揺らぐ保険医療制度 医療概念のパラダイムシフトに着目せよ

医学・行政・ビジネスの観点から医療・ヘルスケア業界の事業戦略を考える本連載。保険医療制度が揺らぐ今、日本では「健康医学」という新しい医療の概念へのパラダイムシフトが求められる。そこには様々な新規事業のチャンスが存在するはずだ。

保険医療制度が揺らぐ中で
新しい医療の形とは

今回は、今後の医療の方向性について話したいと思います。

現在の医療、特に日本において保険診療で行われている医療は「病気」を対象にしたものです。患者さんに何らかの症状が出てから、病院に行って(あるいはオンライン診療も含めて医療機関と連絡を取って)初めて医療がスタートします。しかし、これが今後大きく変わっていくと考えています。

その理由は、日本の保険医療制度の限界にあります。今の保険医療制度は1960年代にスタートしました。医療機関に受診をしたときに患者は7割引や9割引で医療を受けることができます。概して労働世代が高齢世代を支えることで成立しているシステムですが、もともとこの皆保険制度ができた1960年あたりは、平均寿命が男性は65.32歳、女性は70.19歳でした。しかし、2020年には男性が81.64歳、女性が87.74歳と、この60年間で男性・女性ともに15歳以上長寿になっているのです。年齢分布が変わることで、若者が高齢者を支える医療システムにも変化が求められています。

このようなことから、昨年出版をした「医療4.0 実践編」では、日本の医療の変化を、1960年代に国民皆保険制度が実現して今の医療提供体制の礎ができた「医療1.0」、高齢化が懸念され始め老人保健法やゴールドプランの策定など今につながる介護施策の整備が進んだ1980年代の「医療2.0」、2000年代のインターネットの広がりとともに電子カルテを始めとした医療のICT化が進んだ昨今の「医療3.0」と20年ごとに分類し、2020年代からの第4次産業革命に関連したテクノロジーを活用した新しい医療の形を「医療4.0」と提唱ました。ただ、この医療の変化はプロダクトライフサイクルの「導入期⇒成長期⇒成熟期⇒衰退期」にも当てはまるため、2020年からの「医療4.0」の時期は、過去の「医療1.0」からの一連のままだと衰退してしまいます。

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