ドコモの地域支援 官民協創で進む埼玉県のDX
「DXによる社会課題の解決」を掲げるドコモは、78件の連携協定を締結※1し、自治体ごとのニーズに沿ったDX化を支援している。このほど行われた「ドコモが考える自治体DX推進に向けた方針と取組み」の講演から、埼玉県におけるDXの取組み、そしてドコモの全国における取組みの事例を紹介する。
今回のウェビナーに、埼玉県から登壇した同県DX推進担当主幹の森田康二朗氏は「埼玉県のDX推進」のテーマで講演。埼玉県では、 DXの取組みを「アナログからデジタルへ置き換えるデジタルパッチのフェーズ」「単なるデジタルへの置き換えにとどまらずデジタル化によってこれまでにはなかった新たな価値が生まれてくるデジタルインテグレーションのフェーズ」「デジタル技術やサービスが生活環境や業務環境に浸透して変革するDXのフェーズ」の3つのフェーズがあるととらえている。「自分たちが取組んでいることがどのフェーズにあるかを意識しながら進めていくことが重要です」と森田氏は語る。
ペーパーレス化の経費削減効果
1つ目のデジタルパッチのフェーズとして着手したのが、紙主体の業務からの脱却だ。知事、副知事などの幹部に対する説明は大型モニターを活用。決裁のペーパーレス化については森田氏の所属部署で紙を一切使わずに全てデジタルで実施するトライアルを実施した。すべての添付書類を一望できる、チェック箇所を付箋やマーカーで伝達できるなど紙の利便性を損なわずに決裁ができるツールを活用した結果、2020年度のコピー使用量は前年度比61%減となった。2022年度は全庁でコピー使用量60%、印刷コスト約2.7億円の削減を見込む。テレワーク推進については、遠隔操作システムや Web 会議システムとビジネスチャットツールの環境整備を行い、2度目の緊急事態宣言がなされた2021年2月には4000人近い職員がテレワークを行った。
2つ目のデジタルインテグレーションの取組みの一例は押印の廃止だ。認印を求めていたものは廃止し、登記印、登録印について原則廃止とした結果、申請書などに求めていた押印の96.4%を廃止できた。その結果多くのアナログな手続が電子化可能となった。オンラインでできる手続の数は全体の53.3%となり、取組み前と比べ38ポイント上昇した。
3つ目のDXの取組みとして、2021年3月に向こう3年間を期間とする埼玉県デジタルトランスフォーメーション推進計画を策定。策定に当たっては「トップダウンによる強力な計画の推進」「組織横断的な連携と実行」「ビジョンおよびロードマップの明確化」を掲げた。4月に開催したDX推進会議では、大野元裕知事自ら職員に向けて今後の DX の方針についてプレゼンテーションした。また、DX 推進会議の実行部隊として DX プロジェクトを立ち上げ、統括ユニットと中堅若手職員を主体にした16の部局ユニットを新たに構築し、 組織横断でDX のビジョンやロードマップの検討を行っている。森田氏は「大野知事によるトップダウンでの号令のもと、 D ではなくX、を合言葉にし、デジタル化が目的ではなく変革することが目的だということを浸透させている」ことを最後に強調した。
3つの支援で地域社会を
持続可能に
続いて、ドコモ 地域協創・ICT推進室長の池田 健一郎氏が「ドコモと進める自治体DX」のテーマで講演。同社では、5Gや AI、 IoT、 ビッグデータなどのさまざまな ICT 技術に加え、約8000万の会員基盤と全国約2300のドコモショップを持つ強みを活用している。それとともに、自治体をはじめとするさまざまな分野との協働を「+d(プラスディー)」と位置づけ、「地域における企業や大学、金融機関様などさまざまな分野のみなさまと地域課題の解決と新産業の創出に向け取組みを行っています」と話す。
自治体とのDXに関わる協創事例は「推進体制の検討に関する支援」「地域の DX 化における支援」「デジタルデバイド対策の支援」の3つに分けられる。「推進体制の検討に関する支援」については9月末までに78件の連携協定を締結し、「座組をしっかりと組んで議論を行い、課題解決をめざしている」とのこと。埼玉県とはデジタル技術の活用やデジタルデバイドの解消またビッグデータを活用した社会課題の解決、働き方改革の支援などに取組んでいる。
「地域の DX 化における支援」では、国内最大級の約8200万の契約者を持つ大量のデータから推定する、精度の高い人口統計サービスにより施策の検討や効果検証を定量的に測定分析できる「モバイル空間統計」を活用して、観光振興、防災、まちづくり、コロナ対策などに役立てられた事例を紹介。滋賀県の事例では、新型コロナウィルス感染症対策として年末年始の三密を避けるため、人口分散化を目的とした人口密度マップの作成に役立てた。都市交通の高度化に向けた取組みとして、自動運転車両にオンデマンド型配車システムを対応させた実証実験の取組みを紹介した。「行政の DX、暮らしのDX、産業のDXの幅広なサービス展開で自治体の皆様に貢献したい」と述べた。
また「デジタルデバイド対策支援」は、スマートフォン教室を活用した利用者支援に取り組んでおり、「自治体が抱える課題解決と地域の皆様の豊かなデジタルライフに貢献したい」と話す。
ドコモスマホ教室のお客さまアンケートでは、9割以上の顧客から「満足」との回答を得ているという。
顧客と共に考える重要性
事業構想大学院大学教授の渡邊信彦氏を交えたトークセッションも実施された。ペーパーレス化について、紙でないとできないこととの線引きはとの問いかけに対し、森田氏は「『紙でないとできない』という前提に立たないようにすることから始めている。ただ、現実には法律などで紙の書類が必要なケースがあり、国へ働きかけを行うことで解消を図りたい。また入口部分をデジタル化しても効率化できない時もある。これについては業務プロセスごと変えていく必要がある」と述べた。渡邊教授は「デジタルへの移行は負荷がかかり反発もあるが、まずデジタルありきの発想は重要」と指摘した。
また、ツールの活用について池田氏は「解決したい課題が明確でないとツールは生かせない。導入前に何をどう解決するか課題を設定し、お客さま目線で一緒に考えながら取組むことが重要だと認識しています」と分析した。
セミナー・記事内容に対するお問い合わせ先
株式会社NTTドコモ
第一法人営業部 地域協創・ICT 推進室
jichitaidx-seminar-ml@nttdocomo.com
※上記問い合わせ先については2022年3月末まで有効
この記事に関するお問い合わせは以下のフォームより送信してください。