2020年10月号
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事業構想10ヶ条

第6条 自分マーケティング 「自分が欲しい」を起点に考える

唐池 恒二(九州旅客鉄道 代表取締役会長、事業構想大学院大学 特別招聘教授)

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ウォークマンやフェイスブックをはじめ、画期的な新商品・新サービスの多くが、「自分が欲しいもの」を追求することで生み出されたと、筆者は語る。次々とヒットを飛ばしているJR九州のD&S列車も、「自分マーケティング」の産物だ。

「自分マーケティング」。聞き慣れない言葉と思われるだろう。それも当然だ。私が考案した造語だから。

自分が気に入ったもの、感動するもの、欲しいと思うもの、食べたいもの、行きたいところなど、自分の好みに忠実に新しい商品をつくり出すマーケティング手法をこう呼ぶ。

ビッグデータを活用したビジネスが主流となる中で、あえて自分の心に問いかけて、ほんとうに自分が好きなものは何かということを追求し、それをビジネスに活かしていく。

マーケティングの対象が自分なのだ。少し広げて自分のまわりにいる家族や親しい友人も含めてもいい。

創造的な仕事、例えば、ミシュランの星付きレストランのシェフがつくる料理は、ほとんど自分マーケティングにもとづくものといってもいい。一流のデザイナーが手がけたデザインは、何もビッグデータを分析してつくられるものではない。自分がいいと思うデザイン、自分なら感動するデザインを表現している。

これまで世に出された画期的な新商品の大半が、開発者の自分マーケティングによるものなのだ。

自分マーケティングの代表例

ソニーの代名詞ともなったウォークマンは、1979年7月に発売された。発売後まもなく世界中で評判を呼び、革命的な家電製品となった。

ソニーのウォークマンは、自分マーケティングにより誕生した商品の代表例だと筆者は説く

その開発は、当時名誉会長であった井深大氏が海外出張に出かけるにあたり、機内でいい音質の音楽を一人で聴けて携帯に便利なモノが欲しいと、当時オーディオ事業部長であった大曾根幸三氏に依頼したことからはじまる。

大曾根氏は手元にあった、前年に発売した小型モノラルタイプのテープレコーダー「プレスマン」を改造することを思いついた。「プレスマン」の録音機能をはずし、ステレオ再生ができるようにして既成のヘッドホンを付けた試作品を井深氏に渡した。

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