場性に気づき、つぎに商売の本質が信用にあることに気づいた。

ビジネスの本質を見抜く

京セラの創業者・稲盛和夫氏は、著書『成功への情熱』でこう述べている。

「経営を行なっていくにあたっては、ビジネスの本質が何であるかをけっして忘れてはなりません」

第一次石油危機の直前、空前の土地ブームが起き、京セラにもいくつも不動産投資の話が持ち込まれた。稲盛氏は「京セラのビジネスの本質は、製品をつくり価値を付加することにより利益を得ることだ」と確信し、投資話をすべて断った。案の定、石油危機が起きたとき、京セラ以外の多くの会社は現金を土地に投資していたため、身動きが取れなくなった。京セラは、余裕のある手元資金を工場や設備の投資にまわし、その後の飛躍につなげることができた。

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