次世代の展開 シームレスにネットワークとつながる世界を実現

誰もがスマートフォンを持ち歩く現在は、5Gの普及とともに公衆Wi-Fiのニーズも高まっている。そのなかで急拡大を続けているのが、次世代公衆Wi-Fi「OpenRoaming」だ。国内では東京都をはじめ、自治体でも導入が進んでいる。従来規格との違いや、世界でも導入が進む背景について話を聞く。

シスコシステムズ ソリューションズエンジニアリング
業務執行役員 福田 秀幸氏

公衆無線Wi-Fiの抱える課題を
解決するOpenRoaming

次世代公衆Wi-Fi基盤「OpenRoamig(オープンローミング)」の存在感が国内外で増している。一般的な公衆Wi-Fiを利用する際は、サービスごとにメールアドレスやパスワードなどの登録が必要になり、利用環境が異なるたびにその手間がハードルになる。一方、OpenRoamingは一度登録すれば、世界中の対応スポットで異なるSSIDにも自動で接続するため、利便性が高い。

それに加えて、セキュリティ面が優れている点も大きな特徴だ。多くの公衆Wi-Fiは無料で使える反面、常に情報漏洩のリスクがついてまわる。その点に対しても、無線通信区間を暗号化することによりセキュリティを確保し、安全な利用を実現している。

OpenRoamingは2019年にシスコシステムズが開発したサービスがベースになり、さらなる発展・拡張を目的として、公衆Wi-Fiサービス関連事業者の業界団体であるWireless Broadband Alliance(WBA)に開発・運用体制を移管し、現在は国内のほか欧米を中心に世界で導入が進められている。

同社ソリューションズエンジニアリング業務執行役員の福田秀幸氏は、OpenRoamingが求められている背景について次のように話す。

「国内の公衆無線に関しては、ここ10年で環境が整備されましたが、その利活用には課題があり改善が必要と考えられてきました。つなぐために手間がかかり、つながっても速度が遅く、セキュリティ面も不安があるため、ストレスを感じるユーザが多くいました。その課題を解決して、利用者が意識せずにセキュアな環境を手に入れられる仕組みは、今までもEduroamやPassPointなどありましたが、利用者は限定的でした。OpenRoamingにより、より多くの利用者がこのような環境を手に入れられることを期待しています」

ネットワークの重要性が日ごとに増すなかで、ユーザーがいかにストレスなく、シームレスに活用できるかは重要なテーマになっている。

「つながる東京」の実現と
欧米での急拡大

日本では各地で導入および検討が進んでいる。東京都は、いつでもどこでもネットワークに接続できる「つながる東京」をビジョンに掲げ、その根幹にあるのはOpenRoamingの活用だ。新規整備およびTOKYO FREE Wi-FiのOpenRoaming対応に取り組み、2023年度末までに646か所を実施。さらに2024年度から2026年度にかけて3か年のアクションプランを策定し、約1300か所への整備を進めている。

また、2025年4月から10月まで開催される大阪・関西万博でも会場内の公衆Wi-FiとしてOpenRoamingの導入が決定し、整備が進められている。そのほかにも、さまざまな自治体や新千歳空港など交通インフラの拠点における実証実験が進んでおり、着実に広がりを見せている。

世界に視野を広げても、グローバルで利用可能なスポットは2022年5月時点の約100万か所から、現在は300万か所突破と、欧米を中心に急増している。

「アメリカでは代表的な大手キャリア3社のうちAT&TとTモバイルの2社の端末にプロファイルが事前にインストールされているため、ユーザーは設定不要でOpenRoamingに自動接続される仕様になっています。日本でもGalaxyなどの端末に組み込まれています。今は大半の人がスマホを持っていますが、自分でSSIDを探して認証することが手間だと感じる人も多いので、自動でつながるという利便性に対するニーズは高いと感じています」

ヨーロッパでは国からの助成金のもとに自治体がアクセスポイントを設置する取り組みが推進されていることと、民間企業がOpenRoamingを積極的に活用する流れが生まれているという。

「たとえばインターコンチネンタルホテルズグループの専用アプリはプロファイルが入っているため、宿泊客がインストールして、接続許可を押すだけでどの場所でも使うことができます。アプリと一体型であるためユーザーはOpenRoamingを利用しているという意識もないと思います。自社のアプリに取り入れることは欧米では1つのトレンドです」

自治体がサービスを展開するための
高速かつ安心な「基盤」として

今後、日本では大手キャリアや空港・主要駅などの交通インフラの拠点に展開・普及することで「利用可能なスポットを点から線にする」活動を行っていくと福田氏。あわせて、重要な提供先と考えているのが日本全国の自治体だ。

「自治体は観光客や住民に対し、常に情報発信や付加価値サービスを提供したいというニーズがあります。そのサービスを支える通信インフラの仕組みとして、安全かつ簡単につながるOpenRoamingを検討してもらいたいです。自治体サービスとセットにアプリ化する、プラットフォームを作り、プロファイルをインストールする仕組み化をする、さまざまな展開が考えられます」

既に公衆Wi-Fiが導入されている自治体に対しても、再検討の適切なタイミングと福田氏は考えている。

「総務省が補助金を出して自治体にWi-Fiの普及を進めたのは2014年頃です。機器の対応年数はだいたい10年間なので、まさに今がリプレースのタイミング。ぜひ次世代のWi-FiであるOpenRoamingを検討してもらいたいと思います。Wi-Fiの技術も進化しており、Wi-Fi6Eや今後のWi-Fi7などより高速に通信できる技術が登場しています」

今後はさらに認知を拡大するとともに、具体的に点を線につなげていく。たとえば、自治体と民間企業を同社がつなぎ、官民連携の取り組みによりOpenRoamingの導入加速を目指すなど、新たな展開も行っている。

「さらに導入後は、データの利活用や、防災や子育て支援など幅広く自治体ニーズへの活用を視野に入れて、自治体職員が上手く活用できるような仕組みづくりや人材育成といったことも必要となるため、支援していきたいと考えています。我々の大きな目的はシームレスにつながる世界をつくることであり、より利便性が高く、セキュア且つ高速な通信サービスを実現していくという観点で、今後は通信キャリアとの協業も密に実施していくことなども考えています」

誰もが当たり前に便利なサービスを活用できる“基盤”をつくるため、同社はOpenRoamingの導入推進を進めていく。

図 次世代の公衆Wi-Fi基盤OpenRoamingの特徴

出典:シスコシステムズ資料

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